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(76)「痛」 激痛が体を駆け抜けていく

2010.1.5 10:01

 「甬(よう)」という字は「手桶(ておけ)」の元の字で、この字形を含(ふく)む字は、みな筒形(つつがた)のものという意味があることを前回紹介(しょうかい)しました。今回もその続編です。

「痛」

 まずちょっと変わった筒形の文字を紹介しましょう。それは「痛」です。これは「やまいだれ(やまいだれ)」と「甬」を合わせた文字。「やまいだれ(やまいだれ)」は病気でふせっていることです。そして「甬」は筒形のものです。

 つまり、この場合の筒形のものとは、病床(びょうしょう)に寝(ね)ている人間の体のことです。病人の体の中を激痛が駆(か)け抜(ぬ)けて通っていくのです。この痛みの様子を表しているのが「痛」という文字なのです。

 前回紹介した「通」という字にも筒形の空洞(くうどう)空間を滞(とどこお)りなく通り抜けて「あまねくゆきわたる」という意味があります。「通行」という言葉は通り過ぎる意味のほかに、「世間にあまねく流布している」という意味もあるのです。

 そして、この「痛」にも体の中を激痛が通り抜けていくので「はなはだしい」「徹底(てってい)的に」という意味があります。「痛飲」「痛快」「痛恨(つうこん)」などの用例が、そのような意味での「痛」です。

 1974年、中国の秦(しん)の始皇帝(しこうてい)の墓近くにあった大きな土坑(どこう)から、等身大の兵士8千体、軍馬500頭などの陶製(とうせい)の人形が発見されました。後に「兵馬俑(へいばよう)」と呼ばれる人形ですが、この「俑」にも「甬」の字形が含まれています。「俑」は「甬」と「人」を合わせた字ですから、筒形の人形のことです。「俑」の訓読みは「ひとがた」です。

 この「俑」は墓の中に入れる土人形です。主君が亡くなると、死の旅のお供のために、人を生きたまま墓に埋める殉葬(じゅんそう)という風習がありましたが、その殉葬にかえて、「俑」が埋められるようになったのです。

 また「蛹(よう)」も「甬」の字形を含む文字です。もう説明が不要かもしれませんが、筒形になった「虫」ですから「さなぎ」のことです。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

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