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スポーツリレーコラム

2015年12月09日

チェン、終盤は抜群の安定感 来日5年目で飛躍の5勝  

5勝目を挙げ、笑顔を見せるロッテのチェン=札幌ドーム(2015年9月30日、共同) 今季、プロ野球ロッテで飛躍を遂げた選手がいる。台湾出身の左腕、チェン・グァンユウ投手。成績は5勝4敗と飛び抜けた数字ではないが、来日5年目で初勝利を挙げ、左の先発投手が手薄なチームで存在感を示した。

 昨季まではDeNAに所属していた。2年目の2012年8月に左肘の靱帯修復手術、いわゆるトミー・ジョン手術を受けて復帰に1年ほどかかった。外国人枠が埋まっていたチーム事情もあり、4年間で1軍登板はわずか1試合。2014年シーズン限りで戦力外となった後、ロッテにテスト入団してラストチャンスに懸けた。年俸は600万円(金額は推定)。にこにこと笑みを絶やさない好青年だが「ことし駄目だったら、もう台湾に帰ろうかなと思っていた」と覚悟を決めていた。チームに溶け込もうと、通訳がいない環境でも日本語で周囲と積極的にコミュニケーションを取った。春季キャンプ中、チェンに教えてもらった中国語がある。「お疲れさま」を意味する「辛苦了」という言葉だ。練習後や試合後、よくこの言葉を交わした。

 チームが西武とクライマックスシリーズ出場を争っていた9月、10月は6試合に登板して無傷の3勝を挙げ、3位確保に大きく貢献した。この間の防御率は0・96。抜群の安定感で、同僚の石川らとともに月間最優秀選手(MVP)の候補にも名を連ねた。リストに載った候補者を見て「石川さんでしょう。自分はここに名前があるだけで十分ですよ。候補は有名な投手ばっかりじゃないですか」とうれしそうに笑みを浮かべていた。予想通り、月間MVPにはリーグでただ1人、4勝をマークした石川が輝いた。チェンは惜しくも受賞できなかったが、同じく候補に挙がった則本(楽天)、菊池(西武)ら各球団の主力投手と比べても決して見劣りしない成績だった。

 

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 長井 行幸(ながい・みゆき)1984年、千葉生まれ。2007年、共同通信に入社し大阪支社勤務。阪神を経て高校野球、ラグビーを担当。14年5月東京本社に転勤し引き続きアマ野球、ラグビーを中心に取材。15年からプロ野球ロッテ担当。


2014年08月13日

重量挙げに見たスポーツの原点 夏は高校生に特別な季節  

重量挙げ105キロ級を制した丸本大翔。ソフトテニスから転向して1年半足らずで高校チャンピオンになった。たゆまぬ心身の鍛錬と自己記録への挑戦が成長の原動力になっている。(2014年8月5日、共同) 南関東(東京、千葉、神奈川、山梨)で開催されている高校スポーツの祭典、全国高校総体で、山梨で実施された陸上、重量挙げ、サッカーなどを取材した。11日には夏の風物詩、全国高校野球選手権大会が甲子園球場で幕を開けた。夏は部活動に取り組む高校生にとって、特別な季節だ。
 会場に足を運んだ中で重量挙げはこれまで国体等で何度か取材する機会があったが、一般にはなじみの薄い競技だろう。今回、あらためて気付いたことがある。それは、他競技と比べて高校から始める選手が多いということ。競技最終日に行われた105キロ超級、105キロ級、94キロ級の優勝者はいずれも高校に入ってから重量挙げに取り組んでいる。中でも、105キロ級を制した丸本大翔(岡山・水島工)に驚かされた。2年生ながら重量級らしい筋骨隆々の体つきで、盛り上がった太もも周りは73センチ。それが中学時代にやっていた競技を聞くと「ソフトテニスです」と言う。失礼だったとは思うが、イメージと全く合わず「え、ソフトテニスやってたの?」と聞き返してしまった。
 中学3年の時には体重が85キロほどあり、高校でもソフトテニスを続けるか重量挙げを始めるか悩んだそうだ。わずか1年半足らずで高校生の頂点に立ったのだから、転向は正解だったと言えるだろう。同校で指導して13年の河島隆行監督に話を聞くと、岡山ではソフトテニスが盛んで、これまでも軽量級では転向は決して珍しい話ではないらしい。ただ、重量級ではさすがに丸本が初めてと教えてくれた。年明けからめきめき力をつけてきた伸び盛り。同監督は「柔軟性があるし、これだけの体で俊敏性もある。フォームも固まってきた」と成功の理由を説明した。
 重量挙げは見かけと違い、力任せに持ち上げればいいという競技ではない。例えばジャークは、床に置いてあるバーベルを引き上げて鎖骨、肩の上に置くのと同時に、一度しゃがみ込んでから立ち上がるクリーンという動作がある。そこから両足を前後に開きながら一気に頭上に挙げて両腕で支え、両足をそろえて静止すれば成功となる。94キロ級で優勝した佐藤啓隆(福島工)はジャークで自己ベストを1キロ更新する154キロを成功させたが、ポイントに挙げたのはクリーンの動きだった。従来はとにかく高く挙げようとしていたが、力頼みではうまくいかず、重さが増すと持ち上げてもすぐに落としてしまうことが多かったという。発想を転換し、肩まで引き上げたバーベルの下に素早く入れるよう、速くしゃがみこむ練習を積んできたのだ。
 実際にやってみるとわかるのだが、しゃがみ込む動作のスピードを上げるのは意外に難しい。瞬発力やバランス感覚のある選手が向いており、単純な筋力だけでは記録は伸びていかない。もちろん中学から経験している方が技術面で有利なのだが、体ができてくる高校から始めても一線級で勝負できるのがこの競技の面白さだ。
 重量挙げの魅力を質問すると、どの選手も「自己新記録を出した時の楽しさ」をまず挙げる。鍛えれば鍛えただけ、数字となって表れるのが醍醐味。優勝争いとは縁遠い記録であっても、これまでの限界を超える重量を成功させるとガッツポーズを決めて喜ぶ。時には優勝者よりも派手なのでは、というほどのアクションを繰り出す。観戦者、とりわけ記者という立場からすると勝った、負けたというところに視線が向いてしまいがちだが、この喜びこそがスポーツの原点なのではないだろうかとも考えさせられた。


【写真】重量挙げ105キロ級を制した丸本大翔。ソフトテニスから転向して1年半足らずで高校チャンピオンになった。たゆまぬ心身の鍛錬と自己記録への挑戦が成長の原動力になっている。(2014年8月5日、共同)

 

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 長井 行幸(ながい・みゆき)1984年、千葉生まれ。2007年、共同通信に入社し大阪支社勤務。阪神を経て高校野球、ラグビーを担当。 14年5月東京本社に転勤し引き続きアマ野球、ラグビーを中心に取材。


2013年09月18日

優勝旗、近いうちに白河の関越えも 甲子園で台頭著しい東北勢  

強豪・日大三を追い詰めた日大山形。投手の庄司(手前)をベンチの選手たちが必死の思いで盛り立てた(2013年8月13日、共同) ことしの全国高校野球選手権大会は、前橋育英(群馬)の初出場優勝で幕を閉じた。延岡学園(宮崎)日大山形、花巻東(岩手)を含めた4強は、いずれも決勝進出経験のないチームばかりだった。前回優勝の大阪桐蔭や春夏連覇の懸かる浦和学院(埼玉)など、有力視されたチームは早々に敗退した。率直に言って、この結末を予想した人は皆無に近かったのではないだろうか。

 ネット裏から全48試合を見て、出場校間の差が小さくなっていることを痛切に感じた。中でも東北勢の強さが目を引いた。例えば、日大山形の初戦の相手は一昨年に全国制覇した日大三(西東京)だった。出場校中チーム打率トップと伝統の強力打線は健在で、今大会も優勝候補の一角に挙がっていた。ふたを開けてみれば7―1で日大山形の快勝。スイングの鋭さは、むしろ日大山形の各打者にあった。その後も作新学院(栃木)明徳義塾(高知)と全国区の強豪をなぎ倒した。花巻東はプロ野球西武で活躍する菊池雄星がエースだった2009年以来の準決勝進出。今回は傑出した選手がいない中での躍進だ。県内出身者だけの選手構成で初出場した弘前学院聖愛(青森)も、青森山田、八戸学院光星の県内二強を破って甲子園切符をつかみ、16強入りと好結果を残した。仙台育英(宮城)は1回戦で浦和学院の夢を阻止し、聖光学院(福島)と合わせて史上初めて東北から出場した5校が初戦を突破した。どれも実力が伴っての勝利だった。

 とりわけ日大山形が鍛えられていると感じた。ことしは酷暑で土が乾いていたせいか、大会中盤あたりから内野でゴロが高く弾む傾向があった。通常と同じ感覚でゴロをさばこうとして、目の前で大きくバウンドした打球に内野手が頭を越される場面が散見された。イレギュラーバウンドであり、仕方ないことではある。しかし、日大山形の内野陣は一歩前に出て確実に捕球し、影響をものともしなかった。土台がしっかりしているからこそ、状況の変化にも対応できる。大会を通じて堅実な守備を見せた二塁手の中野は「消極的に後ろに下がったら駄目。下がるとバウンドが合わないから、前に出ることを意識している」と語り、その口調からは自信が感じ取られた。ある強豪校の監督が「ことしの東北勢はどこも守りがいい。特にショート。今は(打者に引っかけさせる)フォークボールやチェンジアップ、スライダーが流行しているから、ゴロをしっかり捕れないと勝てない」と評したが、全4試合で無失策と安定した守備力は大会ナンバーワンだったと思う。

 

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 長井 行幸(ながい・みゆき)1984年、千葉生まれ。2007年、共同通信に入社し大阪支社勤務。阪神を経て高校野球、ラグビーを担当。


2013年01月16日

心からの笑顔残し監督引退 坂田好弘氏、関西ラグビー協会長で第3章  

早大との試合後、両チームの選手らに見送られ花園のグラウンドを後にする大体の坂田好弘監督(2012年12月23日、共同) 冬の花園ラグビー場で、心温まる光景を目にした。昨年12月23日に行われた全国大学ラグビー選手権の2次リーグ、大体大―早大。大体大の坂田好弘監督にとっては36年間の指導者生活を締めくくる試合だった。

 試合後、グラウンドで大体大の選手たちから花束を贈られた。ここまではよくあることだと思う。驚かされたのはその後だった。早大からも花束が出てきた。そして、両チームの選手たちとゴールポスト辺りで記念写真に収まった。こうしたセレモニーでは対戦相手は拍手して見守るくらいが通常の対応ではないだろうか。坂田監督もこの計らいに驚いたようで、「うちの選手が密かに何かしようというのは感じていたけど」と目を丸くした。

 大体大側が早大に拍手だけでもしてくれないかという話を持ち掛けていたところ、早大側も「花束を渡していいか」という話になった。昨年9月に古稀を迎えた坂田監督は「70のおっちゃんと、20代の選手。孫みたいな選手だけど、本当に感動した。長くやって良かった」と感激もひとしおの様子。心からの笑顔が強く印象に残った。

 

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2012年05月09日

トラ打線、やっとお目覚めか 長い目で見守る裏方さん  

8回に勝ち越し2ランを放ち藤井彰(左)に迎えられる鳥谷。珍しく表情に生気がみなぎる。(5月8日、共同) 関西で根強い人気を誇るプロ野球・阪神の調子が芳しくない。4月20日に首位の座を明け渡すと、最大で5あった貯金が瞬く間になくなった。

 勝率5割に後退した5月3日の中日戦では無死一、三塁から新井貴、マートン、ブラゼルと中軸が凡退し、今季初めて勝率5割を切った4日は打線がわずか1安打。ゴールデンウイークにかけての9連戦で初戦から引き分けを挟んで5連敗を喫し、その間は計4得点と打撃陣の不振が深刻だった。片岡打撃コーチは「シーズンは長いから好不調の波はある。今はチーム全体がそういう時期だから」と言う。好機をつくっても点が入らない泥沼の状態で「2死からでも四球で塁に出たりして、相手にプレッシャーをかけないと」と打開策を模索している。連敗を5で止めた5日の巨人戦前には、通常2カ所の打撃ケージを使う打撃練習を1カ所のケージで行って集中力を高める工夫もしたが、2得点にとどまった。

 ただ、裏方の見方はちょっと違う。2003年からチームを支える山崎打撃投手は「今ちょっと打てないからって一喜一憂することはまずない。レギュラーは特にそう」と言い切った。試合前の打撃練習では、首脳陣や打者の求めに応じて投げるコースや距離などを変えることがあるくらいで、特別なことをしていないという。理由は、選手は1年間のトータルで考えているからだそうだ。長くチームの打者相手に投げているスタッフの言葉だけに、説得力がある。「20打席連続で三振したり、30打席安打がなかったら話は別だけど、そんなことはまずないでしょ。15打席もあればヒットの1本は出るんだから」

 

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長井 行幸(ながい・みゆき)1984年、千葉生まれ。2007年、共同通信に入社し大阪支社勤務。高校野球、ラグビー担当を経て今季から阪神を担当。