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手作りの映画で魅力を発信、自前の劇場もオープン 「カミスガプロジェクト」(茨城県那珂市、第3回優秀賞)

2018.6.26 16:16
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 「寂しくなる街並みを、みんなで元気にしよう」―。SNSで呼びかけてから8年。茨城県那珂市上菅谷地区で「カミスガプロジェクト」がユニークな取り組みを進める。街のにぎわいを取り戻す試みだけでなく、地元文化の発信にも力を入れた活動は、ほかの地域でも参考になりそうだ。

 上菅谷駅前のイベントは30回を超えた。毎回1万~2万人が集まるまでに=2018年4月、茨城県那珂市(カミスガプロジェクト提供)
 上菅谷駅前のイベントは30回を超えた。毎回1万~2万人が集まるまでに=2018年4月、茨城県那珂市(カミスガプロジェクト提供)

 


 ▽駅前のイベントでにぎわい

 地元で飲食業を営む菊池一俊さんが中心となって、カミスガプロジェクトが発足したのは2011年。上菅谷地区は、水戸市から福島県へ走るJRのローカル線、水郡線の上菅谷駅が玄関口。しかし、駅前の繁華街は、周辺の大型道路に商業施設が建設されたことで次第に空洞化。菊池さんの「何とかしよう」との声をきっかけに活動が始まった。
 大きな柱は二つ。一つは、上菅谷駅前の通りで重ねてきたイベントだ。8月を除いた偶数月の第1日曜日に年5回、定期的に開いてきた。多くの人に来てもらおうと、猿回しを招いたり、特設リングを作ってプロレスを披露したりと、さまざまな企画を展開。次第に定着するようになり、今では、那珂市内を中心に80前後のさまざまな業者が出店するまでになった。

 駅前のイベントでは多彩な企画を展開。特設リングでプロレスも披露=2018年4月、茨城県那珂市(カミスガプロジェクト提供)
 駅前のイベントでは多彩な企画を展開。特設リングでプロレスも披露=2018年4月、茨城県那珂市(カミスガプロジェクト提供)

 


 2年ほど前からは特別な企画を行わなくても、地域の定例行事として浸透。毎回、1万~2万人が訪れるようになった。出店を機会に駅前に店舗を構える業者もあり、にぎわいを取り戻す試みは実を結びつつある。

 ▽旧スーパーが映画、音楽の拠点に

 もう一つの柱は映画の製作だ。地域を走る水郡線を知ってもらおうと、12年から13年にかけて、地元の駅などを舞台にした3部作を送り出した。脚本や出演者、スタッフは、メンバーや住民が参加しての手作り。地域の公民館などのほか、東京都内でもきめ細かく上映会を重ね、あわせて1万人の観客を集め、自主製作の作品としては異例の「大ヒット」となった。

地元で撮影、スタッフも出演者も地元で。送り出したオリジナル映画のポスターを持つ菊池一俊さんと齋藤智美さん(右端)=2018年6月、茨城県那珂市
地元で撮影、スタッフも出演者も地元で。送り出したオリジナル映画のポスターを持つ菊池一俊さんと齋藤智美さん(右端)=2018年6月、茨城県那珂市

 


 映画やテレビの撮影を誘致しロケ地として、わが町をアピールする取り組みは各地に広がっている。しかし、住民自ら映画を製作し、地域の魅力を発信しているケースは少ない。地元を舞台にした映画製作は、その後も続き、17年には上映時間が2時間半もの大作を完成させるなど、オリジナル作品は計5本になった。
 17年秋には、ついに映画館まで建設してしまった。市内のスーパー経営者から、廃業する店舗の再利用の相談が始まりだった。敷地を借り受け、自前の資金や行政の補助金、市民の寄付も呼びかけて費用を確保。31の客席は、東京都内で解体された映画館から運んだ。手作りの映画館は、大手とはひと味違う作品の上映を続ける。「この映画を見たかった」と、遠方から訪ねてくる観客もいるという。

 市民の寄付も加わってオープンした映画館。定休日を除いて午前から連日、上映を続ける=2018年6月、茨城県那珂市
 市民の寄付も加わってオープンした映画館。定休日を除いて午前から連日、上映を続ける=2018年6月、茨城県那珂市

 


 敷地内のスーパーの旧店舗は一部を改装しライブハウスに。映画と音楽を発信する拠点に生まれ変わった。「高校生バンドの発表の場にも活用してほしい」と、菊池さんは話す。SNSのつぶやきから始まった活動は、確実に根を下ろした。(共同通信 伊藤祐三)

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