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「TOKYOへ 世界スポーツ模様」 Sクライミングで一流輩出 女王ガルンブレト選手ら アルプス麓のスロベニア

2021.8.3 17:00 共同通信
2017年3月にドイツで行われたボルダリング大会の決勝で壁を登るヤンヤ・ガルンブレト選手(ゲッティ=共同)
2017年3月にドイツで行われたボルダリング大会の決勝で壁を登るヤンヤ・ガルンブレト選手(ゲッティ=共同)
 2020年東京五輪の追加競技となったスポーツクライミングで、世界の一流選手を輩出しているのがスロベニアだ。18年9月の世界選手権(インスブルック)で2冠に輝いた女子のヤンヤ・ガルンブレト選手(19)を筆頭に日本勢のライバルも多い。アルプス山脈の麓に位置する地理的条件から伝統的に山岳に親しむ人が多く、競技も広く普及している。
 ▽ヤンヤが憧れ
 スロベニア山岳協会によると、登録者数は全体で約10万人。人口が約200万人の小国で、実に20人に1人という高い普及率を誇る。280を超える山岳クラブがあり、50ほどはスポーツクライミング競技向けに特化したクラブだ。
 首都リュブリャナでもあちこちのクライミングジムで子ども向けの教室が開かれている。同山岳協会スポーツクライミング委員会のアレシュ・ピルツ委員長(54)は「特に女子は今、とても人気が高い。ヤンヤを見て自分もやりたい、と。定員いっぱいのジムもあり、習いたくても習えない子どももいるほどだ」と、うれしい悲鳴を上げる。
 ▽子どものリーグ戦
 スポーツクライミングには命綱を使って時間内に登った高さを競う「リード」、複数の課題(コース)に挑んで完登数を争う「ボルダリング」、壁を登る速さを競う「スピード」がある。五輪は3種目の複合で行われるが、スロベニアは自然の登山に最も近いリードが強く、選手層も厚い。
 ピルツ委員長は「スロベニアで初めてスポーツクライミングの大会が行われたのが(旧ユーゴスラビア時代の)1988年。アルプスが近くにあることで培われた伝統が、リードの強さに反映されている」と指摘する。直近の世界選手権でボルダリングと複合を制したガルンブレト選手も元々はリードが得意で、前回の世界選手権はリードで金メダルに輝いた。
 国内の広い裾野を表すのが、小学生から高校生年代を対象としたリーグ戦だ。東西地区に分かれて年間で5~7試合程度を実施し、1日で約300人が参加することもある。同リーグは競技が五輪の追加種目に決まる前に始まり、既に10年以上の実績がある。ここで頭角を現したガルンブレト選手のように、才能を見込まれるとユース代表に吸い上げられるシステムも確立している。
 ▽国も支援
 強さの背景には国の経済的支援もある。かつて女子リードで世界の第一人者だったマヤ・ビドマルさん(32)は「現役時代はプロのような活動ができて競技に集中できた」と述懐する。
 旧ユーゴ時代の社会主義の名残といえる「ステートアマ」方式で、強化指定を受けた選手は軍に所属。課せられる職務は年間3日ほど行事に参加するだけで、練習に専念できる環境が用意されるという。高校を卒業したガルンブレト選手を含め、19年は4人が同制度の恩恵を受ける予定だ。
 母国の期待を背負うガルンブレト選手は「大学に進学するのは、おそらく20年。それまでは競技に集中するつもり」と東京五輪に照準を定める。指導者に転身したビドマルさんは「彼女は才能もあるし、すでに私よりも多くのことを成し遂げている。東京でもメダルを取ってくれるはず」と、自身の現役時代にはかなわなかった五輪での活躍を後輩に託した。(共同通信=土屋健太郎、2018年11月23日配信)
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 【女王ガルンブレトに挑む日本勢】
 人工壁を登るスポーツクライミングは東京五輪で追加競技に採用され、今大会の見どころの一つ。日本勢は男女とも金メダル獲得の期待が高まる中、世界女王としてトップに君臨し続ける22歳のヤンヤ・ガルンブレトは、野口啓代(TEAM au)と野中生萌(XFLAG)の二枚看板にとって強力なライバルになる。女子の予選は8月4日、決勝は同6日に行われる。
 世界各地を転戦するワールドカップ(W杯)はリード、ボルダリング、スピードの各種目がそれぞれ行われるが、東京五輪は3種目の複合で争われる。ガルンブレトは同様の方式が初めて世界選手権で採用された2018年大会で優勝すると、東京・八王子で行われた19年大会で2連覇と揺るぎない強さを示す。
 新型コロナウイルスの影響で1年延期された大舞台に「2020年の大きな目標で、そのために厳しい練習を重ねていたからとても残念だった」と一時は心も沈んだ。それでも五輪初代女王へのモチベーションは高く、今季のW杯は得意のリードやボルダリングで優勝を重ね、好調のまま五輪本番を迎えられそうだ。