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英南部で使われた毒物は化学兵器か

2018.3.9 12:05
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事件について報じるロシアのニュースサイト「ガゼータ・ルー」
事件について報じるロシアのニュースサイト「ガゼータ・ルー」

 英南部でロシア元情報機関員セルゲイ・スクリパリ氏(66)と女性が何らかの毒物の中毒により重体となって見つかった事件は、連日、英メディアで大々的に報じられている。2006年のロシア連邦保安局(FSB)元職員のアレクサンドル・リトビネンコ氏暗殺事件の連想から、今回もロシア情報機関による「裏切り者」に対する暗殺との疑いがもたれており、焦点はこの毒物が何であるかに集まっている。既に人間の神経伝達を阻害する毒物であることは明らかにされているが、英BBC放送はこの物質がサリンやVXなどこれまで知られている神経ガスと比べ、滅多に使われることのないものであると伝えた。化学兵器禁止条約(CWC)で定義される化学兵器に該当する可能性も浮かんできた。

 女性はその後の調べで、スクリパリ氏の娘のユリアさん(33)と判明。ロシアから父親の元を訪れていた。通報を受け現場に駆けつけ、2人を最初に介抱した警官も重体となっている。英スカイニューズは、この事件で被害を受け、医師の手当を受けた人は計21人に上ると伝えた。この毒物が地下鉄サリン事件で使われたサリンと同様に、広く拡散する物質である可能性もある。スクリパリ氏とユリアさんが中毒となる前に立ち寄ったレストランやスクリパリ氏の自宅は封鎖され、現場検証とともに除染作業が行われている。

 ロシアの関与を示す報道を受け、ロシア外務省報道官は「反ロシアキャンペーンの一環」と関与を否定したが、国際婦人デーの8日に女性をたたえる演説をしたプーチン大統領は事件に触れなかった。ロシア政府系テレビ第一チャンネルの看板ニュース番組「ブレーミャ」では、キャスターが「個人的には誰の死も望まないが、純粋に教育的目的で、スパイのような職業を夢見る人に対し警告がある。裏切り者という職業は世界で最も危険なものだ」と皮肉たっぷりにコメントした上で、裏切り者となる事を選んだものが長生きすることは滅多にないと付け加えた。

 使用された毒物が容易に入手できず、大規模な製造施設が必要な化学兵器ということになれば、ロシアの関与説はますます強まり、英ロ関係の悪化は必至だが、今月18日のロシア大統領選で現職のプーチン大統領に不利に働くことはほとんどないだろう。今回の事件を受けた世論調査こそはないものの、クリミア併合以来、反欧米かつ国家主義的色彩を強めるロシア世論の傾向を鑑みれば、プーチン氏の支持率上昇の材料となる可能性すらある。 (47NEWS編集部 太田清)