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山の中にステージ、音楽や農業で地域に活気を 「きみかげの森」(奈良市、第6回ブロック賞)

2018.5.28 14:46
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 森の中に作ったステージで、さまざまな演奏が行われ、多くの人が集まった=2017年8月、奈良市(きみかげの森提供)
 森の中に作ったステージで、さまざまな演奏が行われ、多くの人が集まった=2017年8月、奈良市(きみかげの森提供)

 

 古都として知られる奈良市。外国人ら多くの観光客でにぎわう繁華街を抜け、クルマで40分ほど走ると周囲は山がちの風景に変わっていく。都祁馬場町地区―。耕作放棄地や山林を見直し、人々が集う場に変えようという試みが続いている。


 ▽山林を開いて集いの場に

 森岡正宏理事長らが「きみかげの森」を設立したのは2010年。まず、取りかかったのは地元の山林の活用だ。使われていなかった森岡さんが所有する約10ヘクタールの山林に、約1・4キロの通路を作って整備を始めた。林の中に木製のステージを設け、立ち木の間には、やはり木製で、300人前後が座れるベンチを作った。鳥の声が聞こえ小川も流れるコンサート会場ができあがった。
 毎年夏には、さまざまな人が参加して森のフェスタを開く。ステージでは地元の中学生が吹奏楽を演奏したり、住民グループがエイサーをしたりと、多彩な演目が続く。森岡さんらもメンバー約20人で毎月、練習を重ねてきたコーラスを披露、多くの拍手を浴びた。
 会場には、こんにゃくや五平餅など、地元の産物を使った食べ物を売る屋台も並ぶ。放置され、訪れる人もいなかった山林は、歌声や笑いが広がる交流の場に変わった。きみかげの森のメンバーらは、シャクナゲや桜を植える取り組みを今も地道に続けている。

ステージを設け、集いの場を目指して取り組む森の入り口に立つ森岡正宏理事長=2018年5月、奈良市
ステージを設け、集いの場を目指して取り組む森の入り口に立つ森岡正宏理事長=2018年5月、奈良市

 

 ▽ジャガイモや甘茶の生産に期待

 耕作放棄地を借り受けて農作業も始めた。ジャガイモの栽培では、イノシシの被害を受けて収穫がゼロに終わった年もあったといい、畑の周囲をネットでおおう対策を重ねた。市価より安いとの評判から、老人ホームや保育園など地元に販売ルートもできた。
 今後、期待をかけているのは甘茶だ。岩手県から苗を取り寄せ、3年ほど前から栽培を始めた。収穫ができるようになるまでには、さらに2~3年かかるというが「日本固有の作物だから、海外からの関心が寄せられるのでは」と、森岡さんは話す。お茶は古くから地域の特産品の一つで、加工場も周囲にある。日本茶と甘茶とでは加工方法に違いがあるが、地域で培ってきたノウハウが生かせる可能性は高い。耕作放棄地を活用した新たな産物に育てたいと力を込める。

 耕作放棄地でジャガイモの植え付けに取り組むメンバー=2018年3月、奈良市(きみかげの森提供)
 耕作放棄地でジャガイモの植え付けに取り組むメンバー=2018年3月、奈良市(きみかげの森提供)

 

 ▽やりがいは集まった人の笑顔


 5月の晴れた日曜日の午後、森岡さんの自宅離れを改装した事務所にメンバーが三々五々、集まってきた。毎月行っているコーラスの練習だ。体を軽くほぐしたり、発声練習をした後、楽譜を手に歌を合わせる。平均年齢は70歳前後というが、歌声は元気いっぱいだ。

毎月、集まって行うコーラスの練習。真剣な表情で楽譜を追う=2018年5月、奈良市
毎月、集まって行うコーラスの練習。真剣な表情で楽譜を追う=2018年5月、奈良市

 

 一緒に歌っていた森岡さんは「参加した人や訪れてくれた人の笑顔を見られるから、やりがいがある」と話す。耕作放棄地の農作業で地元の高校農業科との協力など、若い世代との交流も模索する。高齢化や人口減少を抱える地域に、肩肘張らない活動で活気を呼び込むのが目標だ。(共同通信 伊藤祐三)

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