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【世界から】ミャンマー、ヤンゴン管区のトップは“車好き”

2018.10.9 16:12 共同通信

 ミャンマー最大の都市にして旧首都のヤンゴン市。同市を含むをヤンゴン管区のトップであるピョー・ミン・テイン管区長をやゆする次のような言い回しを最近、よく聞く。それは「ヤンゴン管区長は車がお好き」。そういわれるには理由がある。同氏が推進する政策には、車に関するものが多いからだ。

▼政策を次々と実現

 ヤンゴン管区長は日本でいえば東京都知事に近い存在で、地方自治体トップの中でも最も政権中枢に近いといえる。国民民主連盟(NLD)が圧勝した2015年の総選挙後に管区長に選ばれたピョー・ミン・テイン氏は、次々と新しい政策を実現していることから、改革の何もかもが中途半端に止まってしまっている中央政府に比較するとその手腕が目立っている。そのため、アウンサンスーチー国家顧問の後継候補ナンバーワンに躍り出たという評もあるほどだ。

 同氏が行った改革には市民生活に直結したものが多い。代表例として、ヤンゴン市内の路線バス改革が挙げられる。バス会社を統廃合して路線網を整備するだけでなく、老朽化が目立つバスを一掃して新たに1000台ものバスを中国から買い入れた。また、渋滞緩和策の一環として水上バスの就航を推進。市街中心部と北西部の住宅街を結ぶ河川に新しい交通機関を誕生させた。船はオーストラリアやタイから購入したという。

 同じく渋滞対策として提案したのがスクールバスの導入だ。ヤンゴンでは登下校の送迎を家族が行うのが一般的で、始業・就業時間帯には乗用車や「サイカー」と呼ばれる改造三輪車が校門近くに殺到し、付近の道路は大渋滞に陥っていた。そこでスクールバスを各公立校に配備し、子どもたちの送迎を学校が行うことを決めた。5月には、この計画のために購入した韓国製ミニバス200台のお披露目式の様子が大きなニュースになった。

 これまでも軽トラックの荷台を改造した「フェリー」と呼ばれる乗り物で子どもの送迎を行う学校もあったが、安全性の低さが指摘されていた。今回の制度改革で安全性が低い車両は廃止となり、新たに導入したものに切り替わった。自宅と学校との距離により料金は異なるが、送迎費用として1人あたり月3万チャット(約2100円)ほどが必要だが、保護者には今のところ好評だ。

▼国際社会と国民の間にある温度差

 ピョー・ミン・テイン管区長によるこれらの改革に共通するのは、「乗り物」だ。6月にはヤンゴン市が議員用に高級車10台を購入する計画を発表したが、議員用の車が既に何台もあることから批判が高まり中止となった。この頃から、同氏の“車好き”に対するやゆの声がしばしば聞かれるようになった。

 同氏のやり方に対しては評価する声がある一方で、内部からの批判も多い。NLD所属のあるヤンゴン管区議員は「スピード改革を重視するあまり、議会にかけずに何でも決めてしまう。路線バスにしろ、スクールバスにしろ、購入先を決定する過程が不透明」と疑問を呈している。さらに10月に入って、議会承認のない今回のバス購入の合法性について監査機関が調査を開始したとの発表もあり、問題はさらに大きくなりつつある。

 このところロヒンギャ問題やそれを取材していたロイター記者に対する有罪判決などで、ミャンマー政府に対する国際社会の視線は徐々に厳しいものになってきている。国内でも知識層を中心に抗議行動もないわけではないが、市民の間ではかつての民主化運動のような盛り上がりは見られない。彼らの関心はもっぱら、日々の通勤手段であり、子どもの通学の安全であり、最近なら「チャット安」などの経済状況だ。このように国民からの批判が少ないことが、ミャンマー政府による一連の問題への強硬姿勢にもつながっているのかもしれない。(ヤンゴン在住ジャーナリスト、板坂真季=共同通信特約)

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