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外国人客を呼び込め、伝統の温泉街ににぎわい 「WAKUWAKUやまのうち」(長野県山ノ内町、第8回優秀賞)

2018.7.20 16:11
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 「同じ悩みを抱える地域の役に立てればうれしい」。「WAKUWAKUやまのうち」の岡嘉紀社長は話す。外国人客にターゲットを絞った集客戦略を進め、伝統ある温泉地の活性化に取り組む。新たな店が増え、シーズンには通りを歩く観光客の姿も多くなり、手応えを感じている。地盤沈下に悩む、ほかの観光地にとってモデルとなりそうだ。

 精肉店を改装したビアレストラン。木のぬくもりを感じる落ち着いた雰囲気だ=2018年7月、長野県山ノ内町
 精肉店を改装したビアレストラン。木のぬくもりを感じる落ち着いた雰囲気だ=2018年7月、長野県山ノ内町

 


 ▽ユースホステル、カフェを次々オープン

 長野市から電車で約1時間。山ノ内町にある湯田中温泉は、長野県北部の古い温泉地として知られる。しかし、バブル経済の崩壊後、レジャーの中心が団体客から個人客へと変わり、大型旅館の経営が難しくなったことや、周辺の温泉地との競合も重なり、次第に活気を失っていった。
 危機感を抱いた地元の旅館主や不動産経営者らが出資して、観光振興を目指すまちづくり会社を2014年設立。翌15年には、地域経済活性化支援機構や、地元の金融機関が参加した投資ファンドも新たに出資し、株式会社化して活動を本格化した。
 にぎわいを取り戻す手がかりとなったのは、町内にある地獄谷野猿公苑だ。冬、雪景色の中で温泉に入るサルの姿が「スノーモンキー」と呼ばれ、海外で知られるようになり多くの外国人客が訪れるようになった。しかし、大半の客はサルの姿を堪能すると湯田中温泉には宿泊せず、ほかの観光地へ向かってしまう。地元の観光資源を生かすには、温泉地の魅力を高める必要があった。

 温泉街には改装した宿泊施設が並ぶ。活気を取り戻す拠点に=2018年7月、長野県山ノ内町
 温泉街には改装した宿泊施設が並ぶ。活気を取り戻す拠点に=2018年7月、長野県山ノ内町

 

「欧米を中心に外国人客が滞在できる環境をつくろう。そのために足りない要素を考えた」。岡社長は振り返る。伝統ある高級旅館はあるが、個人客が気軽に利用できる宿泊施設はなかった。お茶を楽しむカフェや、夜の時間を過ごせるバーもなかった。素通りしていた外国人客の足を止める戦略は固まった。
 必要な施設を設けるために、5軒の空き家の改装を決定。16年から2軒の宿泊施設やカフェ、ビアバーが次々とオープンした。建物は別会社がまとめて所有し施設の運営と分離し、投資や経営のリスク分散も図った。

 冬場のスキーシーズンの西澤さんのユースホステルは、多くの外国人客が宿泊する=2018年1月、長野県山ノ内町(WAKUWAKUやまのうち提供)
 冬場のスキーシーズンの西澤さんのユースホステルは、多くの外国人客が宿泊する=2018年1月、長野県山ノ内町(WAKUWAKUやまのうち提供)

 


 ▽次のターゲットは国内女性客

 「居心地のよい空間を提供したい」。ユースホステルを経営し、WAKUWAKUやまのうちの役員でもある西澤良樹さんは話す。古い旅館を改装、畳敷きの部屋にベッドが並ぶ。食事は提供せず、必要なら共用の台所で客がつくるシステムで、宿泊料金は5千円前後。客の8割は外国人といい、得意の英語で湯田中のアピールにも努める。

 温泉街のにぎわい復活に挑むWAKUWAKUやまのうちの岡嘉紀社長(左)と西澤良樹さん(中)、君島登茂樹さん(右)=2018年7月、長野県山ノ内町
 温泉街のにぎわい復活に挑むWAKUWAKUやまのうちの岡嘉紀社長(左)と西澤良樹さん(中)、君島登茂樹さん(右)=2018年7月、長野県山ノ内町

 


 ビアバーを開いたのは、やはり役員を勤める君島登茂樹さん。精肉店を改装した店内は、高い天井に障子や木の柱が配され落ち着いた雰囲気が漂う。食事が出ない西澤さんらの施設の宿泊客は飲食店に出かける。「泊」と「食」を分離し客に町歩きを促し、地域全体を盛り上げることが狙いだ。
 スキーやスノーモンキーのオフシーズンとなる夏場の魅力作りなど課題はまだある。しかし、新たな業者が出店するなど波及効果も出始めた。「これからの継続が大事」と、岡社長はいう。スキー場で雲海を見るツアーなど、新たな試みを続けており「次は国内の女性客を呼び込みたい」と、力を込めた。(共同通信 伊藤祐三) 

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