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第2部「本当の自分はどこに」(1)期待されるイメージ追求  現実とギャップ、少し怖い(見せる①)

2018.8.27 12:00

 スマートフォンをのぞき込むと、画面に打ち込まれていたのは創作途中の詩。

 「僕よりカッコイイ人も 僕より優しい人も 僕より素敵な人も知ってるくせに なんで僕と一緒にいるの?って聞いたら 『君よりいとおしい人を知らないから』って返す僕の彼女イケメンすぎる」

 東京でIT企業に勤めるわたらいももすけ(21)は恥ずかしそうに笑った。「女々しい男って感じですよね」。女性をモデルに撮影した写真を詩に添付して「ツイッター」に投稿すると、約8千の「いいね」が付いた。このぐらいの反響は日常茶飯事という。

 わたらいは「SNSクリエイター」と名乗り、詩や写真、動画やイラストを作って定期的にツイッターに投稿している。高校生だった2013(平成25)年から、宮崎市の実家でひっそりと始めた習慣だ。今やフォロワー(読者)は8万人を超え、大きな影響力を持つ“一般人”になった。 

写真を撮影するわたらいももすけ
写真を撮影するわたらいももすけ

 「自分のキャラを作り込む必要はありますね。ふわふわとしている優しい男の子で、少し女性的な性格という設定にしています」。わたらいは淡々とこつを解説してみせた。

 設定したキャラクターは自身の性格の一部を反映しているが、そのままの自分を発信するのではなく、「フォロワーが求めているイメージを大切にしている」という。

 まず、投稿に「いいね」をしてくれた人のプロフィル欄を分析する。若い女性が中心と分かれば、テーマを恋愛や人生観に限定。イラストの投稿が原点だったが、途中から評判の良い詩を中心に据えた。顔は出さず、ペンネームは全てひらがなにして柔らかい印象に。懸賞の当選者には、似顔絵をプレゼントする特典を設けるなど工夫した。

 インターネット環境の発展で、創作物や写真、体験などを誰でも発信できる時代になった。服装や車といった外見に頼らなくても、自分という存在を主張することができる。「直接的に、インスタントに世の中の反応が分かる今の時代だからこそ受け入れられた」とわたらいは自己分析する。

 「巨人、大鵬、卵焼き」に代表されるような通俗的な価値観に、もう縛られる必要はない。他人と自分を同じ土俵で比べ、競争しなくてもいい。

 「実際に会った人に『イメージと違う』と言われるのが少し怖いんですよね」。わたらいはふと漏らした。理路整然とした受け答えと詩の内容にはギャップがある。でも「自分の思考を詩として言語化できているという確かな満足感もある」。

 1月末に会社を辞めた。ツイッターに投稿した作品を契機にクリエイターとしての仕事の依頼が絶えず、独立を決意したという。自分の作ったキャラに縛られながら、一方でそのキャラによって一歩を踏み出す自由を手に入れた。(敬称略・年齢、肩書は新聞掲載当時)

  ×  ×  ×

 インターネットや会員制交流サイト(SNS)の登場で、地理的、時間的制約から解放された「平成人」は、自らの可能性を大きく広げることに成功した。半面、常に他人の目を意識しなければ生きられないという宿命も背負い込むことに。個性が重視され、誰とも違う「オンリーワン」を夢見た果てに、私たちはどこにたどり着いたのか。

 ツイッター 2008(平成20)年に日本語版を開始した短文投稿サイト。英語で「(鳥が)さえずる」の意味で登録すれば1回当たり140文字までの文章や画像、動画を投稿して公開できる。著名人から市民まで幅広く情報発信している。

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