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蔵の街並み、酒造りの伝統を生かす 「鹿島酒蔵ツーリズム推進協議会」(佐賀県鹿島市、第6回優秀賞)

2018.4.26 16:56
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 九州の酒といえば焼酎のイメージが強い。しかし、コメと水に恵まれた佐賀県は日本酒の醸造が盛んだ。県西南部にある鹿島市は、県内だけでなく長崎県にも出荷する有数の酒どころとして知られてきた。古くから残る蔵の街並みと伝統の味を組み合わせた取り組みは、地域の宝に磨きをかける戦略として実績を築きつつある。

ツーリズムの期間中は酒蔵が並ぶ通りに多くの人が訪れ、賑わう=2018年3月、佐賀県鹿島市
ツーリズムの期間中は酒蔵が並ぶ通りに多くの人が訪れ、賑わう=2018年3月、佐賀県鹿島市

 


 ▽宿場町の横顔も、独特の情緒漂う

 市内の六つの酒蔵が中心となり「鹿島酒蔵ツーリズム推進協議会」を設立、2012年から酒蔵を巡るイベントが始まった。「酒蔵のまち」をアピールしようと機運が高まったのは、前年の11年に酒蔵の一つが出品した酒が、世界的な品評会でトップの評価を得たことがきっかけだった。好機をとらえようと、酒蔵が協力し組織を立ち上げ、活動はスタートした。

 酒蔵の周辺では酒の試飲だけでなく多彩な産物も並ぶ=2018年3月、佐賀県鹿島市
 酒蔵の周辺では酒の試飲だけでなく多彩な産物も並ぶ=2018年3月、佐賀県鹿島市

 


 酒蔵が集まる地区には江戸時代からの建物も残っており、06年に国の重要伝統的建造物群保存地区に指定された。通りの両側に白壁の土蔵や木造の大きな家が並ぶ光景は、独特の情緒を漂わせる。旅人の荷物を中継した「継場」といわれる建物の入り口には、馬をつないだ鉄の輪があり、街道沿いの宿場町としても栄えた当時の面影も伝える。
 酒蔵ツーリズムは、こうした街並みをさらに生かそうと、毎年3月末に開く。期間中は、日本三大稲荷の一つとして知られる祐徳稲荷神社など、市内のほかの名所とも連携して同時にイベントを開催。酒蔵や各地の会場と無料の路線バスで結んで「足」の心配をしないでお酒を楽しめる仕組みや、試飲などに使える割引券がついた公式ガイドブックも用意した。酒蔵だけでなく、さまざまなメニューを集中して並べることで「期間中は鹿島市全体をテーマパークにしたい」と、同推進協議会の光武博之会長は話す。
 地域を巻き込んだ取り組みは軌道に乗り始めた。12年に約3万人だった訪れた人は、右肩上がりで増加。隣接する嬉野市の酒蔵と連携して開催エリアが広がったこともあり、18年は2日間の期間中に、鹿島市の人口の3倍近い約8万8千人でにぎわった。

 日本三大稲荷の一つ、有徳稲荷神社の周辺でもイベントを開き市全体を盛り上げる=2018年3月、佐賀県鹿島市
 日本三大稲荷の一つ、有徳稲荷神社の周辺でもイベントを開き市全体を盛り上げる=2018年3月、佐賀県鹿島市

 


 ▽消費者と向き合う機会が刺激に

 「酒蔵の中には当初、お付き合いで参加しているという空気もあった。しかし、一変した」と、光武会長は振り返る。問屋や卸売り会社と取引してきた酒蔵にとって、ツーリズムは多くの消費者と向き合う初めての機会となった。「厳しい指摘もあるが、直接話して関心や反応を受け止めることで、酒造りのやりがいをあらためて感じることができた」という。
 年々、増える人に対応して路線バスの本数を見直すことや、通年での取り組みをどうするかなど課題はあるという。ただ、ツーリズムは酒造りという伝統に新たな光を当てた。酒蔵の後継者も育っている。光武会長は「鹿島の地域ブランドをもっと高めていきたい」と手応えを感じている。(共同通信 伊藤祐三)

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