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東京・江東区の立派な“閉まらず”の踏切

2016.6.10 11:00
永代通りに君臨する立派な踏切
永代通りに君臨する立派な踏切

 東京・江東区を東西に結ぶ永代通りを荒川方面にぶらぶら歩いていると、立派な踏切に出くわす。片側3車線の道路をふさぐ踏切ではあるが、線路は単線、非電化。文字通り木製の枕木の間からは雑草が生え、ひっきりなしに車が走るのとは対照的にローカル色を醸し出す不思議な光景だ。

 この線路は総武線の新小岩と深川の越中島を結ぶJR「越中島貨物線」というれっきとした現役の貨物専用線だ。越中島貨物駅に陸揚げされたレールをディーゼル機関車で運搬して総武線方面に運んでいるという。

 ただし、列車が通り、踏切が閉まるのは1日わずか3往復程度だけらしい。大通りに堂々と鎮座する「閉まらずの踏切」という雰囲気だ。遮断機部分は頑丈な中央分離帯内に納められている。踏切には信号機が併設され、青なら一時停止はせず、そのまま皆渡っているようだ。

 とは言え、踏切前ではいったん停止する、という決まりが身に染みているドライバーにとってはどうしても手前で止まってしまうようでもある。信号機と踏切の組み合わせは結構ドライバーにとって悩ましい現場かもしれない。

 一方、貨物線に沿って北に少し歩くと葛西橋通りと交差する踏切に出会う。ここには信号機はないが、「踏切とまれ」の看板がある。ここも車はひっきりなしだが、遮断機が下りることはめったにないことを知っているのか、一応徐行はするものの停止せずに突っ切る車が結構あった。中にはまったく速度を落とさずに渡る車も。どんな時もいったん停止、が基本だが、「遮断機が下りないなら」なんて安易な考えで停止しない車もあるのかもしれない。

 さらに北に向かうと併行して「南砂線路公園」があった。江東区が掲げた看板によると「日本貨物鉄道の線路跡地を利用した公園」「貨物列車は江東区塩浜二丁目にある越中島貨物駅と葛飾区にある新小岩操駅の間を日曜日を除き、1日に3往復しており、レールを輸送するディーゼル機関車を見ることができます」とあった。なるほど柵越しには目前にレールや砂利を見ることができる。子どもにとってはいい貨物列車見学スポットだろう。

既に廃止され、存在しない「小名木川駅前」を表示する信号機
既に廃止され、存在しない「小名木川駅前」を表示する信号機

 さらに北に歩くと巨大なショッピングセンター「アリオ北砂」が突如顔を出す。ここは越中島貨物線の途中駅としてかつて存在した広大な貨物駅・小名木川駅だった跡地だ。アリオ前の交差点を見て信号機にある地名が「小名木川駅前」となっていることに気づいた。とっくに廃止されたはずなのにいまだに交差点名には駅名が残っている不思議さ。駅の痕跡はもはやどこにも見あたらなかったのに、こんなはっきりした“駅名表示”は珍しい。

 さてこの貨物専用線。現役だから決して遺構ではないのだが、江東区を縦に結ぶ沿線だけに江戸時代につくられた小名木川など多くの川をまたぐ鉄橋のほか盛り土、勾配標識など胸躍らす見るべきスポットはたくさんある。

 ただ、せっかく線路沿いを歩いたのにレールを運ぶ貨物列車を見ることはなかった。さすがに1日3往復ではよほど粘らない限り無理だろう。それだけの根性はなかったが、“閉まらず”の踏切でまっすぐに続く古びた線路を見ていると、都心と目と鼻の先に自分がいることを忘れてしまいそうだった。

 ☆共同通信社・植村昌則