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世界の中の日本感じた日々  共生は待ったなしの課題  茂木健一郎 「茂木健一郎のパラリンピック探求」3回続きの(3)人類の挑戦

2021.9.10 15:35 共同通信

 明日から日本はどこに向かっていくのだろう。東京パラリンピックの閉会式を見ながら、そんなことを思った。

国立代々木競技場(奥)を訪れた茂木健一郎さん=8月26日
国立代々木競技場(奥)を訪れた茂木健一郎さん=8月26日

 発見と感動の連続の大会だった。共生は一人一人にとっての切実な問題であり、待ったなしの課題だと気付かされた。

 わかっていたつもりのパラスポーツの根本を知らなかったのだと痛感させられた大会であった。

 ボッチャの競技のあり方に、人生観が変わるほどの衝撃を受けた。最も障害が重いクラスの選手は、判断と指示のみ。器具の操作は、自らはコートに背を向けて一切ボールの位置を見ないアシスタントが行う。

 私がかつて留学していた英ケンブリッジ大学で時折お見かけした車いすの天才物理学者、ホーキング博士の姿を思い出した。博士がボッチャの試合に参加したら、どんな試技になっただろう。

 かけがえのない体験を受け止め、私たちはレガシーを育んでいく。

 前回の東京五輪・パラリンピックの日本には、戦後の復興と高度経済成長という力強い物語があった。一方、コロナ禍の中開かれた今大会には、惑いの中にありながらゴールにたどり着いたという感慨がある。

国立競技場を訪れた茂木健一郎さん=8月26日
国立競技場を訪れた茂木健一郎さん=8月26日

 

 物事が本当に変わる時は、どこに行こうとしているのかすぐにはわからない。迷いの中でさまざまな気付きに向き合った今大会は、案外、この日本の私たちを根底から変えるきっかけになるのではないか。

 アスリートたちの競技を見ているうちに、以前お目にかかった宇宙飛行士の方のお話を思い出した。

 国際宇宙ステーションに着くと、誰もが最初は自分の国の姿に喜ぶのだという。日本が見えると歓声を上げる。それが、地球を何周もしているうちに、次第にこだわりがなくなり、青い惑星全体をそのまま受け入れるようになるそうだ。

 大会中似たような感覚があった。どの国の選手も、一人一人に物語があり、活躍を喜ぶ仲間がいる。涙と笑顔がある。

 アスリートたちの闘いは、そのまま人類の挑戦。島国に住む私たちは、ようやく「地球」と出会ったのかもしれない。

 「世界の中の日本」を感じた日々だった。人類と地球、そして私たちの住む場所へのありったけの愛とともに、よりよい世の中にするための努力を続けると誓いたい。(脳科学者)

茂木健一郎さん
茂木健一郎さん