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日本のミサイル防衛「穴の開いた傘」

2018.3.2 14:36 共同通信
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議会への年次報告演説を行うプーチン大統領=1日、モスクワ(タス=共同)
議会への年次報告演説を行うプーチン大統領=1日、モスクワ(タス=共同)

 ロシアのプーチン大統領が1日、連邦議会に対して年次報告演説を行った。毎年の恒例行事となっている同演説だが、例年と違っているのは12月に行われるはずが翌年3月にずれ込んだこと、経済、社会、貧困対策などに重点が置かれていたこれまでと異なり、演説時間の多くが米国に対抗する最新の戦略兵器の紹介に費やされたことだ。演説時間は約2時間と、これまでで最長。いずれも18日の大統領選をにらんで、「強いロシア」を有権者に印象づけることが狙いだったことは明らかだ。

 プーチン氏はこの中で、米国が世界で進めるミサイル防衛(MD)網構築に対抗しなければロシアの核戦力が無力化されるとの危機感を表明。こうしたMD網を無力化する大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発に成功したと強調した。

 演説を受け、ショイグ国防相はロシア通信に対し、「(米国が)ポーランドとルーマニア、アラスカで配備を進め、近い将来、日本などにも導入されるミサイル防衛システムの傘には『穴』が開いている」として、ロシアの新兵器はこうしたシステムをたやすくくぐり抜けられることを誇示。その上で、米国はなぜこのような無駄な「傘」に多額の予算を割いているのか理解に苦しむとも述べた。

 ブッシュ政権下の米国が2002年、米ロ双方のMD開発に制約を加えていた弾道弾迎撃ミサイル制限(ABM)条約から一方的に離脱して以来、ロシアは米国のMD開発により、自身の戦略核が無力化し、核の均衡が崩れることを懸念。プーチン大統領は演説で「誰も(ロシアの懸念を)聞いてこなかった。(新兵器開発で)ようやく、耳を傾けることになる」と強調した。

 米国からの攻撃でロシアの核戦力が無力化され、結果的に米国に屈服する「悪夢」を描いた「ロシアへの一撃」を書いた政治学者バレリー・コロビン氏は「(メドベージェフ前大統領ら)自由主義者の(米国迎合)政策がようやく正される時が来た」と評価するなど、国内の保守派は演説大歓迎の姿勢を見せている。

 米軍がイランからのミサイル防衛と称して、16年にルーマニアで運用を始め、18年にはポーランドにも配備予定の迎撃ミサイルについて、プーチン大統領は「イラン核問題で(イラン、欧米各国との)合意が成立し、核の脅威が事実上なくなったにもかかわらず、なぜ配備の必要があるのか」と指摘。欧州のMDはロシアを対象にしたものだとの疑いを投げかけているが、日本が導入する地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」についても、米国が世界中で整備するMD網の一環と見なしており、米ロ間の中距離核戦力(INF)廃棄条約に反していると主張している。

 「穴が開いている」かどうかは別にしても、果たしてロシアの主張は正しいのか。イージス・アショアは、イージス艦と違い、陸地に配備するため、常時警戒が容易で、部隊の負担も軽減される利点があり、日米が共同開発している改良型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」も搭載可能で防護範囲や命中精度の向上も見込めるとされる。防衛の対象と想定しているのは言うまでもなく北朝鮮のミサイルで、イージス・アショアに「深刻な疑念を抱いている」(ラブロフ・ロシア外相)と言われても、首をかしげたくなるのは筆者だけではあるまい。(47NEWS編集部 太田清)