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「もっと、もっと」だ、久保建英 さらなるゴールで飛躍を

2021.7.26 14:38 共同通信
日本―メキシコ 前半、先制ゴールを決める久保建(左)=埼玉スタジアム
日本―メキシコ 前半、先制ゴールを決める久保建(左)=埼玉スタジアム
 サッカー男子1次リーグA組の日本は25日、メキシコを2―1で下して2連勝した。53年ぶりのメダル、いや目標の金メダルに向けて順調に滑り出したが、原則24歳以下のチームだけに、誰が今大会で飛躍を遂げ、フル代表を背負って立つ存在になれるのかも大きな関心事だ。となれば、注視してしまうのはMF久保建英(20)。2試合連続ゴールの充実ぶりに加え、今大会にかける決意も表情にうかがえる。
 ▽逸材
 10歳でスペインの名門バルセロナの下部組織に合格した。13歳で日本に戻り、FC東京の下部組織入り。16歳の17年11月にJ1デビューを果たし、19年6月に18歳で日本代表にデビューした直後、スペインの強豪レアル・マドリードに電撃移籍した。世界的ビッグクラブが欲しがる逸材であることは間違いない。
 1季目は同国1部リーグのマジョルカに貸し出され、リーグ戦35試合4得点4アシスト。2季目を迎える昨年8月には、各国の代表選手を擁して欧州リーグ出場権を勝ち取った1部のビリャレアルに期限付きで移籍し、一層の成長が期待された。 ところが定位置をつかめず、ことし1月に出番を求めて下位に低迷するヘタフェに移っても、途中出場が増えていった。足踏みと言わざるを得ない。
 173センチ、67キロの攻撃的MFが欧州強豪国の1部リーグでピッチに立ち続けるには、やや荷が重い球際の争いを補って余りある攻撃力、アシストだけでなく点を決める力が必要だろう。
 ▽ヒデの決意、ウッチーの檄
 そこで思い出すのは、1998年のワールドカップを機にイタリア1部リーグ(セリエA)の地方クラブ、ペルージャに移籍した中田英寿さんだ。同年9月のセリエA開幕戦で、3連覇を目指す強豪ユベントス相手にいきなり2ゴール。試合には敗れたが、その名は世界に鮮烈な印象を与えた。
 結局このシーズンは10点の大台に乗せ、翌シーズン途中に古豪ローマへ移籍と、着実にステップアップを果たした。
 中田さんに1シーズン目を終えての総括を聞くと「僕はイタリアに外国人として来ているので、最初はパフォーマンスがどうかではなく、目に見える結果(得点)が必要だった」と言い切った。キラーパスを武器とする司令塔が狙って点を取りに行き、数字を残したのだ。 ローマ2季目の2001年5月には、優勝争いの天王山となったユベントス戦でも豪快なミドルシュートを突き刺し、優勝に貢献。欧州で確固たる地位を築いた。
 ドイツ1部リーグのシャルケで活躍した元日本代表DFの内田篤人さんはことし2月、映像配信サービスDAZN(ダゾーン)の番組に出演した際、ヘタフェでも出番に恵まれない久保を「うまい」と認めながらも「うまいって、選手としての一つの要素でしかない」「日本人ってどうしても、うまいから活躍できるって思っているけど、そういうわけではない」とクギを刺した。
 うまいだけの選手なら、いくらでもいる。そんな本場欧州での選手の評価基準をわれわれに突きつけるとともに、内田さん流の久保に対する檄(げき)ではなかったか。
 ▽百も承知?
 アタッカーが評価されるのは、やはり得点。勝利を引き寄せ、苦境を脱する決定力ならばなおさらだ。久保もそこは百も承知のはず。今大会、ゴールへの強い意思がうかがえる。
 初戦の南アフリカ戦では、右サイドからドリブルで中に切り込み、左足でシュートを放つ得意のプレーで値千金の決勝点をもぎ取った。「苦しい時間帯でも、勝負を決めるとしたら自分だと言い聞かせていた」と、試合後には自覚十分の言葉も残した。
 メキシコ戦では右サイドで酒井宏樹の縦パスを受けた堂安律の折り返しに走り込み、ゴール正面から左足で先制点を蹴り込んだ。前後半には1本ずつ、ゴールやや左から利き足ではない右足でシュート。右足はまだ正確性に欠けるが、どんどんトライして、右からカットインしての左足シュート以外にも得点のバリエーションを増やしてほしい。
 今大会の日本代表はヘタフェと異なり、堂安ら技術レベルが高く、息の合った選手との連係が期待できる。自身で、あるいは味方を使ってペナルティーエリア内に侵入し、点も取れることを世界に証明する絶好のチャンスだ。
 森保一監督がオーバーエージ枠で吉田麻也、酒井の両DFと守備的MF遠藤航を選んだのも、攻撃陣の守備の負担とリスクを減らす狙いだろう。久保が世界を相手に存分に暴れられる舞台は整っている。
 南ア戦後に主将の吉田は「もっと、もっとできるチーム」と言った。久保が大会後に欧州の新たなクラブで定位置をつかみ、フル代表の主軸になるためにも、吉田の弁ではないが、あえて言わせてもらいたい。久保建英はもっと、もっとできるはず。この先、対戦相手のレベルが上がっても、もっと、もっとゴールを見たい。(共同通信・名取裕樹)