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スポーツリレーコラム

2014年07月09日

スポーツ界は自己財源の充実を 20年東京五輪で「追い風」  

2020年東京五輪・パラリンピックの準備状況を監督するIOC調整委員会と大会組織委員会の第1回会議を終え、笑顔で記念撮影に収まった両者首脳たち。コーツ調整委員長(左から2人目)、東京大会組織委の森喜朗会長(同3人目)、JOCの竹田恒和会長(右端)ら(2014年6月27日、共同) 昨年9月の国際オリンピック委員会(IOC)総会で2020年東京五輪開催が決まってから、早いものでもう10カ月。6年後の祭典に向けた準備は、国を挙げた「オールジャパン態勢」で着々と進み、スポーツ界もメダル獲得に向けた若手選手の育成などに早速着手している。そんな中、自国開催の五輪というかつてない追い風が吹いている今だからこそ、各競技団体が本腰を入れて取り組むべきだと思うことがある。自己財源を増やすことによる、財政基盤の強化だ。
 大手広告代理店の関係者は「東京五輪が決まってから、企業のスポーツ界に対する関心はものすごく高くなっているのは事実」と認める。各団体にとっては、スポンサーを獲得し、事業を拡大していく千載一遇のチャンスだ。日本水泳連盟はことしに入って、資生堂、日本製粉と新たに協賛契約を結んだ。企業の支援に対する意欲を「今までにないぐらい感じている」という泉正文専務理事は「東京五輪決定を機に、スポンサーをつなぎ止め、自己財源を確保していくことが重要だ」と強調する。狙いは選手強化の充実だけではない。「競技の普及に関する事業には、なかなか国の補助金は出ない。ちょうど学校体育での水泳の扱いが縮小しており、危機感を持っていたところ。普及にも力を注ぎたい」と言う。
 東京五輪に向けた選手強化には国の支援の拡充が見込まれているが、競技団体による自助努力での資金確保も当然不可欠になる。東京五輪で金メダル数世界3位を目標に掲げる日本オリンピック委員会(JOC)は6月、競技団体のアンケート調査を基に20年までの6年間で総額1千億円以上の国費による強化費が必要だとし、文部科学相やスポーツ議員連盟に要望書を提出したが、どこまで反映されるかは不透明だ。議連幹部は「(来春政府が新設する方針の)スポーツ庁ができても、予算はそう簡単に一気には増えない」とみる。
 東京五輪までの強化費調達だけでなく、五輪後も見据えて危機感を持って取り組もうとしている団体もある。6月の総会で執行部が退陣に追い込まれ、現在、新体制を整えている日本ホッケー協会は、前の執行部がまったく力を入れてこなかった協賛社集めなどのマーケティングを、強化とともに最重要事業に掲げる。新体制を引っ張る幹部は「本当に大事なのは国の補助金が一気に減る東京五輪後。今のうちに、一過性で終わらずにホッケーを長期的に支援してくれるスポンサーを見つけ、6年間でしっかり関係をつくりたい」と意気込む。この幹部は、選手と企業を結びつけるJOCの就職支援「アスナビ」が成果を出したことを引き合いに出し「あのシステムを競技団体にも広げてほしい。地方の会社も含めてスポーツを支援したいという企業と、競技団体を結びつける仕組みがあれば、うちのように注目度が低く小さな競技団体は本当に助かる」と訴えた。
 近年、スポーツ界では補助金、助成金の不正受給などの不祥事が相次いだが、その背景には競技団体のガバナンス(組織統治)の欠如とともに、苦しい台所事情があった。2度目の東京五輪を契機に、多くの団体が企業からしっかりとした支援を得て財政基盤を整え、足腰の強い組織へと生まれ変わることができれば、それこそが日本のスポーツ界にとっての大きな「レガシー(遺産)」になるのではないか。6年後には、世間から「日本のスポーツ界も成熟したな」と認められるようになってほしいと今から願っている。


【写真】2020年東京五輪・パラリンピックの準備状況を監督するIOC調整委員会と大会組織委員会の第1回会議を終え、笑顔で記念撮影に収まった両者首脳たち。コーツ調整委員長(左から2人目)、東京大会組織委の森喜朗会長(同3人目)、JOCの竹田恒和会長(右端)ら(2014年6月27日、共同)

 

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 長谷川大輔 1980年、千葉県生まれ。2003年共同通信社入社。大阪、広島でプロ野球を取材し、09年から東京で水泳、バレーボールなどを担当。その後はJOC、日本体協を中心に20年東京五輪へ向けた動きを総合的にカバーしている。


2013年11月27日

「ジャパンオリジナルを!!」 日本女子バレー、真鍋政義監督の斬新な戦法  

新戦術を模索し駆使する真鍋政義監督から頑張りを認められた迫田さおりがスパイクを決めた(2013年11月18日のブラジル戦から、共同) 通常は2人いるセンターを1人減らして、代わりにアタッカーを3人から4人に増やす―。まさに「常識」を打ち破る新戦術だった。17日まで行われたバレーボールのワールドグランドチャンピオンズカップ女子大会で、日本がミドルブロッカー(MB)とも呼ばれるセンターを1人にする独自の布陣「MB1」を駆使して3位になった。「そもそもミドルブロッカーは2人と、誰が決めたんや、と。日本のミドルは点が取れない。それなら代わりにサイド(アタッカー)を入れた方がいいのではないか、と思った」。真鍋政義監督の固定概念にとらわれない柔軟な発想が、「世界のどこの国もやっていないはず」という斬新な戦法を生み出した。

 長身のセンターを1人に減らすと、ブロック力が落ちるというリスクはあるが、これまでは使い切れなかった能力の高いアタッカーを増やせることで攻撃力は増す。ことしの日本のアタッカー陣は木村沙織(ガラタサライ)江畑幸子(日立)新鍋理沙(久光製薬)迫田さおり(東レ)のロンドン五輪代表勢に、伸び盛りの石井優希、長岡望悠(以上久光製薬)らも加わって層が厚くなった。センターは大友愛や荒木絵里香ら五輪の主力が引退して一気に手薄になった。MB1採用は、そんなチーム状況にも即したものだった。

 主にセンターの代わりに起用されたのは高い得点能力を誇る迫田だった。滞空時間の長い跳躍から放つバックアタックはこれまでも一級品との評価を得てきたが、サーブレシーブに難があるため、なかなか定位置を獲得しきれなかった。MB1では、前衛にいる時も後ろに下がってからバックアタックを放つという独特の動きで点を量産し、持ち味を存分に発揮した。センターと同じ動きが要求されるブロックも懸命にこなし、監督も「よくやっていると思う」と一定の評価を与えた。

 

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 長谷川大輔 1980年、千葉県生まれ。2003年共同通信社入社。大阪、広島でプロ野球を取材し、09年から東京で水泳、バレーボール、バスケットボールなどを担当。


2012年12月19日

リーグの在り方に再考の余地あり バスケットボール女子  

リバウンドを奪うJXの渡嘉敷(中央)。彼女たちばかりが躍動し大差の試合が続くようだとリーグ全体の質の低下が懸念されるようになる(2012年9月28日、代々木体育館、共同) 日本代表が強くなるためには、やはりその在り方に再考の余地があると思う。バスケットボール女子のWリーグのことだ。今季は、昨季までの2部4チームを吸収してチーム数が8から12に増えた。それに伴って上位勢同士の対戦回数が減り、上位と下位では実力差が大きすぎるために大差がつく試合が増えた。代表の主力が所属する首位のJXはレギュラーシーズンを22戦全勝で終え、昨季1試合もなかった100得点以上を5試合で記録した。「リーグの最大の目的は日本代表の強化につながるかどうかなのに、これでは強化にならない」と心配する関係者は少なくない。試合開始前から勝ち負けが予想できる試合が多く、興行としての魅力がそがれてしまっているという面もある。

 今回の吸収は“弱者”である2部チームの救済という側面が強い。昨季終了後に東京海上日動が脱退し、チーム数が減った2部は単独でのリーグ運営が困難となった。そこには前身が企業の日立甲府のクラブチームの山梨や、来季クラブ化する荏原といった、企業の丸抱えではない形で存続の道を模索するチームもある。リーグは「企業の休廃部が相次ぐ中で、こうしたチームを切り捨てていては、将来の発展はない」(幹部)と吸収に踏み切った。

 問題は、単純な下部リーグの吸収では、代表の強化に直結する“強者”の上位チームの選手にメリットがないという点にある。明らかに実力で劣るチームとの試合が増えた強豪チームのある選手は「正直、下位との試合では、若い選手が緩んでいるのが分かる。葛藤があるし、フラストレーションがたまる。リーグがぬるま湯になれば、世界に置いていかれるという危機感がある」と切実な思いを吐露した。

 

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 長谷川大輔 1980年、千葉県生まれ。2003年共同通信社入社。大阪、広島でプロ野球を取材し、09年から東京で水泳、バレーボール、バスケットボールなどを担当。


2012年02月01日

揺るがぬ志に感服 水球・青柳勧の五輪挑戦  

アジア予選を前にチームにあらためて戦術を説明する日本代表の青柳勧主将(2012年1月18日、東京。国立スポーツ科学センター、共同) 日本の第一人者の揺るがぬ志に感服した。1月27日に閉幕した水球のロンドン五輪アジア予選を兼ねたアジア選手権(千葉県国際総合水泳場)。日本男子は4チーム中3位に終わり、1984年ロサンゼルス五輪以来の悲願の五輪出場にまたしても届かなかった。カザフスタンに敗れ、最終戦の中国戦を待たずに五輪出場の可能性が消滅した26日の試合後のインタビュー。98年から代表でプレーする31歳の大黒柱、青柳勧(ブルボンKZ)は自らの「今後」について問われると、こう即答した。「何としても五輪に出るまでは、水球はやめられないと思っている。それが2016年であっても、20年になっても」。五輪行きを逃したショックを断ち切るように、きっぱりとそう言い切った姿に、不屈の精神を見た気がした。

 青柳は人一倍の情熱と行動力で日本水球界をけん引してきた男だ。若くして海を渡り、世界最高峰のイタリアやモンテネグロなどのプロリーグで長く活躍。09年に帰国すると、こんどは菓子メーカーのブルボンの協力を得て、同社が本社を置く新潟県柏崎市に社会人選手の受け皿となるクラブチーム、ブルボンKZを翌年設立した。「日本の水球を強くするには、海外に1人で出てプレーするだけでは何もできないと分かった。競技環境を整備しないと、五輪への道はないと思った」からだ。水球は、バレーボールやバスケットボールのようなほかの球技と違って、国内には実業団チームがない。「大学を卒業した選手は仕事をしながら競技を続けようと思っても、(企業の理解を得られず)遠征や合宿のたびにアルバイトを変えたり、再就職したりしていた。それでは生活していけない。いつも国際大会からの帰りの飛行機では『おまえ来年どうするの?』『引退するの?』『もうこれ以上、親には仕送りを頼めない』といった話ばかり。そんな現状を変えたかった」と言う。

 自身の構想をレポート用紙何十枚にもまとめ、ブルボンをはじめとした地元の企業を回って熱弁をふるい、選手の雇用先や協賛を開拓して、行政からの助成も取り付けた。選手の雇用先企業には代表活動で抜けている期間も有給扱いになるように交渉した。「水球は40歳になっても続けられるスポーツ。選手生命が伸びれば、代表の強化も進むし、選手層も厚くなる。安定した生活保障を得て、(競技生活を続けられるよう)持ちこたえられる環境をつくっている」。なんとしても日本水球界を発展させ、五輪出場への道を切り開くという一心で、駆け回った。

 

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長谷川大輔 1980年、千葉県生まれ。2003年共同通信社入社。大阪、広島でプロ野球を取材し、2009年から水泳、バレーボール、バスケットボールなどを担当。