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地方で深刻な看護師不足 採用は民間頼みで負担増  日医総研がリポート

2018.3.20 11:00
 看護師不足は人口の少ない地方の医療機関ほど深刻で、看護師を確保するために医療機関が民間の紹介会社に支払う紹介手数料が大幅に増えていることが日本医師会総合政策研究機構(日医総研)の調査リポートで分かった。日本看護協会は看護職確保のために無償で職業紹介する制度「ナースセンター」を通じた紹介業務を強化。子育てや介護、キャリアアップにも時間が割ける働き方改革にも力を入れる。
 
 
 
 

 ▽膨らむ紹介手数料

 調査をまとめたのは、日医総研の堤信之、坂口一樹・両主任研究員。昨年5月から6月にかけて、全国の約4千の医療機関に呼び掛け、インターネットを通じて844機関から回答を得た。

 調査結果で目立つのは民間紹介会社への紹介手数料の急増だ。2016年度に支払われた手数料は常勤の看護職員1人当たり平均約87万円。14年度には844医療機関で計約11億円だった総額も、16年度には約16億円に膨らんだ。16年度に1千万円以上かかったのは36病院あった。
 

 堤さんは「民間紹介会社を頼る病院にとって重い負担になっていることが数字で裏付けられた」と話す。

 一方でリポートでは、そうした民間紹介会社経由で採用された看護師は早期に離職する割合が高いことも分かった。1年以内で離職した看護師は、全体で6・1%に対して民間紹介では11・3%で、半年以内の離職も同3・0%と6・6%だった。医療現場で既に指摘されていた、出入りの激しさがはっきりした。

 
 

 ▽地域的な偏り

 医療機関ごとの看護師の不足に、ほかに傾向はあるのか。立地する自治体の規模別で分析した結果では、地域的な偏りの問題が浮上する。

 人口100万人以上の都市部の医療機関で、看護師が「不足している」「不足がよくある」とした割合は計53%。一方、人口10万人未満の自治体の医療機関では75%に上り、「過疎地域」に指定された地域ではさらに厳しく83%が看護師不足を訴える。欠員の補充ができているかどうかの問いでも同様の傾向だった。

 リポートが改善策として提言したのが、法律に基づき発足したナースセンターの一層の活用だ。センターは都道府県の指定を受けて各地の看護協会が運営する。ただ、利用者に業務が知られておらず、実績がなかなか伸びない。協会は女性誌に広告を出したり、アクセスしやすい支所を増やしたりして利用拡大に懸命だ。15年に始まった離職看護師らの届け出制度を就労支援につなげる方策も検討している。

 ▽質の向上も期待

 熊谷雅美・同協会常任理事によると、民間に比べてナースセンターがアピールできる点はベテラン看護職が経験を基に懇切に相談に応じるきめ細やかな対応だという。

 看護師は94%が女性。センターでは、例えば結婚や出産でキャリアが途切れるのではと心配する利用者には、どうしたら就労や勉強を続けられるかを具体的に助言し、民間会社では敬遠される中高年の就労希望者にも、地域の医療の実情や本人のこれまでのキャリアに応じた適切な就職先を紹介する。

 10年からは協会として「ワークライフバランス」の実現に向けた対策も強化。看護職自身の働き方への意識改革や、安定した雇用を望む医療機関に向けた研修など、より働きやすい職場づくりへの活動も強めた。

 熊谷さんは「ナースセンターの取り組みは個々の就労支援ですが、安定した雇用関係が保てれば、長い目で見て看護と医療の質も向上し、患者さんにとっても望ましいこと」と話している。
 
(共同通信 由藤庸二郎)

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