【編集後記】Vol.416=「頑張った4年生へ」

2022年11月25日
共同通信共同通信
宍戸 博昭 ししど・ひろあき
脳しんとうの疑いがあるとして、早大戦の途中から出場しなかった法大のエースRB星野凌太朗選手=高木信利
脳しんとうの疑いがあるとして、早稲田戦の途中から出場しなかった法政のエースRB星野凌太朗選手=高木信利

 

 放送席の隣で法政と早稲田の試合の実況をしていた近藤冨士雄さんが、両校の4年生全員の名前を読み上げた。抑制の効いた声の響きは、まるでドキュメンタリー番組のナレーションを聞いているようだった。

 

 「コロナ禍に翻弄されながらよく頑張った今年の4年生へ、リスペクトの思いを込めました」

 NHKのアナウンサー時代からスポーツ中継の名手として知られる近藤さんらしい、心憎い演出だった。

 

 優勝を懸けた6戦全勝同士の試合は「負けない早稲田」が不利の予想を覆し「強い法政」に30―18で勝った。

 法政の絶対的エース、RB星野凌太朗選手は脳しんとうの疑いがあるというトレーナーの判断で、前半の早い段階でベンチに下がり、その後は一度もボールを持つことなくサイドラインから仲間のプレーを見守った。

 

 横浜スタジアム内で行われた記者会見。昨年、法政に敗れ「勝たせてやりたかった…」と涙を流して絶句した早稲田の高岡勝監督は、いつもの明るく饒舌な指揮官に戻っていた。

法大を破り3年ぶり7度目の優勝を果たした早大の高岡勝監督(右)と亀井理陽主将=11月23日、横浜スタジアム
法政を破り3年ぶり7度目の優勝を果たした早稲田の高岡勝監督(右)と亀井理陽主将=11月23日、横浜スタジアム

 

 一方、4月に就任した法政の富永一ヘッドコーチは「切り札」に起きたアクシデントをはじめ、一切言い訳をしなかった。

 ただ「今年はいろんなことがあった」という言葉には、多くの大学が抱えるチーム運営の難しさがにじんだ。

記者会見で試合を振り返る富永一ヘッドコーチ(左)と山田敦也主将=11月23日、横浜スタジアム
記者会見で試合を振り返る法政の富永一ヘッドコーチ(左)と山田敦也主将=11月23日、横浜スタジアム

 

 中華街の行きつけの店で近藤さんと食事をした。ほろ酔い気分で外に出ると、朝から降り続いていた冷たい雨はやんでいた。

 帰宅する途中、サッカーのワールドカップで日本が強豪のドイツを破ったという情報が入った。勝負はやってみなければ分からない。あらためてそう思った。(編集長・宍戸博昭)

 

 
 

宍戸 博昭 (ししど・ひろあき)プロフィル
1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を30年以上務めている。