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(208)「朗」 月光がよく澄んで通ること

2012.8.17 10:13

 慌(あわ)てふためくことを「狼狽(ろうばい)」と言います。「狼」はオオカミですが、「狽」もオオカミの一種だそうです。この「狽」は学校で学ぶ漢字ではないので、必ずしも覚える必要はないですが、でも「狼狽」にはとても面白い話があります。それをまず紹介(しょうかい)しましょう。

 「狼」は前の足が長く、後ろ足が短い。「狽」は逆(ぎゃく)に前足が短く、後ろが長い。だから「狼」と「狽」はいつも一緒(いっしょ)に行動していて、お互いが離(はな)れると倒(たお)れて、うろたえることから「狼狽」の言葉が生まれたそうです。

 笑ってしまう話ですが、童話「赤ずきん」で知られるように、「狼(おおかみ)」は怖(こわ)い動物でもあります。

 「波」のことを「浪(なみ)」とも書きますね。「波浪(はろう) 注意報(ちゅういほう)」という言葉も天気予報でよく聞くと思います。無駄遣(むだづか)いを「浪費」、さまよい歩くことを「放浪」と言います。

 「良」は「よい」の意味なのに、あまりよいイメージのない「狼」や「浪」に「良」の形がなぜふくまれているのか、不思議でした。でも「良」という漢字の成り立ちを知ってみれば、みなこれらはちゃんとつながりがある文字だったのです。

 この「良」は中に穀物(こくもつ)を入れて風を送り、もみ殻(がら)を取り去って実だけを残す道具の形です。穀物をより分けて、よいものを選び出すことから「よい」意味となりました。

 「太郎(たろう)」「次郎」の「郎」は、「良」が「よいもの」を選び出すことから、「良士」「よい男」の意味となりました。

 風を通して実と殻をより分ける「良」には「よく通る」意味があります。「朗(ろう)」は「ほがらか、あきらか」の意味に使いますが、もとは「月」が明るいこと。月光がよく澄(す)んで通ることです。

 さて「狼」と「浪」です。風を通して実と殻を分ける際(さい)に激(はげ)しく動かすので、「良」に「激しく動く」「乱(みだ)れる」意味があります。そんな意味を持つ動物としての「狼」、動き乱れる水としての「浪」という文字ができたようです。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

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