X1スーパー昇格懸け入れ替え戦出場 選手の皆さん覚悟しいやー!

2022年12月01日
共同通信共同通信
中村 多聞 なかむら・たもん
アズワン戦でハドルを組む電通オフェンス陣=中村多聞さん提供
アズワン戦でハドルを組む電通オフェンス陣=中村多聞さん提供

 

 僕がコーチをしている電通キャタピラーズは、11月27日に神戸で行われた最終節でアズワンに勝ち、6勝1分けの勝ち点19でXリーグのX1エリアで1位になり、最上位のX1スーパーの下位チームとの入れ替え戦に出場します。対戦相手はオール三菱ライオンズです。勝てば日本選手権(ライスボウル)への道が開けるX1スーパーに昇格です。

 試合は12月10日、富士通スタジアム川崎で11時キックオフです。

 

 オール三菱はコロナ禍でリーグ戦への出場を自粛したりして、2019年以来公式戦での勝利がありません。その最後に勝利した対戦相手というのは、当時僕がコーチをしていたノジマ相模原ライズです。

 その敗戦によってノジマ相模原は下のリーグとの入れ替え戦に出たという敗戦だったことを思い出します。その時にオール三菱のオフェンスを率いていたQBの一人が、今は電通で一緒にオフェンスコーチをしている関学大出身の斉藤圭さんです。

 

 勝手な予想ですが、それだけ勝利から遠ざかっているチームですから、ベテランやコーチたちはかなり勝利に飢えていると考えられます。

 ノジマ相模原で敗戦した時も最下位争いでしたが、彼らの「思い」や「気迫」に負けたように感じています。準備もすごかったです。一つ一つのプレーへの執着心が我々より勝っていました。

電通のオフェンスを担当する斉藤圭コーチ(中央)=中村多聞さん提供
電通のオフェンスを担当する斉藤圭コーチ(中央)=中村多聞さん提供

 

 Xリーグではどのチームもだいたい同条件のメンバーが集結し、だいたい同条件でシーズンを過ごしていると思います。

 一方が週6日まるまる一日中練習して高額なサラリーを手にし、また一方は予算がなさ過ぎて練習場もろくになく人もあまり集まらないので練習にならない。このような対戦は僕の知る限りありません。

 大学時代に活躍した一流から、僕のように下部や地方から力試しに乗り込んできている人までさまざまではありますが、状況はだいたい同じようなものでしょう。

 

 練習の条件もほぼ同じ。オール三菱とは以前合同練習をさせてもらった経験があるのですが、練習場所の利用環境についてはキャタピラーズより彼らの方が恵まれています。まあそれも不公平と言えるほどでもありません。

 昨今のXリーグではアメリカ人枠のクオリティーがチーム成績に大きく影響するようになってきています。両チームとも今シーズンからQBにアメリカ人を起用し、オール三菱のジョン・ギブス・ジュニアは走力、電通のアーロン・エリスはパスと、それぞれ持ち味を発揮していて、チーム記録を更新するような働きをしています。

 

 僕自身も選手とコーチで入れ替え戦を数回経験しています。もちろん下克上があるからこのような対戦カードが組まれているとは思いますが、僕の経験だけで言いますと入れ替わったことはありません。必ず上が勝利し、下が負けました。つまり上への挑戦は退けられました。

 

 日本中のリーグで、特に学生リーグの入れ替わりは度々目にしますね。学生は1年単位でメンバーが必ず変わるので、チーム力の安定が非常に難しいとされています。

 しかし、社会人では新興チームがメキメキと力を付けていくような感じでもない限り、あまり入れ替わりはありません。

 

 下のリーグで優勝し上昇機運のチームが、上のリーグで負けまくって入れ替え戦に出てくるチームに挑む。

 乗りに乗っている感じではありますが、そもそものリーグのレベルがどの程度違うのかは誰にもわかりません。日本一に何度も輝いたような強豪を相手に何年も戦ってきているわけですから弱いはずはありません。

 

 オール三菱からすれば「下のリーグなんかに負けるわけにはいかないし、負けるはずがない」と関係者全員が思っていることでしょう。

 電通は「上のリーグに勝てるのだろうか? やっぱり結構強いんじゃないの?」と思ってしまう関係者もいるはずなのです。

 

 ここの部分だけでもしっかり詰めておかないと「劣勢になった時にガックリムードになって、全てが悪い方向へ転がっていく」の法則が当てはまってしまいます。

 スタッフ、関係者、ファンは、劣勢の時こそ笑顔で元気を届けていただければなと思います。

 

 プレーヤーは準備できることもそれほど多くないので、これまでやってきたことの習熟度が試されます。そしてそれをゲームで存分に発揮できるかは、心の準備次第です。

 想定外のことはスポーツではよく起こります。その時に気持ちを落ち着かせて自分の仕事をゲームセットまでしっかりやり遂げ続ける。オフェンスはとにかくボールを前に進めるために、強くしつこくブロックし続ける。守備はタックルし続ける。

 

 相手のいいプレーにやられることはよくあるので、覚悟しなければいけません。でも、相手もそんなにいいプレーばかりを続けられません。心を乱さず闘志を燃やして最後まで戦えたらいいのですが。

 まあ、両チーム関係者のほとんどは僕のコラムなど読みませんので、独り言みたいなものですが、指導しているRBにはこのゲームこそ活躍してもらいと思っています。

アズワンと最終節で対戦した電通のサイドライン=中村多聞さん提供
アズワンと最終節で対戦した電通のサイドライン=中村多聞さん提供

 

 ガラッと話は変わりまして、僕は先日ある選挙に立候補しました。政治家ではありません。一般社団法人日本社会人アメリカンフットボール協会の「NFA理事選挙」というものです。

 社会人リーグ(現Xリーグ=1996年発足)を運営している組織です。一昔前、社会人フットボールが盛んになり、バブル期には約100チームもの登録があり活況を呈していたわけですが、最近では50チーム弱と半減してしまいました。少子化や不景気など衰退している原因は多くあるのでしょうけれど、少し悲しい気持ちになりますよね。

 

 このコラムでも幾度となく書いていますが、社会人リーグ(当時はまだXリーグではなかったので、ここでは社会人リーグと言わせてください)というものが日本にあったからこそ、僕のように弱小大学出身者でも活躍できるチャンスがあったわけです。

 社会人リーグで頑張りたい、結果を出したいと強く念じて学生時代を過ごし、バブルが弾けた直後の90年代前半に社会人リーグへ意気揚々と乗り込んだものの、トップレベルの厳しさを痛感しました。

 幾多の障壁を「憧れ」で乗り越えてきました。大きな試合で勝利できたのも「社会人リーグ」というものが僕にとって非常に重要な位置に存在してからなのです。

 

 フットボールが好きだという気持ち以外、他に何も持っていなかった僕を受け入れて鍛えてくれた社会人リーグですので、たまたま知った「Xリーグの役に立つ機会」に手を上げることにしました。

 他の立候補者との選挙戦に勝利せねばその仕事には携われませんが、これといった選挙活動ができるわけでもなく、結果を待つだけです。

 

 海外のフットボールを体験して学んだこと、下部リーグでの経験などを生かすことができれば、くらいに思っています。優しく見守ってください。落選したらこの件についての続報はありません。

 

 でも、まずは入れ替え戦に向けて頑張ります。選手にとっては、今シーズン最悪のハードな練習になるので覚悟しいやー!

 

 
 

中村 多聞( なかむら・たもん)プロフィル
1969年生まれ。幼少期からNFLプレーヤーになることを夢見てアメリカンフットボールを始め、NFLヨーロッパに参戦しワールドボウル優勝を経験。日本ではパワフルな走りを生かして、アサヒ飲料チャレンジャーズの社会人2連覇の原動力となる。2000年シーズンの日本選手権(ライスボウル)では最優秀 選手賞を獲得した。河川敷、大学3部リーグからNFLまで、全てのレベルでプレーした日本でただ一人の選手。現在は東京・西麻布にあるハンバーガーショップ「ゴリゴリバーガー」の代表者。