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スポーツリレーコラム

2016年03月16日

ひときわ輝く美しい滑り 神髄見せたパトリック・チャン  

男子で優勝したパトリック・チャンのフリー=台北(2016年2月21日、共同) 「これがフィギュアスケートなんだ。フィギュアの神髄を見せてくれた」。2月に台北で行われた四大陸選手権の男子フリーが終わった直後、日本スケート連盟の小林芳子強化部長が興奮を隠しきれずに漏らした一言が印象的だった。称賛は、日本人選手ではなく、フリーで羽生結弦(ANA)、ハビエル・フェルナンデス(スペイン)に続いて200点超えを果たし、4年ぶり3度目の優勝を飾ったカナダのパトリック・チャンに向けられたものだった。各選手が競い合うように高得点が狙える4回転ジャンプの種類や数を増やす現在のフィギュアスケート界の中で、プログラムを磨き抜くことにこだわってきたチャンの美しい滑りはひときわ輝いていた。

 1シーズンの休養から復帰し、昨年12月のグランプリファイナルでは表彰台を逃すなど、調子は上がっていなかった。今大会のショートプログラム(SP)では出遅れ、首位と12点以上の差をつけられた。演技後は「ここの氷は酷い。僕は氷に乗って滑るスケーターだけど、ここの氷とは戦っているみたいだ」と愚痴もこぼれ、私はチャンの優勝はほぼ消えたと考えた。そういった趣旨の原稿を執筆したが、まさに後悔先に立たず。ソチ冬季五輪銀メダリストで元世界チャンピオンの底力は、担当わずか2シーズンの記者の予想など簡単に上回った。

 SPから2日後のフリー。直前に演じたSP1位の金博洋(中国)が高難度の4回転ルッツを含め、史上初めて1演技で3種類4度の4回転ジャンプを成功させたのに対して、チャンが跳ぶ4回転ジャンプはトーループの2本。しかし、ジャンプごとに観客が一喜一憂する金博洋と違って、卓越したスケーティングを軸に減点するところがないチャンの演技は素人目にも一つひとつの要素がプログラムに溶け込んでいるように感じた。表現を評価する演技構成点は5項目(各10点満点)すべてで9点台後半。演技後に氷を両手で激しくたたいて叫ぶまで、チャンの演じる世界に引き込まれていた。

 

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 藤原 慎也(ふじわら・しんや)1984年生まれ、大阪府出身。全国紙で5年間、主に警察、司法を担当し、2014年4月に共同通信に入社。名古屋支社でフィギュアスケート、野球、サッカーなどを取材。


2014年12月03日

仕事の奥深さ教えられる 定年の大相撲呼び出し・秀男  

大相撲九州場所で45年の土俵人生に終止符を打った、立呼び出しの秀男(2014年11月11日、共同) 性分なのかどうなのか。華やかな舞台で活躍する人物にはもちろん魅力を感じるが、どちらかというと表舞台を支える職人気質の人たちに目を奪われる。警察担当の記者をしていたときは、犯人と対峙する捜査官よりも検挙につながる物証を探し出す鑑識課員、死因を特定する解剖医や検視官の元に足を運んではその技術の一端を興味深く聞かせてもらった。事件とスポーツでまったく現場は異なるが、横綱白鵬が大鵬に並ぶ歴代最多32度目の優勝を成し遂げて幕を閉じた今年の大相撲九州場所で、45年以上にわたって花形力士を引き立て続けた男性から仕事と向き合う奥深さを教えられた。

 結びの一番を前に、きれいに整えられた土俵に一人上がる。たっつけ袴に白扇を広げて「ひが~し~白鵬、に~し~…」と名調子で力士を呼び上げると、館内からは「秀男」のかけ声。そこから観衆の視線は土俵に上がる力士に向いていく。そんな一連の流れを生み出し続けてきた64歳の秀男(本名山木秀人、朝日山部屋)が12月末で65歳の定年を迎えるに当たって九州場所を最後に引退した。話を聞かせてもらおうと場所中に喫煙場所で大好きな一服をしているところにお供させていただいた。見た目は常に飄々としているが「初日は頭が真っ白で何をしていいかわからずに会場を3周したよ」と照れ笑いを見せた姿が印象的だった。

 呼び出しの仕事は多岐にわたる。午前8時半頃から始まる取組の前に土俵をほうきで掃き清め、会場前ではその日の始まりを知らせる「一番太鼓」を櫓の上からたたく。取組の合間には水をまいたりして次の取組に備え、土俵下の審判や力士の座布団の準備も仕事の一つ。取り決めもさまざまでほうきで掃くときは右から左へ動かし、力士の呼び上げる順番は奇数日が「東から西」、偶数日は「西から東」となっている。

 

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 藤原慎也(ふじわら・しんや)1984年生まれ、大阪府出身。全国紙で5年間、主に警察、司法を担当し、2014年4月に共同通信に入社。名古屋支社でフィギュアスケート、ゴルフ、大相撲などを取材。