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さらば、いとしのソフトボール 日本“連覇” 決勝に技術の極致を見た

2021.7.28 14:16 共同通信
米国を破って13年ぶりの金メダルを獲得し、喜ぶ上野(中央)ら日本ナイン=横浜スタジアム
米国を破って13年ぶりの金メダルを獲得し、喜ぶ上野(中央)ら日本ナイン=横浜スタジアム
 日本が2―0で米国を下したソフトボール決勝は、上質のサスペンスドラマを見ているような緊張感が試合終了まで続いた。野球と比べ3分の2ほどのサイズのこぶりなグラウンドで、技術とスピードがぶつかり合う。五輪のような大舞台でなければ、テレビ中継もめったにない。ソフトボールの魅力を堪能した東京五輪だった。そして日本の13年の空白を乗り越えての2大会連続金メダルに酔いしれた。
 ▽プロ野球一流並みの投球技術
 投手板から本塁までの距離は、野球の18・44メートルに対して13・11メートル。至近距離で立ち向かう打者に向けて上野由岐子ら投手は円周約30・5センチ、重さ約180グラムの大きくて、重いボールを投げ込む。皮で覆われた扱いにくいボールで時速110キロを超える速球、浮き上がるようなライズボールを投げる。左右に曲げたり、チェンジアップでタイミングを外したりもする。
 テレビのスロー再生を見ると、トップクラスの投手は肘を絶妙にくねらせ、手首を繊細にひねってボールに微妙な回転をつけていることがよく分かる。
 上野は高い技術でボールを自在に操った。決勝戦の一回2死三塁、右打者の外角低目にスライダー気味を投じて三振を奪い先制点を許さなかった。その後も上野は、カウントを追い込んではボール球を振らせてアウト数を増やしていった。プロ野球の一流投手並みの配球が光った。
 ▽短い塁間、好守備が生むスリル
 塁間は、野球の27・43メートルに対して18・29メートル。内野手がゴロの処理をわずかでももたつけば内野安打、あるいは失策になる。グラブに収めたボールを間髪入れずに一塁に送球する。この守備の堅さで、日本は「守りのレベルは世界一」(宇津木麗華監督)を証明した。
 二回1死一塁では上野がゴロをうまくさばき、投手→遊撃手→一塁手へと流れるような併殺を完成させた。誰かがタイミングを外せば、ソフトボールでの併殺はなかなか完成しない。
 守りの極め付きは六回に出たビッグプレーだ。1死一、二塁で米国打者が強烈なライナーを三塁方向に放った。この打球を日本の三塁手が左腕に当てて弾く。バックアップしていた遊撃手がこれをダイレクトで捕球し、飛び出していた二塁走者を刺してこの試合、2度目の併殺とした。テレビの再生画面で確認しなければ、どうなったか分からないほどスピード感のあるダブルプレーだった。
 NHKテレビでプロ野球解説者の和田一浩氏が「塁間が狭いので、打球が転がると何が起こるか分からない怖さは野球以上」と話していた。日本の守備はその恐怖を封じ込んだ。
 ▽次世代エース誕生、五輪再復活に期待

 ソフトボールは野球に比べて安全、手軽にできる利点があり、日本では男女問わず親しんだ人が多い。それだけに五輪のソフトボールをテレビで見て、技術の高さ、スピードと迫力に引き込まれた人が大勢いるはずだ。

 2008年北京五輪で日本を優勝に導いたエース上野由岐子は、39歳で2度目の頂点に立った。「レジェンド」の果たした功績は大きい。北京大会後、五輪から除外されたソフトボールだが、上野らの奮闘で国内リーグは途切れることなくレベルの高い試合を続けてきた。多くの人がその名前を知る上野を通じて、ソフトボールに触れることが競技の普及、発展につながる。

 この大会では20歳の後藤希友が見事な「抑え役」を務めた。左腕からきれのいい速球、鋭い変化球を投げ込みピンチの芽を次々とつんだ。決勝でも六回無死一塁で救援のマウンドに立ち、守りにも助けられてまた無失点で切り抜けた。若いころの上野をほうふつさせる次世代エースが誕生した。

 東京大会を最後にソフトボールは再び五輪から除外される。再度の復帰に希望を託して、五輪ではしばし「さらば、いとしのソフトボール」である。(共同通信・荻田則夫)