浦和善戦でも大きかった力の差 クラブW杯、経験を日本の力に
善戦だったのか、完敗だったのか。サッカーのクラブワールドカップ(W杯)準決勝の浦和―ACミラン(13日)は、評価の分かれる試合だった。Jリーグの強豪クラブとイタリアの名門が国際サッカー連盟(FIFA)の公式大会を舞台に繰り広げた真剣勝負。0-1というスコアを見ればアジア王者の大健闘と言えるが、やはり記者席から見た印象では実力差は歴然だったように思う。決して絶望したのではなく、冷静にそう思った。坪井は「うまくしのいでいる時間もあったが、やっぱり最後は崩された」と振り返り、相馬は「一から出直しです」とショックを受けたようだ。誰よりも選手自身が、力の差を認識していた。
浦和はチャンスもつくったが、ゴールの予感が漂うことはなかった。頼みのワシントンは、ネスタらに完封され、中盤からのパスもことごとくカットされた。後半23分にはカカにドリブル突破を許し、フリーのセードルフに決勝ゴールを挙げられた。敵将のアンチェロッティ監督は「期待していた通りの試合だった」と余裕たっぷりに総括。終盤には浦和の足が止まったことも残念だった。オジェック監督は奇策を練ることなく普段通りの浦和のサッカーを展開したが、ミランの守備陣を慌てさせる場面がなかったのが悔しい。浦和はJリーグでも、アジアでも、このサッカーで勝ってきた。だが、欧州の横綱に、がっぷり四つの正攻法で挑んでも勝ち目はなかったようだ。世界のトップにひと泡吹かせるのは並大抵のことではない。
この試合を見て、病床に伏す日本代表のオシム前監督は何を思っただろうか。そのことが、やけに気になった。浦和の健闘を喜びつつも、もしかしたら「こういう相手に、こういう試合をしたら、当然こういう結果になる」と手厳しいコメントをしたかもしれない。日本が世界トップレベルのチームに、どうやったら勝てるのか。その難題に挑んだ老将の答えは「日本代表の日本化」、つまり日本にしかできないサッカーの確立だった。リスクを恐れず、圧倒的な運動量に裏打ちされた連動性と、判断・発想のスピードを選手に求め、体格や個人の技量で世界レベルに劣る日本の活路を見出そうとした。
例えばオシム監督が率いていた千葉だったら、ACミラン相手にどんなサッカーをしただろうか。もちろん勝っていたとは思わないし、浦和より大量失点で大敗した可能性も大きい。けれど、あのサッカーの方がACミランの守備陣を慌てさせる場面はあったのではないか。そんな不毛な想像もしながら、オシム監督の言わんとすることがあらためて分かったような気がした。一方で、日本にもカカがいたらとバロンドールとFIFA年間最優秀選手をダブル受賞した才能の存在をうらやんだりもしたが…。
オシム監督は11月16日、急性脳梗塞に倒れた。幸い順調に回復している様子で一安心だが、もう日本代表の指揮はできない。前回の本欄で紹介した問答をもう聞けないのが残念でならないし、何よりもオシム監督自身がどれだけ無念だったかを思うと本当につらい。だが、時間は待ってくれない。そのバトンは岡田武史新監督に受け継がれることになった。クラブW杯で世界を体感し、立派に3位となった浦和勢は、岡田ジャパンでも主力となっていくはずだ。今回の得難い経験は、きっと浦和だけでなく日本にとっても大きな財産になる。
岡田監督は「2010年のW杯で世界を驚かすようなチームを作っていきたい」と意欲を燃やしている。3年後の晴れ舞台で、世界の強豪国を慌てさせ、ひと泡吹かせるサッカーができるかどうか。1998年W杯は3戦全敗に終わった日本人指導者の手で、この野望を達成できたら、これほど痛快なことはない。闘病中のオシム監督も、きっとそのことを強く願っているはずだ。
【写真】浦和―ACミラン 後半、浦和の阿部(左)と鈴木(右)をかわし、攻め込むACミラン・カカ=日産スタジアム
山室 義高(やまむろ・よしたか)1975年生まれ。神奈川県横浜市出身。名古屋、大阪両支社を経て05年12月から東京運動部。主にサッカー担当でJリーグや02年、06年ワールドカップ(W杯)などを取材。
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