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「五輪時想」 ネット観戦、広がる世界

2021.8.1 12:00 共同通信
日本―スペインの第2クオーター、競り合う田中海(奥)=大井ホッケー競技場
日本―スペインの第2クオーター、競り合う田中海(奥)=大井ホッケー競技場
 東京五輪で見てほしいものがある。できればぜひ、子どもたちに見せてほしい。日本で普段、テレビ放映されないマイナー競技や、外国勢同士のトップレベルの対戦だ。
 テレビ中継は、日本勢の活躍が期待される注目競技中心。だが、NHKと民放テレビ局がインターネット動画配信で多くの試合を中継している。使える環境があるならば、ぜひ利用してほしいのだ。
 五輪は内外のスター選手や人気競技だけではない。東京大会は205カ国・地域と難民選手団が参加し、実施競技は33もある。「会場が自宅に近いから」「倍率が低そうだから」と申し込んだチケットが当選した人もいただろう。
 それでいいのだ。見たことがない競技や、知らない国から来た選手たちとの出会いも、自国開催五輪ならではの楽しみだったはずだから。
 筆者は今大会を前に、ホッケーや水球など海外ではプロがあるほどの人気でも、日本ではマイナーな競技の選手を取材した。彼ら彼女らに共通する願いは「東京五輪でこの競技を多くの人に見てもらい、魅力を知ってもらいたい」だった。
 ところがテレビ中継がなく、無観客となっては、人々の目に留まる機会が消失してしまう。その無念を少しでも補えるのが、ネット中継だ。
 ホッケーが腰をかがめて棒(スティック)でボールを打ち合い、水球選手が水面高く体を浮き上がらせてシュートを放つ。そして各国選手の妙技の数々に、面白さや不思議さ、驚きを感じるかもしれない。その競技やスポーツを好きにならなくてもいい。未知の国名が出てきたら、親子でネット検索するだけでいい。
 事前合宿の断念や期間短縮で、外国選手との触れ合いもほぼなくなった。子どもたちに五輪の多様な姿を見せられるという「時差なし五輪」の利点を、数少ないレガシー(遺産)につなげたい。
 競技はもちろん、外国とそこに生きる人々、言葉などに思いを巡らせ、ひとときでも関心を寄せる。五輪は「世界に開かれた窓」。テレビで日本勢を応援するだけでなく、テレビに映らない熱戦もネット観戦すれば、窓の向こうの世界は広がるはずだ。(共同通信特別編集委員 名取裕樹)