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スポーツリレーコラム

2009年09月23日

“マイナー競技”の悲哀 アーチェリー世界選手権取材で感じたこと  

 スポーツ記者をしていて野球やサッカーなどのメジャー競技を取材する機会は多いが、いわゆるマイナースポーツと言われる競技を目にする機会は五輪などの総合大会でもカバーしない限り、ほとんどないと言っていい。その数少ないチャンスが突然、舞い込んできた。9月上旬に韓国の蔚山で開催されたアーチェリー世界選手権の団体で、日本は男子が3位決定戦に、女子は決勝に進出を決めた。史上初のアベックメダルの可能性が出てきたことから、急きょ2泊3日の海外出張を命ぜられた。
アーチェリー
 8日午前、成田発の航空機に飛び乗り釜山の空港に着いたのが午後1時半過ぎ。競技場は空港から60キロほど離れた場所にあり、タクシーで会場に着いたのは試合開始10分前の3時ごろとバタバタの移動だった。もちろん、息も荒い筆者のことなどお構いなしに、男子の3位決定戦(対中国)が始まった。3人で戦う団体戦は1人1本ずつ、3人で3本を1回のローテーションとし、合計8回(矢の数では24本、得点では240点満点)の合計点数で勝負を決める。

 70メートル先の的を狙うが、中心の10点のエリアはわずか直径12センチ。ちょっとしたミスが勝敗を左右する戦いで、アテネ五輪個人銀メダリストの山本博(日体大女短大教)を中心とする日本は中国を破り、32年ぶりの銅メダルを手にした。続いて行われた女子決勝での日本は王者・韓国に敗れはしたものの、6年ぶりの銀メダルを獲得。日本のアーチェリー界にとって歴史的な一日を目撃する機会に恵まれた。
 
 翌日の大会最終日は個人戦の準決勝、決勝が実施されたが、日本選手は勝ち上がっていなかったため、日本代表の関監督と全日本連盟の秦常務理事から「アーチェリー界の現状」についてじっくりと話を聞いた。「選手は大学を卒業しても競技を続けられる環境がない。受け皿となってくれる企業も減っている」「大会にスポンサーなんて夢の話、企業は見向きもしない」「2016年の東京五輪招致が決まってくれれば、夢の島公園に会場が新設される。そうなれば都心でも大きな大会を開催できるようになり、競技人口の増加につながる」

 こうした現場の人たちが抱える問題点や悩み、願望はアーチェリーに限らず、おそらくメジャー以外のどの競技にも共通していることなのだと思う。関係者の方々は日々、競技力の向上や普及に尽力されているのだろうが、一方で今回初めて取材をしてみて「アーチェリーはまだ自分たちの競技が持つ魅力を十分に活用できていない、世間に伝え切れていないのではないか」とも感じた。
 
 アーチェリーは気持ちの揺れが矢のぶれにもつながる、非常に見応えのあるスポーツだった。少ない固定カメラで中継もでき「ネット向き」のコンテンツにも思えた。会場も100メートルの直線距離があれば競技を行え、現に欧州の大会では街の広場などに特設会場をつくり実施しているという。行政や法律、安全面の問題もあるのかもしれないが、日本でも都会の公園や道路、港などで大会が実施されたら、ぜひ見てみたいという人は出てくると思う。

【写真】女子団体表彰式での日本チーム。左から松永安紗子、松下紗耶未、蟹江美貴(共同)


吉谷 剛(よしたに・つよし)1975年生まれ。北海道出身。テレビ局勤務を経て、2002年に入社。03年12月から07年まで大阪で阪神などを担当し、同年12月に東京に異動。昨年は横浜や大リーグ野球を担当し、今年から卓球やテニスなどを取材。


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