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武道極める達人、別次元の戦いで連覇 柔道男子73キロ級 大野将平

2021.7.26 22:50 共同通信
男子73㌔級決勝 延長でジョージア選手を破り、礼をする大野将平。2大会連続で金メダルを獲得した=日本武道館
男子73㌔級決勝 延長でジョージア選手を破り、礼をする大野将平。2大会連続で金メダルを獲得した=日本武道館
 当たり前の話だが、ここに集っているのは柔道という「競技」に秀でた猛者ばかりだ。決められた試合時間とルールの中で、優劣を競うことが巧みな選手がそろっている。審判が相手選手に指導を与えるようにする技術も含めてだ。大野将平はひとり違う。柔道という「武道」を極めつつある達人だ。
 ▽国際化前の強豪
 身体を鍛え、技を磨き、対戦相手を研究して、戦略を練るところまでは同じだ。その先が違う。現在の柔道は、いかに相手十分の組み手を嫌い、自分十分の組み手になるかが勝負の鍵を握っている。嫌なところをつかまれたら、切る。自分がいいところを持っても、相手も十分だと思えば切る。逆に相手十分になった場合は、不利な組み手でもとりあえず技をかけて、しのぐ。それが主流だ。
 大野は違う。聞けば普段の稽古では、100キロ超級の相手にも「来い」と無造作に腕を伸ばすという。どんな相手にどこをつかまれても、自分が納得のいくところを持てれば関係ないのだろう。柔道が国際化する前の強豪と同じように。
 ▽迷いなき戦い
 象徴的だったのがジョージアのシャフダトゥアシビリとの決勝。組み手を徹底的に嫌う相手に対し、ゆっくりとだが常に前に出て柔道着を探る大野。そして最後はスタミナの切れた相手が密着してきたところに、支え釣り込み足で技あり。投げ飛ばして、すべてを終えた。他の出場選手には申し訳ないが、別次元の戦いだった。
 最初から最後まで迷いを感じさせなかった。初戦、ルーマニアのライクには1分39秒、右は奥襟、左はわきの下をつかむと、あっさり内股で一本勝ち。続く3回戦、トルコのチログルは大野にしっかり組まれるのを恐れてすみ返しに来るが、そのまま寝技で攻めて2分52秒、横四方固めで仕留めた。
 ▽理想体現の難しさ
 準々決勝は第1シード、アゼルバイジャンのオルジョフ。左組みで長身の相手が必死に練ってきた組み手を次々と繰り出してくるのに全く動じない。距離を縮めた相手に、待ってましたとばかりに内股で技あり。その後も逃げ切るそぶりも見せずに攻めて3分11秒、凡人の筆者からすれば、万全とは言い切れない組み手だったが、大野には十分なのだろう、左釣り手をはね上げようとするのに合わせて小内刈り。合わせ技でこれまた一本勝ちした。
 準決勝はモンゴルのツォグトバータルに、初対戦とあって慎重になったか延長になったが4分54秒、右を深く差すと一本と言ってもいい小外掛け。技ありで勝負を決めた。
 「しっかり組んで、きれいに投げたい」とは、よく聞く言葉だ。ならば、自らも組み手を切らないようにしなければならない。それはなかなかに難しい。できるのは大野だけだ。それでも「後半は厳しい戦いが続いて、理想を体現する難しさを感じた。私もまだまだだと思いました」という王者の次の目標は五輪3連覇か。個人的には体重無差別の全日本選手権で優勝を争う姿を見てみたい。(共同通信・尾崎透)