山形・鶴岡酒田 藤沢周平の城下町
おすすめ度:★★★★★
川藻が揺らぐ内川
芭蕉も立ち寄った
作家藤沢周平の小説にしばしば登場する「海坂藩」。故郷、山形・鶴岡がモチーフだ。出羽三山を仰ぎ、西に日本海を臨む庄内平野…。藤沢が愛したみちのくの城下町を旅した。
▽黄金のじゅうたん
空港からの車窓に、稲穂が広がっていた。一面に敷き詰めた黄金色のじゅうたん。月山とのコントラストが郷愁を誘う。だれもが思い浮かべる日本の原風景。映画「たそがれ清兵衛」(二〇〇二年)で、人力車で墓参りに向かうラストシーンにも映し出されていた。

この辺りで作られるコメは、はえぬきやササニシキなど。水に恵まれた土地柄だけに、米どころの東北にあっても、そのうまさは折り紙付きだ。
内堀のある城跡や藩校「致道館」などに当時の記憶を残す鶴岡。実際に治めていたのは、十四万石の庄内藩だった。普代の雄藩でありながら、小藩として描かれた海坂藩のごとく、城下はどこか質素なたたずまい。作品の情景がぴったりと重なり合う。
小説ゆかりの場所が程よく点在する。その一つが、「五間川」と呼ばれていた内川。朱塗りの三雪橋のたもとに緑の川藻が揺らぐ様はなかなかの風情。「奥の細道」で立ち寄った松尾芭蕉の乗船地跡も。
藤沢作品は「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」(〇四年)、「蝉しぐれ」(〇五年)と映画化が続く。いずれも鶴岡周辺でロケが行われた。
内川近くの「丙申堂」は、藩の御用商人から鶴岡一の豪商となった旧風間家住宅。「蝉しぐれ」では、文四郎(市川染五郎)とふく(木村佳乃)の二十年ぶりの再会が小座敷で撮影された。石置きの屋根に、母屋を貫く石畳の長い廊下。縁側に座り庭を眺めるのも一興だ。

▽湯の里
鶴岡市内から車で十五分ほどの湯田川温泉。藤沢が戦後、中学校教員として赴任した。文壇にデビューした後も、たびたび滞在し、教え子たちとも交流を続けていたという。旅館が十数軒のひなびた湯の里。夕暮れ時にもなると、源泉のある共同浴場にはタオルを下げた住人が三々五々、集まってくる。
酒田に足を延ばした。最上川河口の港町。古くから庄内米の集積地として栄えた。その象徴が築百年を超えてなお現役の「山居倉庫」。十二棟の倉が屋根で連なり、漆黒の壁板沿いにはケヤキ並木が続く。NHKの連続テレビ小説「おしん」のロケ地としても有名だ。

藤沢が描いた下級武士とおしん。辛苦に耐え、愚直なまでに信念を貫くその姿に、なぜか心がうずいた。

「藤沢周平 その作品とゆかりの地」という案内板が、鶴岡市内などに設置されている。このほか、小冊子「海坂藩の面影」「庄内映画ロケ地ガイドマップ」なども散策に役立つ。







