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小湊鐵道の里山トロッコ列車

2016.6.3 11:00
(上)月崎~上総大久保で近づいてくるトロッコ列車をパチリ、(下)手前にタンポポのように綿状の種を飛ばす草を入れて見ましたが…
(上)月崎~上総大久保で近づいてくるトロッコ列車をパチリ、(下)手前にタンポポのように綿状の種を飛ばす草を入れて見ましたが…

 JR内房線の五井駅(千葉県市原市)を起点に、房総半島を横断する小湊鐵道。都心から近く、ドラマやCMの舞台になることも多い非電化のローカル私鉄である。朱色とクリーム色に塗り分けられたレトロな気動車が田園風景の中を行くだけでも十分に絵になるが、今回は昨秋から運行を始めた「里山トロッコ列車」を撮影し、乗車も体験してみようと久しぶりに足を運んだ。

 里山トロッコ列車は、五井から30分ほどのところにある上総牛久駅から、終点の一つ手前の養老渓谷駅まで、平日(金曜日)は1日2往復、土休日は3往復が運行している。乗車券のほかに500円の着席整理券が必要で、事前にインターネットや電話で予約する。

 小湊鐵道でかつて活躍した蒸気機関車(SL)を模したディーゼル機関車に、気動車と同じ塗り分けの4両の客車が連なっているという編成は、趣味的にはやや違和感もあるが、そこはご愛敬だ。

 5月14日、土曜日。朝から天気は上々。五井から約1時間で上総大久保駅に着いた。この辺りは高低差のある地形に水田がダイナミックに広がる好撮影地。歩いて牛久方向に戻り、カーブの手前の線路脇に立った。トロッコ列車の通過までさらに40分。頭の中で写真のイメージを描きながら、緊張が高まっていくこの時間を過ごすのも、鉄道撮影の醍醐味の一つだろう。

 「ポーッ、ポッ」。意外にもリアルな汽笛を響かせ、ゆっくりとトロッコ列車がやって来た。煙モクモクの本物のSLではないので迫力不足は否めないが、連写モードで撮影した。その場で画像が確認できるのがデジカメのいいところ(?)だが、これだ!と納得のいく1枚が撮れていないのは悲しいかな、いつものこと。すぐに折り返してくる上りのトロッコ列車を今度は思いきり広角で撮影し、リベンジを誓って次の列車で養老渓谷に向かった。

 ここで「撮り鉄」から「乗り鉄」に変身。トロッコ列車はそのままバックして折り返すため、今度は機関車が後ろから押す格好になる。停車中の機関車に近づくと、煙突から白い煙のようなものが。そばにいた運転助手氏いわく「沸点が低い水を温めて出している。甘い香りもするんですよ」とのことだった。

(上)養老渓谷駅にて。「煙」が出ているのが分かりますか?、(下)自然と笑顔が広がるトロッコの車内
(上)養老渓谷駅にて。「煙」が出ているのが分かりますか?、(下)自然と笑顔が広がるトロッコの車内

 初夏の柔らかい日差しが傾いてきた15時15分に養老渓谷を発車。小振りのトロッコをほぼ埋めた乗客はみな笑顔だ。中間の2両は窓がなく、一段と開放感がある。床と座席は木製で、天井はUVカットのガラス張り。懐かしさと新しさが同居して好ましい。吹き抜ける風に乗って、1匹のトンボが車内に舞い込んできた。

 先頭になったトロッコの最前部には運転台があり、ここで運転手が最後部の機関車を「遠隔操作」する。機関車の汽笛とは違う甲高い警笛を鳴らしながら、時速25~30キロのスピードで、田植えが終わったばかりの田園をのんびり走る。時刻表上の停車駅はタブレット交換のある里見駅のみだが、実際は安全確認のため、ほとんどの駅でいったん停車。1時間弱で上総牛久に到着した。

 年々減りつつある里山の雰囲気を、手軽に味わえるトロッコ列車はおすすめだ。小湊鐵道の職員の方々の対応も非常に丁寧だった。ただ、車内では駅や沿線のあれこれを紹介するアナウンスが絶え間なく続いたのが気になった。里山の雰囲気に静かに身をゆだねたい向きにはちょっとサービス過剰かもしれない。

 ☆藤戸浩一 五井から上総牛久まで乗車した昭和52年製の「キハ214」には若い女性がたくさん乗っており、近ごろ話題の「女子鉄」の広がりを実感しました