47NEWS >  スポーツ >  スポーツリレーコラム >  2008年04月 バックナンバー

ライター名

月別バックナンバー

スポーツリレーコラム

2008年04月30日

カカ、メッシら夢のチーム 魅力いっぱい、欧州サッカー  

TR2007122000085.jpg
 今季の欧州サッカーは各国リーグ、欧州カップ戦ともラストスパート。多くの試合を見てきた。自分なりのベストイレブンを選んでみたい。あくまで記者として取材し、現場で見た印象がベース。陣形は3―4―3、中盤はひし形(ダイアモンド型)にしてみた。

 ▽GK ブフォン(ユベントス) セービングの技術と安定感は群を抜く。今季は背中痛に苦しみ、本調子ではなかったというが、とてもそうは思えない反応の素早さが光った。
 ▽右DF セルヒオラモス(レアル・マドリード) 守備センスに卓越し、すきがない。何人かの個人技に優れたサイドアタッカーと対戦する試合を見たが、ほぼ完ぺきに抑えた。
 ▽センターバック ファーディナンド(マンチェスター・ユナイテッド) 読みの鋭さと当たりの強さを兼ね備える。巧妙にパスやドリブルのコースに入って難なくボールを奪う。
 ▽左DF マルディーニ(ACミラン) 欧州チャンピオンズリーグ(CL)の敵地でのアーセナル戦は、機動力抜群の相手攻撃を封じた。その後、負傷離脱しなければ、今季限りでの引退を撤回したはず。


 ▽守備的MF マケレレ(チェルシー) マルディーニ同様に、衰えを見せない。経験を重ねて、戦術眼が鋭くなるばかり。危険察知能力に優れ、タックルのタイミングもいい。
TR2007110800013.jpg
 ▽右MF カモラネージ(ユベントス) ホームでのACミラン戦は抜群に切れ味の鋭いプレーで全得点に絡んだ。個人技を最も効果的にチーム全体の中で生かす「職人」。
 ▽左MF ランパード(チェルシー) 今季は左寄りでプレーすることが多く、大方の予想以上にうまくこなしている。守備もしっかりし、1対1の局面でほとんど負けない。
 ▽トップ下 カカ(ACミラン) 今季はけがに泣いたが、春に復帰してからは相手にとって手がつけられない勢いだ。高速ドリブルと、威力があり精度の高いシュートはため息を誘う。


 ▽右FW メッシ(バルセロナ) 欧州CLで中村俊輔のセルティックを手玉に取った。けがでしばらく戦列を離れたが、復帰後はマンチェスター・ユナイテッドの守備陣も切り裂いた。パスの狙いどころがひと味違う。
 ▽左FW ブチニッチ(ローマ) 欧州CLのレアル・マドリード戦で決めた左から切れ込んでのゴールに度肝を抜かれた。イタリア1部リーグの試合でも多くの鮮やかなゴールを挙げている。
 ▽センターフォワード トニ(バイエルン・ミュンヘン) どこへ行っても得点王になれる。あきれるほどの決定力で稲本潤一のフランクフルトを粉砕した。体を張ったポストプレーもうまい。

 各選手が筆者の見た時のプレーをしてくれれば、サッカーの魅力を最大限に表現する「ドリームチーム」になるはずだ。


【写真】
(上)昨年のクラブW杯準決勝で浦和の坪井(左)と競り合うACミランのカカ(共同)
(下)ゴールを決めアンリ(中)とロナウジーニョ(右)の祝福を受けるバルセロナのメッシ(ロイター=共同)



2008年04月23日

衰える気配ない向上心 34歳、清水が再出発  

aTR2008041200144.jpg
 スピードスケート男子五百メートルで1998年長野五輪金メダリスト、2002年ソルトレークシティー五輪銀メダリストの清水宏保が4月1日、大手家電量販店のコジマと2年契約を結び、10年バンクーバー五輪に向けて再出発した。

 10年間、所属したNECとの契約を終了。「ちょうど10年の区切り。新たな気持ち、環境で次の五輪に取り組みたい」と言う。

 2年前のトリノ五輪で18位と惨敗。昨年7月に腰を手術し、調整が遅れたことでワールドカップ(W杯)前半戦のメンバーから外れた。五輪10周年となる思い出の長野で開かれた3月の今季最終戦、世界距離別選手権の出場も逃し、屈辱のシーズンが続いた。

 スケートで五輪初の金メダル、世界距離別選手権で02年まで4連覇達成、世界記録の樹立など、名声を手にしている。頂点からの転落に「引退」の二文字が脳裏をよぎってもおかしくないはずだが、34歳のスプリンターから向上心の衰える気配がないことに驚く。

 「新たにやるぞ、という気持ちになる。モチベーションがリセットされる」と楽しそうに話す。かつては「孤高」のエース。報道陣を避け、ほかの選手たちと一線を画して練習を積み、勝負師のような形相でメダルを狙い続けてきた。しかし、4月15日に東京都内で行われたコジマの洞爺湖マラソン協賛記者会見に出席すると、その後も記者の取材に気軽に応じた。

 「世界は新しい選手が次々と出てくるし、年齢の壁もあるのかもしれないけれど、もう一度頂点を目指して、頑張っていきたい」と宣言した。

 6月までは若手選手と山梨などで練習し、7月からは海外で外国選手と合同練習を行う計画。後進の育成を図り、同時に刺激も受ける狙いもあるのだろう。スケートで史上初の5度目の五輪代表に向け、挑戦を続ける清水の完全復活を、同世代の1人として楽しみに待ちたい。

奥出 裕充(おくで・ひろみつ)1969年生まれ。アテネ五輪の体操、トリノ五輪のフィギュアスケートなどを担当。慶大時代はバドミントン部に所属し、ことしからはコーチ。



2008年04月16日

〝拡大文字〟めぐる悲喜こもごも 力士と記者の場合  

TR2008022500259.jpg 入社や入学の時期である4月はスタートの季節だ。大相撲でも3月に入門した新弟子たちが、今月下旬に発表される夏場所の新番付に一斉に名を連ねる。地位は最下位の序ノ口で、番付表の一番下の部分となる。

 角界の隠語を意味する相撲用語に「虫眼鏡」がある。番付表で虫眼鏡を使わなければ名前を探すことができないほど、字が小さな力士たちのことを表す。主に序ノ口や序二段を指していて、確かに限られたスペースの中に小さく細い文字がぎっしりと詰まっている。新十両となった力士に新番付を見た感想を聞くと、ほぼ全員が言う。「しこ名の字が大きくなってうれしい」。力士にとって、自分の字がどんどん大きくなることは、この上ない喜びなのだ。

 字が大きくなるといえば、この春から新聞業界は軒並みに拡大文字を導入している。読者の目に優しく、お年寄りや子どもたちは親しみやすいだろう。しかし記事を書く記者にとってはどうか。

 活字が大きくなるということは、一定のスペース内に掲載される文字数や行数は減る。つまり書きたいことはまだあるものの、紙面の都合で書き切れない。メーン原稿の決められた行数は10年以上前と変わらないのに、文字の数だけがグッと少なくなったことに対し、わたしは多少のジレンマを覚えてしまう。「よりコンパクトに」「切り口を鋭く」とは言うは易しで、登場人物のコメントや名前、肩書だけであっという間に行数は進む。記者にとって大変な時代になったなと思う。

 今から10年前に初土俵を踏み、序二段時代からわたしが知っている28歳の力士がいる。押し相撲の彼は幕下生活が長いが、夏場所は自己最高位の幕下5枚目前後に躍進することが予想される。苦労に苦労を重ねながら、いよいよ夢の関取の座が視界に入ってきた。彼に番付について聞いてみると「入ったばかりのころは自分の名前が読めず、上に書いてある出身地で探してました。少しでも字が大きくなるのはうれしいですよ。今は幕下ですけど、もう自分の名前から探せますからね」。

 関取になれば番付のしこ名は太字となり、幕下以下とは一目瞭然(りょうぜん)。先ほどの彼は「十両に上がればですか? 自分のしこ名があんなに大きくなるなんて…。想像するだけでワクワクしますよ!。もっとけいこしないといけませんね」と目をらんらんと輝かせた。

 〝拡大文字〟をめぐり、わたしと彼の思いは複雑に交差するが、ここは大きくなった活字で対抗するしかない。彼のように地道に頑張っている力士たちが成功を収めた時の原稿は、彼らの土俵人生が行間からグッとにじみ出るものにしなければ…。彼と同じく、わたしも「もっとけいこしないといけない」と実感している。

【写真】境沢(尾上部屋)は今年の春場所で、初土俵から所要12場所でのスピード新入幕を果たした。 番付を手に笑顔が広がる=2月25日、大阪府大東市の尾上部屋宿舎

田井 弘幸(たい・ひろゆき)1973年生まれ。大阪府出身。96年に入社。大相撲担当からプロ野球の阪神、中日担当を経て、2002年から大相撲に復帰。



2008年04月09日

北京へGO! 北島に抜群の存在感 15日から競泳日本選手権   

BS-0061__-200802231146_L.jpg 柔道の全日本選抜体重別選手権と全日本選手権、競泳の日本選手権、体操のNHK杯―。4月から5月に掛けて、北京五輪で日本選手の活躍が期待される競技の代表選考会が続く。栄光へのドラマが繰り広げられ、「オリンピックイヤーの本番突入」を感じさせる。

 15日からは、競泳の日本選手権が始まる。五輪は4年に1度の大舞台。そこに立つには国内のライバルに打ち勝たなければならないが、競泳の代表選考は厳しい。日本選手権の決勝で、日本水泳連盟が設定した派遣標準記録を突破して、2位以内に入ることが個人種目の条件だ。派遣標準記録は国際的な標準記録よりも高い。選考は、過去の実績は一切関係ない一発勝負。アテネ五輪のメダリストであれ、昨年の世界選手権の優勝者であれ、条件をクリアできなければ、五輪切符は手にできない。

 選考会は独特の緊迫感がプールを包む。笑顔、難しい顔、こわばった顔、ぎこちない笑い…。コーチや選手の表情はさまざまだ。決勝の選手招集所の張り詰めた空気。先日会った元五輪メダリストは「いよいよ選考会ですね。緊張するなあ」と、まるで自分のことのように話した。選考基準が明確なため、レースが終わった瞬間に、代表入りした選手と落選した選手が判明する。勝者と敗者が残酷なまでに明暗を分ける。

 しかし、本当の戦いは代表になってからだ。五輪に向けて、世界との戦いが始まる。取材経験から言うと、競泳に限ったことではないが、代表選手でも本番で力を出せそうなタイプと、努力している本人には申し訳ないが、力を出せそうにないタイプに分かれる。成功者はほんの一握り。実力に加えて、精神的、運命的強さを持ち合わせた者と、そうでない者とを見分けることも、記者にとっては重要な仕事となる。

 前者の代表的な選手が、競泳では北島康介(日本コカ・コーラ)だろう。舞台が大きくなればなるほど、抜群の集中力を発揮する。「必ず成し遂げる」という雰囲気を持ち、勝利の女神を引き寄せる、本能的な強さを感じさせる。北島はアテネ五輪で男子平泳ぎの2冠を獲得した。北京五輪でも、その偉業を再現する可能性は十分ある。

【写真】2月23日の日本短水路選手権男子100メートル平泳ぎで57秒89の短水路日本新記録をマークした北島康介=東京辰巳国際水泳場

正田 裕生(しょうだ・ひろき)1965年生まれ。埼玉県出身。千葉支局、水戸支局などを経て99年から運動部。水泳、五輪、国体などを担当。



2008年04月02日

平山、2度目の五輪へ道険し 輝き取り戻せるか  

BS-0001__-200802180816_M.jpeg 「やはり」と言うか「とうとう」と言うか。北京五輪を控えたサッカーのU―23(23歳以下)日本代表から、FW平山相太(FC東京)が落選した。3月21日に発表されたメンバーに彼の名はなかった。記者会見で反町監督に理由を聞くと「一皮も二皮もむけた選手が出てきた中で、相太は一皮むけていない」という答えが返ってきた。要は、指揮官にとって平山の成長が物足りないということだ。

 これまで、平山ほどチームへの貢献度が大きかった選手はいない。この年代では「顔」と言える存在だった。だが「実力社会」(反町監督)の中で、過去の実績だけでは生き残れない。五輪前に呼び戻されるためには、Jリーグで活躍するしか方法はない。その道は険しい。

 取材を通して、どうしても肩入れしたくなってしまう選手が出てくる。あるいは、その逆もいる。平山は前者だ。理由は簡単。最初に見た時のインパクトが強烈だったからだ。彼のプレーを初めて目にしたのは、2003年にアラブ首長国連邦(UAE)で行われた世界ユース選手権(現U―20ワールドカップ)だった。

 当時高校3年生の平山は、アフリカ王者のエジプトから決勝ゴールを奪うなど、世界の舞台で堂々と渡り合って、日本の8強入りに貢献した。高い打点のヘディングや安定したポストプレー、正確なシュート、何よりワンタッチでボールを自在にコントロールできる長身FWのセンスに驚いた。「こんなFWが日本にも出てきたか」と、頼もしく感じたのを記憶している。この時の鮮烈な印象が、どうしても頭から離れない。

 直後の全国高校選手権では、長崎・国見高のエースとして9ゴールを挙げる大車輪の活躍で優勝。その雄姿を覚えているファンも多いだろう。一躍脚光を浴び、04年アテネ五輪に出場することになったが、今は2度目の五輪出場が怪しくなってきている。昨年の北京五輪アジア最終予選の終盤は出番を失い、FC東京では今季もレギュラー獲得に至っていない。

 伸び悩みの理由を、簡単には説明できない。ただ、2月の米国遠征で「自分も変わらないといけない」と繰り返していた平山に、危機感が芽生えているのは事実だ。「大器」と言われた大型FWが輝きを取り戻せるか。現在のU―23日本代表に絶対的なエースはいない。反町監督は「がむしゃらになって、再び(代表に)呼ばれる状態になってほしい」とも話し、完全に平山を見限ったわけではないことを強調している。

 できれば、最終登録メンバー発表の時に「平山、五輪メンバー落ち」という原稿は書きたくない。03年のUAEでは「平山が決勝点、日本が2大会ぶりの決勝トーナメントへ」という記事を書いた。威勢のいい原稿を、北京五輪でも書けるといいのだが…。

【写真】U―23日本代表が今年2月に米国遠征、チバスUSAとの練習試合で先制ゴールを決める平山=カーソン(共同) 

山室 義高(やまむろ・よしたか)1975年生まれ。神奈川県横浜市出身。名古屋、大阪両支社を経て05年12月から東京運動部。主にサッカー担当でJリーグや02年、06年ワールドカップ(W杯)などを取材。