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(77)「勇」 充満した力が一気に出る

2010.1.12 9:10

 「甬(よう)」は「手桶(ておけ)」の元の字で、「桶」の形状から筒形(つつがた)のものを表す意味があります。「甬」を含み、筒形のものの意味を持っている一連の文字を説明してきましたが、今回紹介(しょうかい)したいのは筒形の空間を下から上に何かが上がってくる漢字、またはその空間を上下に動く漢字のことです。

「勇」

 まず「踊(よう)」です。「甬」は筒形の空間で、それに加えられた「足」は「跳(と)び上がる」こと。後漢の有名な字書「説文解字」には「跳ぶなり」とあります。足を跳(は)ねることを「踊」といいます。

 感情や場面をあらわすためのしぐさ、ダンスの意味の「おどる」「おどり」は日本語の用法です。また「踊」の別の字形である異体字に「踴(よう)」があります。

 「甬」に「サンズイ(サンズイ)」を加えた「涌(よう)」は筒形の空間を通って水が下から上に上がってくる字形。下から水が地上に「おどりでる」ことで「わく」意味です。この「涌」の異体字には「湧(よう)」があります。

 「踊」の異体字が「踴」、「涌」の異体字が「湧」ですが、これらの異体字に共通する「勇」も「甬」の関連字です。

 現在の字形は「マ」「田」「力」を合わせた字形ですが、旧字は「マ」「用」「力」を合わせた字形、つまり「甬」の下に「力」を加えたのが「勇」です。その証拠(しょうこ)に「勇」の異体字に「ゆう(ゆう)」という字があります。

 この「甬」に加えた「力」は農具の鋤(すき)のことです。その鋤である「力」を使って農地を耕すには力が必要で、自分の内側にためた力を一気に外に出さなくてはなりません。このように内にためたものが、外にわき出すようにおどり出て、一気に事をなそうとする力のことを「勇」といいます。

 「勇」の字は「内に力が充満(じゅうまん)して、それが一気に外に出てくること」という理解が大切です。例えば「勇退」も単に辞職することではなく、「思い切りよく職をひくこと」です。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

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