メニュー 閉じる メニュー

注目のアラバマ大レシーブ陣 空中戦彩る逸材ひしめく今季

2014.8.6 12:10 丹生 恭治 にぶ・きょうじ
昨季、1年生で最優秀選手に選ばれたフロリダ州立大のQBウィンストン(AP=共同)
昨季、1年生で最優秀選手に選ばれたフロリダ州立大のQBウィンストン(AP=共同)

 「誰が書くねん。え、お前が? あかん。やめとき。ほかのことやったらかめへん。レシーバー? それだけはあかん」

 今回のテーマを、もし私が同学年の仲間に話したら、きっと全員がこう言って反対するだろう。

 冗談話である。現役時代、それも中学、高校のころからの…。

 数多い練習の中に、パスの練習がある。今でも試合前にフィールドで見ることはできる。センターがパサーにスナップする。レシーバーが左右どちらかから、ダウンフィールドへ走り出る。パサーが投げる。レシーバーが受ける。

 単純な練習で、私たちの現役当時は、ラインもレシーバーとしてこれに参加した。人数が少なく、レシーバーだけでは回転が早すぎて、練習にならないから、一種の穴埋めでもある。

 持久力はあるものの、反射神経には恵まれなかった私は、ここでいつも恥をかいた。ボールを受けるのが、実に下手くそだったのである。ボールは私の胸ではねる。肘と肘の間を腕にも触れず通過する。両手が空をつかむ。保持する前に飛び出てしまう―といったケースが数限りなくあった。

 中学から高校、高校から大学と、私の平均以下のレシーブ力には尾ひれがついて今日に至っている。無論、上達はしなかった。同期生だけの冷やかしであり、冗談なのだが、会うたびに言われ続けていると、その本人がこんな時に枕に振ってしまうのだから困ったものだ。

 今回はレシーバーを取り上げる。ワイドレシーバー(WR)とタイトエンド(TE)である。アメリカンフットボールを特徴づける数多い要素の中で、ボールを前に投げることができる、というのは最もよく知られたものの一つだろう。

 細かいことは、一緒に観戦する隣のお仲間に聞くのが手っ取り早いので、ここではごちゃごちゃ書かない。要するに攻撃に際して、1プレーで一度だけ、ボールを前に投げることができるという取り決めがある。これが前パス、縮めてパスという。投げる方をパサー、受け取る方をレシーバーという。

 パサーはポジションでいえばクオーターバック(QB)かテールバック(TB)。3週ほど前に全米大学体育協会(NCAA)選りすぐりのパスの名手たちを紹介したが、彼らとて受け手がいないことには、いくら上手にボールを投げたところで何の役にも立たない。

 いわばレシーバーあってのパサー、パサーあってのレシーバーなのだが、このへんが理屈では分かっていてもなかなか思うようにはいかないのが、指導者たちの悩みである。

 その昔、私が現役だったころ、つまり1950年代はまだWRというポジションはなかった。レシーバーは左右のエンドであり、そのエンドの近くに位置を取るバックスらもその役割を担った。

 エンドには右と左があったので、ライトエンド(RE)とレフトエンド(LE)と簡単な呼び方をした。バックスでそのような場所へ位置を取るのはハーフバック(HB)が多かった。

 HBも右と左があったので、RHBとかLHBとかいったが、こうした選手の位置や場所に基づく呼び方は、攻撃のプレーの変化とともに、次第に廃れていった。

 50年代後半、台頭してきた日大はアンバランスTのみならず、さまざまな新機軸を披露した。その中の一つに執拗なエンドチェックがあった。少し前からあった技術である。

 相手のエンドがダウンフィールドへ出ようとするのを、スクリメージ上で逆にブロックしてしまう、または押さえてしまうというプレーである。相手がパスのチームだと、日大がこれを多用したのを思い出す。

 これと直接の関係はないが、米国でも似たケースはいくらでもあっただろう。時代が進むにつれて、レシーバーはだんだん味方のラインから離れ、素早くダウンフィールドへ出られるような位置を取るようになった。

 守備陣がこれに伴って位置を変え、左右前後の間隔が多少開き気味となり、配置が少し薄くなるのも、攻撃側のつけ目だった。こうしてWRが生まれた。

 ポジション論議をやるつもりはさらさらないのだが、観戦中のお仲間から、フランカー(FL)とは、スロットバック(SB)とは、スプリットエンド(SE)とは、といった疑問が数限りなく投げかけられるのに、お困りの方がおいでになる、とも聞いている。

 位置を取る場所でこうした呼称が生まれるのだが、レシーバーに関しては確かに多い。細かく説明するのがお好きな方はご自由にどうぞだが、面倒な方はこれらをひっくるめて、WRで片づけても、何ら差支えないことだけは申し上げておく。

 余談は置いて、話を続ける。こうして選手を外に配置する理由はあるが、だからといってエンドを全部ラインから引き離すわけにもいかなかった。ラインの端、つまりタックルと肩を並べる場所で、守備のラインと渡り合う、ブロッカーとしての大切な役目も残っていた。

 最低一人は必要だった。こうしてラインと協力し合えるご近所に位置するエンド、特別にタイトエンドと呼ばれるブロッカーを兼ねるレシーバーが出来上がった。

 このレシーバーが、ダウンフィールドへ素早く出るのを妨害しようとしたら、逆にブロックされる危険性が生じる。かといって放っておくわけにもいかない。

 早いタイミングのパスを通されると、あっという間にファーストダウンだ。守る側にとってはそれなりに面倒な「レシーバー」が現れたことになる。実戦でストロングセーフティー(SS)がマークしているのも、このような理由によることが多い。

 ブロッキングから解放されたWRは、サイズは求められない。必要なのは、速さ、敏捷性、足さばき、そしてボールをしっかりとつかみ取る「手」である。TEは速度、捕球力などのほかに、サイズも必要となる。

 こうした能力を兼ね備えているのが、海の向こうのレシーバーたちである。そこで今季、注目されるNCAAの全米級の選手を少し挙げて見る。4年、3年が多いのは、それなりに経験を必要とするからだろう。

 WRでは南加大3年ネルソン・アゴーラー、アラバマ大3年のアマート・クーパー、カンザス州立大4年のタイラー・ロケット、ベイラー大4年アントワン・グッドリーの4人の評価が図抜けて高い。

 続いてフロリダ州立大4年のラシャド・グリーン。前々回も書いたような気がするが、QBジャーミス・ウィンストンの主要ターゲットとしての評価も高い。

 ルイビル大4年デバント・パーカー、メリーランド大3年スティフォン・ディグズ、TE級の体格を誇るミシガン大3年デビン・ファンチェスらも注目されよう。

 TEはフロリダ州立大の4年ニック・オレアリーが、パサーのウィンストンとの兼ね合いで、圧倒的にオールアメリカとして支持を集めている。ほかに独立校ノートルダム大の4年ベン・コヤック、オハイオ州立大4年ジェフ・ホーマンら、ベテランの名が並ぶ中で、アラバマ大のO・J・ハワードが2年生ながら全米級に挙げられていたのが目を引いた。

 アラバマ大はこのほか、WRに2年のデリク・ヘンリーが買われており、レシーバーの質、量ともに全米一といった評価を受ける。

 そのレシーブ陣を生かすために、フロリダ州立大でウィンストンの補欠に回っていたジェイコブ・コーカーを迎え入れ、パサーのてこ入れをしたのも書いたように思う。練習ではいい感じだったそうで、この秋のアラバマ大はそれなりに楽しめそうだ。

 ほかにもいいユニットとして、いくつかの大学を「アスロン・スポーツ」誌が紹介しているので、これも追加しよう。

 アラバマ大に続くのはオールアメリカ級のWRとして書いたばかりだが、グッドリーを中心に据えるベイラー大の名が上がる。4年のQBブライス・ペティというビッグ12を代表する名手を擁するせいもあって、2年生のコーリー・コールマン、3年ジェイ・リー、4年リーバイ・ノーウッドらスピードを誇るWR陣への期待が大きい。

 3年のRBトッド・ゴーリーばかりに目が向いているが、ジョージア大のパスも侮れないと同誌は力説する。

 QBハトソン・メーソンが投げ、WRクリス・コンリー、マイケル・ベネットが捕るこの4年生のトリオはけがさえなければ、個人的には突出はしていないものの、油断できない存在、と語っている。

 このほかアリゾナ大、メリーランド大のレシーバーたちの顔ぶれも素晴らしいのだそうだ。

丹生 恭治 にぶ・きょうじ

名前 :丹生 恭治 にぶ・きょうじ

プロフィール:1934年生まれ。関西学院大学卒業後、東京新聞社で運動記者としてスタートし、1962年に共同通信社へ移籍。著書に、中学時代から関学で親しんだアメリカンフットボール生活を描いた「いざいざいざ」がある。甲子園ボウルには高校時代と合わせて6度優勝。

最新記事