「筋書きのないドラマ」は健在! 甲子園、装い変わっても
改修工事が一段落して内野席が新しくなった甲子園球場。テレビ中継でおなじみの試合後のインタビューも、場所が移った。昨年までは、一塁側バックネット横から地下通路の坂を上って引き揚げてきたチームが、一、三塁側に分かれて、監督と活躍した選手がお立ち台に上がっていた。
今年からは、両チームとも地下通路を出ると、一塁側へ移動し、奥が勝者、手前が敗者と分かれる。お立ち台に立つ選手以外は、通路に面した部屋に入って取材を受ける。勝者と敗者で、部屋も分かれている。1階通路の天井は以前より低くなった。ダルビッシュ(東北高―日本ハム)のように190㌢以上の選手がお立ち台に立ったら、頭が天井に当たってしまうのではと、心配してしまうほどである。
地下通路は改修工事の際に、なくすか、場所を移すことが検討されたが、そのまま残すことにしたという。揚塩健治球場長に理由を尋ねると「松井(星稜高―巨人―ヤンキース)も松坂(横浜高―西武―レッドソックス)も通ってきた所。勝ち負け、それぞれの球児の思いが詰まっている場所だから、残そうと思いました」。
ネット裏の記者席はスタンド上部に移った。昨年まで記者席の最上段だった辺りが、リニューアル後は一番下の部分になった。グラウンドまでの距離は遠くなったが、球場全体の雰囲気は、今の方が把握できるような感じがする。
球場の雰囲気が変わっても、高校野球の「筋書きのないドラマ」は変わることがない。80回目を迎えた選抜大会の2日目に、そのことを痛感した。昨秋の公式戦11試合でチーム本塁打わずか1本の下関商(山口)が、土壇場の九回に2本塁打を放って履正社(大阪)に追いつき、延長戦に持ち込んだ。しかし、延長十回に中堅手のまさかの落球でサヨナラ負けを喫してしまう。
履正社の三村投手が完封することを想定して記事を考えていた。後輩の記者に取材、記事内容の指示を出した直後、1本目の本塁打が飛び出した。「完封はなくなったから、少し記事のトーンは変えなければ」と思案していたら、2本目の本塁打が生まれた。同点になり、流れは完全に下関商にある。頭を切り替え、下関商が勝った場合の出稿メニューを考え始めていたら、サヨナラエラーで試合が終わってしまった。「あの奇跡的な2本塁打がなかったら、彼の失策で試合が終わることもなかったのに」とも思った。皮肉なことに、昨秋の公式戦でチーム唯一の本塁打を放ったのが彼だった。
【写真】間一髪 セーフ! 甲子園のグラウンドではスリリングで思いもよらないシーンが繰り広げられる =3月22日の東北―北大津戦から
榎本 一生(えのもと・かずき)1969年横浜生まれ、92年入社。プロ野球担当、大相撲担当などを経て昨年から高校野球担当。取材で最も印象に残っているのは1994年夏の甲子園佐賀商の優勝。
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