正常化はこれから 「中東の笛」は根深い問題
「中東の笛」と呼ばれる、中東寄りの疑惑の判定が問題となったハンドボールの北京五輪アジア予選をめぐる「狂騒曲」が一息ついた。激動の1カ月半だったが、正常化への戦いは始まったばかりだ。
そもそもアジアで10年以上にわたって放置されてきた「中東の笛」がなぜ、急に国際問題に発展したのか。直接の要因は、韓国が国際ハンドボール連盟(IHF)の全加盟国に不正判定の証拠を集めたDVDを配布し、日韓で共同戦線を張った抗議にある。
見逃せないのは、カメラや映像撮影が禁止された昨年8月の女子予選(カザフスタン)でIHFから派遣を予定された女性のグリーン理事(スウェーデン)とノルウェーの審判員が入国を拒否されたという事実だ。女子も、近年はアジア・ハンドボール連盟(AHF)と太いパイプを持つカザフスタンを中心に「中東の笛」が広がっていた。昨年12月のIHF理事会でウィニタナ副会長(ニュージーランド)が男女アジア予選やり直しの緊急動議を出し、グリーン理事も強く同調したそうだ。
騒動の発端は、AHFで実権を握るクウェートが「中東の笛」を問題視された地元開催の1995年アトランタ五輪予選以来、12年ぶりに男子予選(昨年9月・豊田市)に出場してきたことにある。関係者は「東欧圏の監督を雇って競技力を上げ、露骨な試合操作がなくても日韓に勝てる、と踏んだのではないか」と語る。
問題の深さは、IHFとAHFの対立の根底に権力抗争があることだ。2000年のIHF会長選で予想を覆して当選したムスタファ氏はエジプト出身。後方支援として、アジアとアフリカの組織票を集めたのがAHFのアハマド会長(クウェート)といわれる。
今回、IHFが決めた予選やり直しは、アジアの内部対立を利用し、事実上のアラブ支配から脱却を狙う欧州勢が巻き返しに出たとの見方も強い。来年の会長選で欧州寄りに寝返ったとされるムスタファ氏が仮に失脚し、再びAHFの息のかかった新会長が誕生すれば、事態はもっと混迷を深める。
近年の中東勢はハンドボール以外でもアジア連盟の要職に次々と就き、国際舞台で発言権を強めている。フェアな判定を求めた日韓の訴えが「代理戦争の駒」にされないか、注視していきたい。
【写真説明】(上)AHFの臨時理事会に臨むアハマド会長(左)と日本協会の渡辺佳英会長=1月27日、クウェート市(共同) (下)ハンドボールの北京五輪予選やり直しについて、記者会見するIHFのムスタファ会長=1月27日、リレハンメル(共同)
田村 崇仁(たむら・たかひと)1973年生まれ。群馬県出身。02年W杯まで主にサッカー担当。プロ野球担当を経て、05年から日本オリンピック委員会(JOC)や五輪競技などを担当。
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