メニュー 閉じる メニュー

リオの屈辱晴らす涙の金 柔道男子60キロ級の高藤直寿

2021.7.24 21:51 共同通信
台湾の楊勇緯(右)と対戦する高藤直寿=日本武道館台湾の楊勇緯(右)と対戦する高藤直寿=日本武道館
 
 柔道男子60キロ級はリオデジャネイロ五輪銅メダルの高藤直寿が、屈辱を晴らす金メダル。「本当に、みんなに支えてもらってこの結果がある。結果を残せてよかったと思います」と涙を見せた。
 
 ▽3連続ゴールデンスコア
 
 楽な勝ち上がりではなかった。初戦は内股で一本勝ちしたものの、緊張からか、動きに硬さが見られた。そこから3試合連続でゴールデンスコアの延長戦。準々決勝、ジョージアのチフビミアニ戦はすさまじい消耗戦の末、相手が抱きつく行為のベアハグで指導を受け自滅。準決勝のカザフスタンのスメトフにも何度か危ない場面をしのいで、隅落としで競り勝った。
 
 台湾の楊勇緯との決勝は、先手を取り続けて指導3-1だったが、相手が若いだけに、最後まで気が抜けない厳しい試合だった。「豪快に勝つことはできなかったですが、これが僕の柔道です」。接戦の連続は本来の姿ではない。しかし苦しくても諦めず、無理をせず、勝ちにこだわった姿に心身の成長を感じた。
 
 ▽スピードとパワー
 
 高藤を初めて見たのは高校1年の時だった。神奈川県の中量級3人、無差別2人で争う団体戦で、60キロ級ながら2階級も上の相手を翻弄(ほんろう)する姿に、とんでもない選手が出てきたと思ったのを覚えている。
 
 ただ速いだけの軽量級はいくらでもいる。その多くは自らのスピードに体がついて行けずに空回りするが、高藤は高校時代からスピードを制御するパワーがあった。加速のみを重視したドラッグカーではなく、止まって曲がれるF1マシンだ。組んだと思うと潜りこみ、かつぎ上げてたたきつける。ほれぼれする柔道は、めったに出てこない逸材と感じさせた。
 
 その後、世界ジュニア選手権、世界選手権を制してリオ五輪に挑むまでは順調だった。大舞台では金確実と言われながら銅メダルにとどまる屈辱を味わったが、そこでつぶれなかった。2017年、18年の世界選手権連覇を経て再び五輪にたどり着いた。現在はスピードだけに頼るのではなく、肩車を軸とした変幻自在の投げ技と、裏固めなどの寝技も身につけた万能型に進化している。オリンピックだけでなく、ほかの試合でも立派な試合を見せ続けてきたことも評価される。
 
 ▽パリでも頂点を期待
 
 東京五輪延期の影響で次の五輪まではあと3年。追ってくる若手は大学生や高校生まで含めても、今のところ10年近くこの階級をけん引してきた高藤を脅かすまでの素材は見当たらない。「金メダリストとして、もっと自分を磨いていきたい」という高藤に、パリでも頂点に立つことを期待したい。(共同通信・尾崎透)