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(116)「決」 堤防切って水を流す

2010.10.18 9:16

 中国の神話的な王、舜(しゅん)が湖南省の九嶷山(きゅうぎさん)付近に葬(ほうむ)られたという話を「嶷」の字の説明の際にしました。「疑」は進むか退くかを決めかねて、杖(つえ)をもって立ち止まる人の姿です。その姿が高い山の様子に似ていたので「やまのたかいさま」の意味の「嶷」ができました。

「決」

 今回は決めかねている字ではなく、決断して「決める」字の紹介(しょうかい)です。まず「決」からです。

 この「決」は洪水(こうずい)関係の字です。古代中国では洪水を防ぐことがとても大切でした。紹介した舜もふくめ、堯(ぎょう)・舜・禹(う)と呼ばれる中国の伝説上の王様がいます。

 この堯・舜の時代に大洪水が起き、禹の父が洪水を防ぐために起用されましたが失敗してしまいました。息子の禹がその後を継(つ)ぎ、13年間かけて治水に成功。舜から国を譲(ゆず)られた禹が開いた国が殷(いん)の前の夏王朝です。

 「決」の右側「夬(けつ)」の「人」に似た字形の部分は古代の文字では「又(また)」の形で、これは「手」のことです。古代文字の「又」の上の字形は刃物(はもの)の形。特に一部分が欠けた玉環(ぎょくかん)(輪の状態になった宝石)のことです。このように一部分が欠けている玉環のことを「けつ(けつ)」といい、はさみ代わりに腰(こし)に着けていました。

 この「けつ」でモノを切るように、洪水の際には堤防(ていぼう)の一部を切って溜(た)まった水を流しました。それが「決」です。もともとは堤防の一部を切ることの意味でした。

 「夬」でモノを切る行為(こうい)には勢いやスピードがあって「快感」がともないます。そこから「こころよい」という「快」ができました。さらに「抉(けつ)」という字は「夬」を「手ヘン」で持つ形で、刃物などで何かを「えぐる」ことの意味となりました。

 また永遠の別れのことを「永訣(えいけつ)」と言いますが、その「訣」は関係が切れる時の別れの言葉です。着物の「たもと」の部分のことを「袂(べい)」と書きます。これにも切れた部分の意味があります。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

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