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地域の誇り磨き、毎月花火が打ち上がる街に 「大曲花火倶楽部」(第4回優秀賞、秋田県大仙市)

2018.8.24 7:00
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 日本の三大花火競技大会に数えられる「大曲の花火」が毎夏開催され、1日で70万人以上の観客を集める秋田県大仙市。若手花火師を発掘する競技会やファンの裾野を広げる認定試験を創設するなど、花火の感動と集客を〝一夜限り〟にしない取り組みで街を盛り上げてきたのが「大曲花火倶楽部」だ。

大曲花火倶楽部が主催する「新作花火コレクション」で打ち上げられた作品(大曲花火倶楽部提供)
大曲花火倶楽部が主催する「新作花火コレクション」で打ち上げられた作品(大曲花火倶楽部提供)

 

 ▽一年中花火が上がる街
 米どころを流れる雄物川の舟運で栄えた豪商や神社の祭礼と結びつき、江戸時代から花火が盛んだった秋田県南部。1910年に始まった8月の「大曲の花火」は全国から選りすぐりの花火師が技を競う権威あるコンクールだが、大仙市が「花火のまち」と呼ばれるゆえんはこの大会だけではない。
 「毎月、市内のどこかで花火が打ち上がる街にしたい」。旧大曲市の花火愛好家ら約60人で1991年に結成した同会が花火大会のなかった空白月にイベントを次々に立ち上げた。2005年に8市町村が合併して以降は大仙市内各地で続く祭りの主催者にも協力を呼び掛け、毎月1~2回の花火大会が実現。18年現在で年18回、計5万2千発に拡大した花火行事を紹介するポスターカレンダー「大仙市花火暦」も監修し、2万5千枚を発行する人気だ。挽野実之会長は「合併したばかりで一体感がほしかった。花火で旧8市町村を結びつけられるのではないかと考えた」と振り返る。
 人口約4万人の大曲地区に70万人が押し寄せる8月の大会当日の街は「パンク状態」(挽野会長)で、市外や県外に流れる宿泊客も多い。一方、海外の花火も打ち上げる「大曲の花火 春の章」(5月)、音楽と融合させたショー形式の「大曲の花火 秋の章」(10月)など趣向を変えた大会は2~3万人の人出が見込めるようになり、年間を通じて安定した誘客確保に貢献している。 

大曲花火倶楽部の挽野実之会長と同会が監修した「花火暦」
大曲花火倶楽部の挽野実之会長と同会が監修した「花火暦」

 

 ▽伝統に新風吹き込む
 中でも1992年から市内のスキー場で毎年開催する「新作花火コレクション」(3月)は若手花火師の登竜門としても定着し、8月の大会に新風を吹き込んできた。会場では花火師自らマイクを握り見どころを紹介、地域住民と交流できる懇親会もあり、多くの若手が経験を積んだ。「横手やきそば」や「アフロヘア」といった斬新な型物花火も生まれ、手応えをつかんだ作家が8月の大曲の花火や全国各地の競技会で入賞するなど好循環が続く。「最高峰と評される大曲の花火のレベルを維持するために人材育成が必要」。花火師のリサーチや大会運営費を捻出するための協賛企業回りといった地道な活動が欠かせない。

 ▽全国に応援団 
 2003年からは「花火鑑賞士」の制度も創設。第一線で活躍する花火師らの講義を約4時間半受けて臨む認定試験で、花火ファンに口コミで広まり、過去15回で44都道府県の1203人が合格した。約8割を県外者が占め、都内で花火セミナーを開いて大曲の花火を宣伝したり、運営の手伝いに駆けつける鑑賞士も。夏の大曲の花火のリピート率が6割以上と高いため「住民自ら花火の知識を深めることで観光客をもてなそうと始めたが、いい意味でもくろみが外れた」。Iターンする若手鑑賞士も現れ、街に新陳代謝をもたらしている。08年には資格保有者らが独自に「日本花火鑑賞士会」(会員340人)を結成し、全国各地の花火大会を盛り上げる活動にまで発展した。

花火伝統文化継承資料館別館で展示されている花火鑑賞士の木札
花火伝統文化継承資料館別館で展示されている花火鑑賞士の木札

 

 ▽障害者も楽しめる花火を 
 伝統の核を守りながらも少しずつ変革が加わり、リピーターを飽きさせない大曲の花火。その魅力を伝える「花火伝統文化継承資料館」が8月5日、大仙市内にオープンし、同会も打ち上げ筒やパンフレットなどの資料を提供している。今秋10月13日に開催する「大曲の花火 秋の章」では、視覚障害者や難聴者が打ち上げ花火の迫力を体感できるよう、花火業界が新たに開発した花火玉や最新の音響装置を試行する予定だ。夢は「国内外の花火師が技を競う花火のワールドカップの開催」(挽野会長)。活動30周年に向けて、さらなる深化を遂げようとしている。(共同通信 錦織綾恵)

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