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阿部兄妹、歴史的な同日金メダル ともに胸のすく痛快な柔道

2021.7.25 22:34 共同通信
兄と妹で同日に金メダルを獲得した男子66㌔級の阿部一二三と女子52㌔級の詩を撮影する報道陣=日本武道館
兄と妹で同日に金メダルを獲得した男子66㌔級の阿部一二三と女子52㌔級の詩を撮影する報道陣=日本武道館
 柔道男子66キロ級の阿部一二三、女子52キロ級の阿部詩の兄妹がそろって金メダルを獲得した。五輪の歴史の中でも、日本の兄妹の同日優勝は初めてである。
 ▽妹が先陣、兄が続く
 先陣を切ったのは妹の詩。初戦のブラジルのピメンタは釣り腰と崩れけさ固めの合わせ技で2分少々で仕留め、準々決勝は英国のジャイルズの内股をめくり返して技ありを奪った。準決勝、イタリアのジュフリダとはゴールデンスコアの長い試合になったものの、最後は両袖を持っての内股技ありで決着した。
 決勝は「ライバルで尊敬できる選手」というフランスのブシャール相手に大接戦となったが、最後は相手得意の肩車をつぶして押さえ込み一本。「4年間、この大会だけを目指してきた。努力が報われてよかった」と笑顔を見せた。
 後から登場した一二三は、優勝インタビューで「2019年の世界選手権で(僕が)敗れて、妹が優勝。今日も(妹が)先に金メダルを取って」と振り返ったように、決勝では緊張が見られた。それでも、ジョージアのマルグベラシビリに組み負けた直後に思い切りよく飛び込んでの大外刈りで技ありを奪い、そのまま逃げ切った。その姿を見て、会場で大喜びする詩が印象的だった。
 ▽分かりやすさが魅力
 阿部兄妹の魅力は勝ち方の分かりやすさだ。最近の柔道のルールは本当にややこしい上に、しょっちゅう変更になる。元々決して理解しやすい競技ではなかったが、今では一般のファンはもとより、柔道経験者でも少し競技から離れると、何が反則なのかまったく見極めがつかない。指導を狙う戦いは美しくないし、時間無制限のゴールデンスコアは、我慢大会にすら見える。
 反則で決まる試合が多い中、この二人は大体いつでも相手を投げ飛ばして勝利する。たまにテレビで見る程度の人々にも強さが伝わりやすい。徹底的に前に出て攻め、耐えられなくなった相手が反撃しようとすると、切れ味鋭い背負い投げや大外刈りでたたきつける。胸のすくような痛快な柔道がともに持ち味だ。袖釣り込み腰や内股など、決め技が豊富なのも魅力だ。
 ▽日本柔道救う兄、攻撃性を取り戻せ
 この日も詩は、けれん味のなさを思う存分に発揮した。最後こそ寝技だったが、前述したように分かりやすさは抜群だ。
 一二三には若干課題も残った。勝負の結果にはまったく文句はない。初戦、フランスのベテラン、ルブルクとゴールデンスコアにもつれ込んだ後、大外刈り一閃(いっせん)で一本勝ち。準々決勝はモンゴルのヨンドンペレンレイの変則柔道に苦しみながら、またしても大外刈りで技ありを奪って勝利。準決勝ではブラジルのカルグニンに組み手争いの一瞬の隙を突いて、背負い投げで仕留めた。
 ただ、妹と比較すると最近はやや攻撃性が薄れている気がする。丸山城志郎との五輪代表決定戦も、下がるシーンが見えた。この日の決勝も、最後はリードを必死で守った。これは一二三らしくない。ぜひ、以前の野獣のような攻撃を取り戻してほしい。競技人口が減り、人気低下が心配される日本柔道を救えるのはこの男だけなのだから。(共同通信・尾崎透)