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歴史に現代感覚プラス、港町を再生 「三国湊魅力づくりプロジェクト」(第1回優秀賞、福井県坂井市)

2018.9.4 10:10
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 古くから各地を結ぶ海運の拠点として栄えた福井県坂井市の三国湊。長い地域の歴史と産物を生かした町づくりが進んでいる。魅力にひかれて移り住んだ人たちの手で、新たな取り組みもスタート。日本海の港町は、次のステージへ昇ろうとしている。

 活動の出発点となった旧森田銀行本店。地域を象徴する建物だ=2018年8月、福井県坂井市
 活動の出発点となった旧森田銀行本店。地域を象徴する建物だ=2018年8月、福井県坂井市

 


 ▽出発点は旧銀行本店の再生

 「三国湊魅力づくりプロジェクト」の前理事長、西澤弘之さんは、地元に残っていた古い銀行の建物が、活動の出発点だったと振り返る。資産家が設立し大正時代に建設された旧森田銀行の本店は、老朽化のため取り壊される予定だった。しかし、県内最古の鉄筋コンクリート造りで、洋館風のデザインやしっくいの美しい内装を惜しむ西澤さんらが奔走。旧三国町(現坂井市)が譲り受けて、保存することになった。
 建物は調査や保存工事を経て、1999年から公開された。室内の回廊や暖炉、金庫が当時の様子を伝える。絵画や工芸品の展示会にも使われ、さまざまな交流が生まれるスポットに生まれ変わった。地域に残る資源を街づくりに生かす―。力を合わせて得た成果が、活動の柱を決めた。

 旧家を改装したレストラン。明るく現代的な雰囲気で訪れる人を迎える=2018年8月、福井県坂井市
 旧家を改装したレストラン。明るく現代的な雰囲気で訪れる人を迎える=2018年8月、福井県坂井市

 

 旧家を次々と改装、新たな拠点を作っていった。地元の牛乳を使ったジェラートの店や、特産の花ラッキョウや牛肉をはさんだ「三国バーガー」を提供するレストラン、ゆったりと過ごせるカフェ、座敷も備えた休憩所がオープン。古い街並みと、現代感覚を生かした新たな名物の組み合わせが港町再生の原動力となった。県外から若い女性グループも訪れ、人影の少なかった通りが週末には賑わう光景が生まれた。

 ▽新たな担い手が登場、魅力加える

 「独立するなら、ここでと決めていた」。東京都出身でガラス工芸作家、高緑由美子さんは話す。旧家を改装したアトリエを2013年、オープン。制作・販売を地元で続ける一方、東京などで展示会も開く。地方にいても、インターネットなどの普及で地理的ハンディは小さくなったと指摘。むしろ、創作には「ここでしか体感できない海や空、自然の変化が大事」と話す。高緑さんのような新たな担い手も増え、港町に魅力を加えている。

 アトリエで話す高緑由美子さん(左)。地域の人とのふれあいも暮らしの魅力だ=2018年8月、福井県坂井市
 アトリエで話す高緑由美子さん(左)。地域の人とのふれあいも暮らしの魅力だ=2018年8月、福井県坂井市

 

 築100年を超える薬屋を改装したユニークな宿泊施設も人気を集める。アンティークなインテリアと温かな照明を備えた町屋風の建物で、1日2組限定。濡れ縁から中庭を眺めていると、ゆったりした時間が流れる。地域で改装した旧家は10軒余りになった。

 ▽地域づくりの団体が結集、新たな段階へ

 まちづくりに多くの人を結集しようと、一般社団法人三国会所が12年に発足。同プロジェクトを始め、さまざまな団体が参加し、より幅広い活動ができる体制を整えた。

 これまでの活動を振り返る西澤弘之さん(左)と大和久米登さん。体制を整え地域づくりに挑む=2018年8月、福井県坂井市
 これまでの活動を振り返る西澤弘之さん(左)と大和久米登さん。体制を整え地域づくりに挑む=2018年8月、福井県坂井市

 

 「20年前、この地の歴史・文化を観光しようという人は少なかった。一歩ずつ進んできた」。三国会所の大和久米登理事長は振り返る。西澤さんも「先人が残してくれた宝を活用したい」と話し、さらに先を見据えた。(共同通信 伊藤祐三)

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