寅さんが生き続ける柴又 矢切の渡しに揺れるおもい
おすすめ度:★★★★★
柴又の帝釈天参道
葛飾柴又と聞いて、山田洋次監督の「男はつらいよ」シリーズを思い出さない人はいないだろう。主人公フーテンの寅さんこと、車寅次郎の「私、生まれも育ちも…」と続くせりふは、あまりにも有名だ。
作品の人情豊かで温かな風情は、柴又そのまま。帝釈天へ向かい、石畳の参道をぶらぶら歩けば、土産物屋、てんぷら屋、小物屋…。甘味処で団子をつまむと、店のおばさんが「お茶どうぞ」。ほっと心が緩む。
お参り後、少し歩いて葛飾柴又寅さん記念館へ。シリーズの魅力を凝縮した同館は一九九七年に開館し、年間約二十万人が訪れる。全四十八作で使った寅さんの実家「くるまや」のセットもあり、セットのいすに腰掛ければ気分は常連客だ。
いくつものモニターで名場面を視聴できるため、館内のあちこちから寅さんの威勢のいい声が聞こえる。ちょっとおせっかいだが、こんなお兄ちゃんがいたら楽しいだろう。今年は寅さん、俳優渥美清さんの十三回忌で、同館ではさまざまな催しが計画中という。

記念館の裏には江戸川。土手に上ると、江戸川を渡る矢切の渡しが見える。対岸の千葉・松戸側に立っている白い旗は、運航中の目印だ。
船べりに腰掛けると、目線はぐっと川面近くに下がる。滑るように船着き場を離れると、手こぎのリズムに合わせて、船もゆらゆら。普段は耳に入らないような水音や鳥の声が聞こえてくる。そういえば寅さんは、この船で故郷に帰ってきていた。揺れる船から故郷を見つめ、思い出すのは誰だったのだろう。

【ぽけっとメモ】
参道の草団子屋「高木屋老舗」は、映画の撮影時、出演者らに控室を提供したゆかりの店。今も寅さんファンが絶えず訪れる。「草だんご」(5粒300円)は、素朴な味わいの中にふんわりとヨモギが香る。しょうゆだれの「磯おとめ」(2本300円)は渥美さんが好んで食べたという。
矢切の渡しは片道100円。寅さん記念館の入館料は大人500円。 トラックバック
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