メニュー 閉じる メニュー

不思議な巡り合わせ、フェンシングが「金」 順天堂大女性スポーツ研究センター長 小笠原悦子

2021.8.4 16:37 共同通信
メダル獲得を逃した男子フルーレ団体3位決定戦をスタンドから見届けた(左から)日本フェンシング協会の武井壮会長と太田雄貴前会長=1日夜、幕張メッセ
メダル獲得を逃した男子フルーレ団体3位決定戦をスタンドから見届けた(左から)日本フェンシング協会の武井壮会長と太田雄貴前会長=1日夜、幕張メッセ
 7月30日は日本フェンシング界にとって歴史的な日になった。男子エペ団体が史上初めて金メダルを獲得したのだ。私は6月に日本フェンシング協会の理事になったばかり。素晴らしい闘いで快挙を達成した選手に感動し、巡り合わせに不思議な気持ちになった。
 ▽専門家として
 日本フェンシング協会は五輪銀メダリストの太田雄貴さんが2期4年、会長を務めてきた。太田さんが経験を生かして選手強化に力を注いだからこそ、男子エペ団体の金メダルがある。それだけでなく、革新的なアイデアでフェンシング界を変えてきた。
 全日本選手権をスタイリッシュに演出し、エンターテインメントに昇格させたことは衝撃的だった。また、教育の場や自治体とも連携して競技の普及を目指した。
 太田さんが退任するに当たって次の会長を託したのが、タレントでさまざまなスポーツに深い造詣と人脈がある武井壮さん。さらに、国が策定した競技団体の運営指針「ガバナンスコード」が求めた「外部理事を25%以上、女性理事を40%以上」にできるだけ沿うように、理事会メンバーも代わった。
 私はスポーツマネジメントの専門家として調査研究に当たるとともに、女性アスリートや指導者への支援をするよう求められ、理事会に加わった。
 公認会計士、大企業の広報担当、政府系フォーラムの責任者…。フェンシングに限れば確かに素人だけれど、専門分野ではトップを走るプロフェッショナルが、日本代表の監督をはじめとする競技の専門家とともに、フェンシングと選手の未来について話し合う。
 長く大学でスポーツマネジメントを研究し、学生たちに伝えてきたが、実際に組織で実践するのは今回が初めて。刺激的だし、楽しくて仕方がない。
 けれど、理事会はこれまで接点がないメンバーの集合体だ。新型コロナ禍で顔を合わせる機会は限られる。オンラインによる会議は、フワフワした感じもあった。「百獣の王」武井さんも立ち位置に不安があったかもしれない。
 ▽武井さんの覚悟
 そんな私たちに力を与えてくれたのが、金メダルを獲得した男子エペ団体をはじめとする、五輪日本代表の奮闘だ。武井さんは男子フルーレ団体がベスト4となり、日本代表が全ての闘いを終えた後、ツイッターでこう発信した。
 「『選手たちの競技人生がより豊かで幸せなものになること』。それが最大の目標であり協会運営の根幹である。フェンシングに関わる全国の皆さん。そこに向けて総力を結集して金メダルの恩恵を活かし、全力で業界を広げて行きましょう。派閥や学閥、地区や世代、全てを越えて一丸となって進みましょう」
 武井さんは覚悟を決めた。会長として進むべき道を探し出した。私も、大きな目標がはっきりして、気持ちが引き締まった。改革期にある組織の地ならしをしたい。理事として働くのは、この1期だけと決めている。
 スポーツ統括団体としては、とても小さい日本フェンシング協会が、時代の先頭を切って姿を変えていく。力を尽くしたいと思う。
  ×  ×
 おがさわら・えつこ 1958年水戸市生まれ。米オハイオ州立大大学院博士課程修了。学術博士。専門はスポーツマネジメント、女性スポーツ。順天堂大大学院教授。2014年から現職。