国を、大陸を一つに! サッカーW杯の「魔力」
サッカーのワールドカップ(W杯)は、スペインの初優勝で幕を閉じた。アフリカ初開催の祭典。南アフリカという複雑な国を、さらにはアフリカ大陸全体を一つにしたW杯の「魔力」を目の当たりにした1カ月間だった。
南アという国のパワー、熱気を最も肌で感じたのは開幕2日前の6月9日だった。ヨハネスブルクの中心部で行われた同国代表チームのパレード。選手らが乗り込んだバスを一目見ようと、南アのユニホームを着た人が道にあふれ、民族楽器ブブゼラのけたたましい音が街中に響き渡った。白人、黒人、カラード(混血)…人種は関係ない。
「南アは決勝まで勝ち上がってスペインに2―1で勝つよ!」と目を輝かせる10代の黒人の少年。「W杯は大きなパーティー。この瞬間を楽しまなくちゃ」と笑みを浮かべる40代の白人女性。主催者によれば、わずか1マイル(約1・6キロ)という行程だったが、バスは1時間以上をかけてゆっくりと移動。詰め掛けた約20万人ともいわれる人々の表情は、一様に輝いていた。開幕前なのに、まるで優勝パレードのようだった。
大会の成功は収支や入場者、テレビ視聴者数など数字で計れるものを基準に語られることが多い。ただ、「虹の旗」ともいわれる6色の南ア国旗を誇らしげに振る人々の顔を見ると、その時すでに「この大会は成功した。南アでW杯を開催してよかった」と強く思った。
残念ながら南アはW杯史上初めて、1次リーグで敗退した開催国になってしまった。あの黒人少年の夢はかなわなかった。南アに代わり、アフリカ全体の希望をつないだのはガーナだった。6月26日の決勝トーナメント1回戦で米国を延長の末に振り切った試合は、個人的には今大会のハイライトだった。「ガーナだけじゃなく、アフリカ大陸全体が僕らをサポートしてくれている」(ガーナ代表のインコーム)。ルステンブルクの競技場には試合後、無数のガーナ国旗が揺れた。ガーナの選手が南アの国旗を持ってスタンドの声援に応えていたのも印象的だった。
ケープタウンで乗ったタクシーの黒人運転手の言葉がよみがえる。「これは南アのW杯じゃない。アフリカ全体のW杯なんだ。おれたちは、できるんだ」。今回のW杯の本当の「勝者」は、アフリカなのかもしれないと感じている。
【写真】バスに乗ってパレードする南アフリカ代表選手らに熱狂的な声援を送る市民(6月9日、ヨハネスブルク、共同)
土屋 健太郎(つちや・けんたろう)1979年生まれ。千葉県旭市出身。2002年に共同通信に入社し、12月から福岡支社でソフトバンクなどを担当。07年1月から東京本社でサッカー、大相撲、バレー・バスケットボールなどを担当。
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