佐原銚子 吹けよ風 呼べよ嵐
おすすめ度:★★★★
レトロな走り。銚子電鉄
太平洋と利根川が出合う、地図上の「とんがり」部分に千葉県銚子市は位置している。東京から二時間弱の電車の旅。不意打ちするように、ダイナミックな光景が出現した。
▽ザッバーン
岩にぶつかる荒波―東映映画の冒頭シーンは、かつて犬吠埼灯台近くで撮影されたという。古くからロケ地として親しまれた町の存在を、決定的にしたのはNHK連続テレビ小説「澪つくし」(一九八五年四月から半年放送)だ。

しょうゆ醸造元の娘を演じた沢口靖子が国民的アイドルに駆け上がり、脇役として奮闘したのが全長六・四キロの銚子電鉄。昭和初期という設定に、ガダゴト走る車両、木造の駅舎がぴたりとはまった。開業から八十年余り、今も観光客が「かわいい。レトロ!」と車内で感激する。経営は苦しいようだが、駅売店などの名物「ぬれ煎餅」の売り上げがサポートしている。
漁港を歩くと「犬岩」が海を見つめていた。耳をピンと立て、哀愁漂う背中。「源義経が銚子から奥州に向け船出した際、残した愛犬が七日七晩なき続け岩になった」という言い伝えが名前の由来。「陸路より海から行った方が、義経も安心だったと思うよ。人目につかなくて」と地元の人は断定調。そうなると安宅の関はどうなる?勧進帳はどうした?
釈然としないまま、この地で最も標高のある「地球の丸く見える丘展望館」へ。見渡す限りの水平線、十キロにわたる絶壁・屛風ケ浦。付近では映画「県庁の星」のロケが行われた。細かいことはどうでもよくなるスケール感。

▽ジャージャー
銚子から利根川をさかのぼれば、北総の小江戸と呼ばれる佐原(現在は香取市)。掘割のような小野川沿いに江戸、明治、大正の建物が並ぶ。中でも、実測による日本地図を初めてつくった伊能忠敬(一七四五―一八一八年)の旧宅は静かなたたずまい。すぐ前に江戸時代の水路橋を復元した樋橋(とよはし)が架かり、定時に水が流れ落ちる。別名を「ジャージャー橋」という。

そんな情緒豊かな町も、利根川まで出ると印象が変わる。荒涼としてもの悲しく、それなのに人を包み込むような風景。妻を殺した男(役所広司)が再生へ向かう心象を映し、カンヌ映画祭で最高賞パルムドールを受けた今村昌平監督「うなぎ」(九七年)は川岸に腰を据え、風景の「度量」を生かし切った。

東京から特急1本。近い割に都会と全く異なる風景があるため、特にテレビドラマに重宝されているようだ。それでも本編と呼ばれる映画の重みは格別。東映のザッバーンマークを見つけた時は、うれしかった。観光名所ではないものの、地元では「あの岩」と認定されている。それぞれに作品を思い浮かべるだろうが、拙者は「仁義なき戦い」でござった。ものすごい風と高波。かえって記憶に残る旅になった。全体の印象は、あらぶるけれど温かい。
「うなぎ」も佐原で撮ったのは正解と思う。重要な場面に現れる大きな水門は、地獄門か天国の門か。男は妻を殺した後「夜霧よ今夜も有難う」と歌いながら自転車で警察に向かう。今村監督の特徴がよく出た、晩年の重喜劇でした。 







銚子といえば醤油だが、その醤油は紀州有田の湯浅というところから伝播したことはご存知であろう。野田のキッコーマンは明治以降の膾炙だが、ヤマサ醤油は湯浅の濱口儀兵衛が銚子で創業した古い歴史があるのじゃ。
投稿者 熊野うんちく : 2007年08月06日 15:56
しょうゆ~ことは全く知り申さぬぜよ。
投稿者 伝兵衛 : 2007年08月06日 16:14