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数字では「日本は安全」 無観客五輪を応援 藻谷浩介(エコノミスト) リレー評論「解読オリンピック」

2021.8.3 11:00 共同通信

 前回の東京オリンピック開催時には0歳児だったため、今回は初めての、時差なしで進行する夏季オリンピックだ。しかし全国の皆さんも、東京にいる筆者も、画面で映像を見るだけなのには変わりはない。

日本総研主席研究員の藻谷浩介さん
日本総研主席研究員の藻谷浩介さん

 

 五輪について「無観客でいいので開催すべきだ」と言い続けてきた。おかげさまで特に言行に矛盾を感じることもなく、世界の若者を日々楽しく応援している。メダルラッシュの日本で7月30日現在、女性の獲得数が男性を上回っていることにも注目中だ。


 いかに動機不純で利権まみれだったとしても、引き受けた以上は、日本を含む世界中のスポーツ選手に対する責任がある。しかも日本での開催が、色眼鏡で見ない限り客観的に安全であることは、福島産の農産物が安全なのと同じだ。変異株の侵入を防げずワクチン接種も間に合わないなど、政府の対応はグダグダを極めてきたが、それでも日本での日々の感染拡大は、最新1週間の数字を人口当たりで見て、ワクチン接種の進んだ欧米の数分の1なのである。


 開会式をご覧になった方の多くは、どれだけ多くの国から選手が来日しているかに、大なり小なり感じ入ったはずだ。式の中身の方は日本伝統の幕の内弁当で、一品一品は練られていても全体を統一するテーマが見えなかったが、東京を目指して練習してきたあれだけの数の選手を、門前払いする羽目にならなかったのは幸いだった。


 「しかし」と思う人もいるかもしれない。「五輪は、国民の命を犠牲にしてまで行うべき話なのか」と。国民の命が「五輪の犠牲」になっているという言い方は妥当なのだろうか?


 厚生労働省のデータによれば、新型コロナウイルス感染の第5波は、五輪の1カ月前から拡大中だ。感染から発症までには2週間程度のタイムラグがあるので、7月下旬の陽性判明者の急増は、五輪関係者の来日ラッシュの前の、日本人の間での感染急拡大によるものである。日本人が集まる機会を少しでも抑止するために、無観客は正しい選択だった。


 他方で死者数を見れば、6月2日~30日が1707人だったのに対して、6月30日~7月28日は490人と、7割も減った。60歳以上へのワクチン接種が、劇的に功を奏している。ワクチン未接種の40、50代についても、もともと少なかった死者数が、さらに大きく減少した。30代以下は、死者・重症者ともに0~2人のままだ。


 それにしても、こうした明確な数字を国民に説明し、過度の不安を鎮めつつ、五輪を言い訳にせずに自重しようと説得できる政治家が、なぜ日本にはいないのか。政界にも、数字を見ずにぶれる言論界にも、五輪の世界と同じく、若者と女性を前面に出す世代交代が必要だ。

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 もたに・こうすけ 1964年山口県生まれ。日本総合研究所主席研究員。著書に「デフレの正体」、共著に「進化する里山資本主義」など。