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苗木から育て、里山を花の名所に 「焼津市山の手未来の会」(第3回優秀賞、静岡県焼津市)

2018.3.7 15:25
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 マグロなどの遠洋漁業で全国に知られる静岡県焼津市。海の幸や駿河湾の景観だけが観光の柱ではない。「焼津市山の手未来の会」は、海や鉄道駅から遠い市北部で約20年前から桜や梅の植樹に取り組み、里山を3万人もの花見客を呼び込む新名所に変身させた。

早咲きの河津桜を楽しむ花見客。土手には越前水仙も植えられている=2月25日、焼津市策牛
早咲きの河津桜を楽しむ花見客。今年は例年より開花が遅く、この日はまだ三分咲きだった。土手には越前水仙も植えられている=2月25日、焼津市策牛

 

 ▽バスで関西からも花見客

 JR焼津駅からバスで約15分の山の手地区で、2月25日に開かれた「第14回山の手さくら祭り」。高草山と朝比奈川が広がる自然のパノラマを背景に、早咲きの河津桜約200本が川堤の約2キロに渡って濃いピンク色の花を咲かせていた。駐車場や仮設トイレを備えた会場には地元の家族連れをはじめ、長野県や首都圏、関西からのツアーバスが次々と乗り入れる。地元産のミカンや間引きした桜の枝200本の販売は開始1時間でほぼ完売、24万円を売り上げた。

手入れで伐採し、室内で温度管理していた河津桜の枝の販売会。開始1時間で完売した=2月25日、焼津市関方
手入れで伐採し、室内で温度管理していた河津桜の枝の販売会。開始1時間で完売した=2月25日、焼津市関方

 

 ミカンや茶栽培など農業が中心で、目立った観光拠点がなかった山の手地区で1996年、町内会役員OBらが「地域のために楽しみながら何かできないか」と、同会を設立した。寒冷期に咲き、甘い香りを放つロウバイや白梅の苗木を育てて民家に配り、鑑賞ツアーを開く活動からスタート。「花と香りの郷」を目標に、当時珍しかった河津桜の苗木40本を伊豆から取り寄せ、会員で接ぎ木をしながら200本の桜並木に育て上げた。剪定や虫の駆除など年間を通じて手入れが必要だが、現在も101人の会員全員で管理にあたる。
 「花の少ない時期に地域を彩り、人を呼び込む」(山田宏会長)戦略が当たり、SNSなどの口コミで花見客が増え、バス会社もツアーのコースに組み込むようになった。開花期間中の来場者は約3万人。桜の植樹に貢献した団体や個人に贈られる「全国さくら功労者」も昨年受賞した。

満開となった河津桜。視界が花で埋め尽くされるような迫力だ(3月4日、提供写真)
満開となった河津桜。視界が花で埋め尽くされるような迫力だ(3月4日、提供写真)

 

 ▽山の観光資源、次々発掘

 地区に眠っていた観光資源の発掘にも次々取り組んだ。高草山など周辺の山には中世の遺跡や古墳が集積しており、会が各所に案内看板を設置。ハイキングコースを整備し、道の補修や草取りを継続して市内外からハイキング客を誘致した。山城跡には狼煙(のろし)台の石が残っていたことから、毎年11月3日にヒノキの生葉や火薬を燃やして狼煙を再現するユニークな試みも続けている。こうした名所旧跡を巡る「ふるさと探訪」ツアーを毎年開催することで、地区の伝統を次世代に伝える役割も担う。
 看板の設置費用は募金で賄い、さくら祭りの会場駐車場も周辺の事業所から敷地を借りることで確保。大きな予算を掛けず、地道な活動で、来訪者を癒す里山の魅力を発信している。

「焼津市山の手未来の会」が設置した案内看板の前で説明する現会長の山田宏さん(左)と初代会長の永田壽男さん(右
「焼津市山の手未来の会」が設置した案内看板の前で説明する現会長の山田宏さん(左)と初代会長の永田壽男さん(右)=2月25日、焼津市関方

 

 活動開始から22年。会員は設立当初の60人から101人に増えているが、課題は高齢化だ。山田会長(75)は「ハイキングコースの補修や桜の手入れの高所作業は年々大変になっている」とした上で「活動の認知度は年々高まっている。若い世代の勧誘にもさらに力を入れたい」と意気込む(共同通信 錦織綾恵)

行政も山側の観光資源に目を向けるようになった。焼津市観光協会は見スポットをまとめた「さくらマップ」を作成。焼津市も景観法に基づく景観まちづくりの基本方針案に、朝比奈川沿いで「桜並木と調和する田園景観の誘導」を進めることを盛り込んだ。戦国時代に今川氏が高草山で築いたとされる山城の城跡整備事業にも新年度から着手する方針で、観光拠点化を目指す。
行政も桜や里山の魅力をいかした観光に目を向けるようになった。焼津市観光協会は花見スポットをまとめた「さくらマップ」を作成(左)。焼津市も景観法に基づく景観まちづくりの基本方針案に「桜並木と調和する田園景観の誘導」を朝比奈川沿いで進めることを盛り込んだ(右)。戦国時代に今川氏が高草山で築いたとされる山城の城跡整備事業にも新年度から着手する方針で、観光拠点化を目指す。

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