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スポーツリレーコラム

2017年08月01日

「ITデータコラム」米国では定着しつつあるWAR 数字の意味を知ることはスポーツを楽しむ第一歩  

ドジャースへの移籍が決まったレンジャーズのダルビッシュ(共同) スポーツと数字は、切っても切り離せない。競技場には、様々な数字があふれている。陸上や水泳のタイム、投てきや跳躍の距離や高さ、野球の打率や防御率、連勝や連敗。数字の意味を知ることが、スポーツを楽しむ第一歩となる。

 近年はテクノロジーの発達により、選手のパフォーマンスからより豊富な数字を“採取”できるようになった。それに伴い、新しい数字の見方や意義付けがなされるようになり従来にはなかった選手やチームの評価法も出てきた。

 IT時代のスポーツと数字の新しい関係やトレンドを紹介していきたい。(随時掲載)


 7月31日は米大リーグのトレード期限。例年、この時期になると選手のトレードにまつわる情報やニュースが飛び交う。トレード候補の名前を取りざたした記事の中に「WAR」というアルファベット3文字の指標を見かけることが珍しくない。

 最終日ぎりぎりで、前田健太投手が所属するドジャースへのトレードが決まったレンジャーズのダルビッシュ有投手の場合もそうだ。「ファングラフ」というデータ分析の専門サイトが掲載した7月24日付の記事の中でWARが使われている。

 エース左腕のクレイトン・カーショーを故障で長期離脱させることになったドジャースがダルビッシュをトレードで獲得した場合の損得を論じる記事で、筆者のジェフ・サリバン記者はドジャースの先発投手陣とダルビッシュを防御率とWARで比較している。

 WARは、「Wins Above Replacement」の頭文字で、直訳すると「交代選手よりも多い勝利数」になるが、選手のチームに対する貢献を総合的に評価する指標として米国では定着しつつある。数字が大きければ、勝利への貢献度が大きい。

 サリバン記者が計算したシーズン残り試合での推定での数字だが、防御率ではダルビッシュは3・86でカーショー、ウッド、ヒル、前田に次いで5番目だが、WARを見ると、カーショー、ウッドに次いで、4・1のダルビッシュは3番目になる。

 防御率だけではない総合的なチームへの貢献では先発投手陣3番目だが、カーショーが戦列離脱しているので、ダルビッシュは2番目になる。

 WARは投手だけでなく野手も、算出される。野手を例に取ると、従来の評価は安打、打点、本塁打、打率といった打撃成績がメインだったが、WARは打撃だけでなく、走塁や守備など広範囲な要素を基に、複雑な計算式で算出される。投手も同様だ。

 データ分析の専門サイト「ファイブ・サーティ・エイト」は7月14日付の記事で、米大リーグ・オールスター戦の本塁打競争で優勝したヤンキースの若き強打者、アーロン・ジャッジを取り上げ、過去の新人または新人資格を持つ選手と、シーズン前半(4、5、6月の3カ月間)のWARで比較した。

 「ファングラフ」のWARを引用したもので、今季のジャッジは5・1でトップ。2位のクリス・セイボー(1988年)の4・2に大差をつけた。3位には3・8でアルバート・プホルス(2001年)、コリー・シーガー(16年)、フレッド・リン(1975年)の3人が並んだ。ちなみに2001年のイチローは3・0で12位となっている。

 シーズン前半のWARに比べ、後半は横ばいか低下するケースが多い。セイボーは4・2から0・5に大きく下がり、プホルス、シーガー、リンの3人もわずかに低下した。こうした傾向から、ニール・ペイン記者はジャッジも後半戦は前半のような好調を維持するのは難しい、と見ている。

 WARは「ファングラフ」や「ベースボールリファレンス」といった野球データ専門サイトが算出したものを他の媒体やサイトが利用している。計算方法も両社で違っているが、選手の評価法の一つとして、上記のように多くのメディアが引用し、大リーグファンの間では広く受け入れられている。

 大リーグ機構は公式記録として認めていないが、スポーツ専門テレビ局のESPNは、「ベースボールリファレンス」版のWARを使う。

 日本でも、プロ野球選手を対象にWARを算出している記録愛好家がいるようだが、広く認知されたとは言えない状況だ。WARが今後、日本で広まっていけば、野球の楽しみ方が増えるかもしれない。

 山崎恵司(やまざき・えいじ)のプロフィル

【写真】ドジャースへの移籍が決まったレンジャーズのダルビッシュ(共同)


 1955年生まれ。1979年に共同通信運動部に入り、プロ野球を中心に各種スポーツを取材。93年からニューヨーク支局で野茂英雄の大リーグデビューなどを取材。帰国後、福岡支社運動部長、スポーツデータ部長などを務め、現在はオリンピック・パラリンピック室委員。


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