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スポーツリレーコラム

2007年11月28日

表彰選手の選考方法改正を 疑問を感じさせる現行方式  

BS-0139__-200711202116_M.jpeg プロ野球コンベンションが20日、福岡市内のホテルで開催され、華やかな雰囲気の中、今季の最優秀選手(MVP)や最優秀新人(新人王)、そしてベストナインが発表された。各受賞者の活躍ぶりには素直に拍手を送りたい。しかし、選考過程に関しては、少し見直してもいいのではないかと感じている。

▽記者投票での疑問点

 MVPや新人王、ベストナインは記者投票で選ばれる。全国の新聞、通信、放送各社の経験5年以上のプロ野球担当記者が記名投票し、MVPは3名連記で1位票5点、2位票3点、3位票1点が加算され、その合計点で争われる。新人王とベストナインは、単純に得票数の多さで競われる。

 投票結果はセ、パ両リーグから発表され、受賞者のほか、1票でも獲得していれば、その選手名と得票数も公表される。毎年のようにプレスリリースを見ながら感じることだが、「あれ、なんで?」「どうしてこの選手?」など、疑問に感じる名前が数名ほど見受けられる。シーズンの成績や印象度が劣っている選手に対する投票には首をかしげてしまう。

 「MVPは優勝チームから選ばれるべきだ」。「いやいや、チームが優勝できなくても、三冠王などの成績優秀者を選ぶべきだ」。投票基準が記者の主観で分かれる部分があるのは理解できる。だが、明らかに価値観の違いではなく、奇をてらったとか、ひいきの選手を書いたとしか思えないものもある。名前を書かれた選手本人は、どう感じるだろう。喜びよりも、「こんな成績なのに…」という複雑な気持ちの方が大きいに違いない。

▽新方式の検討を要望

 米大リーグではMVPと新人王は全米野球記者協会による投票で選出されるが、打撃部門のベストナインにあたる「シルバースラッガー賞」、そして守備部門のベストナインに相当する「ゴールドグラブ賞」は各球団の監督、コーチの投票で決められている。

 「メジャー方式」に追随すべきだというつもりはないが、日本でもベストナインと、守備の名手に送られる「ゴールデングラブ賞」については各球団の監督、コーチの投票で決めてはどうだろう。 加えて規定打席数や規定投球回数を達成した選手にも投票権を与える。集計作業などの大変さはあるが、他のチームの監督や選手の評価で決まったとなれば、受賞者の受け止め方も違うだろう。

 さらに外野手部門の区別を図っても面白いと思う。左翼手、中堅手、右翼手では、守備面での役割が違うのは明らかだ。先発、中継ぎ、抑えという分業制が進んだ投手部門も、オールスターのファン投票のように「抑え」と「中継ぎ」部門を新設する。過去の受賞投手を見れば、やはり先発投手ばかり。救援陣にとってはタイトルとは別の意味の励みになると思う。

 ベストナインの表彰の始まりは1940年までさかのぼる。長い歴史の重みは理解できるし、自分たちが投票できなくなる寂しさもあるが、現行制度を見直せば、今までとは違った楽しみ方が生まれてくるに違いない。

【写真】今年の最優秀選手に選出され、授賞式で記念写真に納まる巨人の小笠原道大内野手(左)と日本ハムのダルビッシュ有投手。中央は日本代表の星野仙一監督=11月20日夜、福岡市内のホテル

松岡 登(まつおか・のぼる)1966年生まれ。広島県出身。98年からプロ野球担当となり、中日、阪神、ヤクルトなどを取材。05年からはコミッショナー事務局やセ、パ両リーグなどを中心に取材。



2007年11月21日

本当にただの偶然です! 関東学院大ラグビー部事件と私  

BS-0145__-200711092134_M.jpeg 春口広監督の憔悴しきった表情を見て「こんなことがあるもんだなぁ」と思った。大学日本一6度の強豪、関東学院大のラグビー部員が大麻取締法違反の現行犯で逮捕されたのだ。ちなみに「こんなことが―」とはこんな重大な事件が起きてしまった、という意味だけではない。自身に降りかかった偶然に驚いてもいたのだ。

 関東大学リーグ戦グループは勝ち点で順位を決めており、勝ち4点、負け1点、棄権は0点となっている。勝ち点が並べば当該チームの対戦での勝者が上位となる。

 11月4日に関東学院大は開幕6連勝、2位の東海大は5勝1敗となった。両校とも24日にそれぞれ別の相手と最終戦を残しているが、関東学院大が敗れて東海大が勝って6勝1敗で並んでも、既に直接対決で勝っている関東学院大が上位になる。というわけで、現場では関東学院大フィフティーンが優勝決定だと歓喜の声を挙げていた。

 ここで気が付いた。勝ち点では関東学院大が24で東海大が21。最終戦を東海大が勝って25とし、関東学院大が何らかの理由で棄権すれば24のままだ。東海大が逆転するではないか。

 関東ラグビー協会に電話で確認する。「関東学院の優勝は決まったんですか?」「ハイ決まりました」。そこで前述の状況を説明すると「確かに…東海が逆転しますね」「優勝は決まってないのでは」「そう言われると、そうですね」

 しかし現場では優勝ムード一色で、春口監督の優勝会見が行われた。他社の記者に訴えたが「棄権なんて現実的にはあり得ない。優勝決定で書くよ」と一蹴されてしまった。厳密に言えばこちらの理屈が合っているのだが、多勢に無勢。確かに棄権なんてありえないだろうが…。共同通信は苦肉の策として「関東学院大の3連覇が確定」との見出しを打ち、本文では「優勝が事実上決まった」とし、「ただし関東学院大が最終戦を棄権した場合は規定で東海大が上回る」との注釈をつけた。

 まさか、その4日後に忌まわしい事件が発覚するとは…。記者会見場で他社の記者から次々と、「戸田さんが変なこと書くから、その通りになっちゃったじゃないですか」と突っ込まれた。「あいつ、知ってたんじゃねえか」と言っている人もいたとか。インターネットの掲示板を覗くと僕が書いた原稿が引用され、注釈部分が注目を浴びていた。「マスコミは事件を知っていたのでは」「今回の事件を予言していたようだ」との書き込みが続々とあった。

 本当にただの偶然なんだって。最近はだいぶ沈静化したが、スレッドが伸びるにしたがって、そう画面上に言い聞かせている。

【写真】関東学院大ラグビー部員2人の逮捕を受け、記者会見で頭を下げる春口広監督

戸田 康文(とだ・やすふみ)1971年横浜市生まれ。神奈川・桜丘高―明大を経て入社し大阪、福岡支社を経由して01年12月から本社勤務。担当はボクシングのほかアマチュア野球、ラグビーなど。



2007年11月14日

「ハニカミ王子」人気の秘密とは 垣間見せるスターの素質  

BS-0060__-200707031300_M.jpeg 4日間競技の序盤。平日、朝もまだ早いのに、最終日最終組かと見まがう数のギャラリーがいる。「ハニカミ王子」石川遼の人気は今も続いている。大半は中高年。女性が目立つ。「どこに飛んだ?」「こっち来るよ」「笑ってる」「かわいい」。そんなささやきの中で主役は真剣に、楽しげにクラブを振る。

 ドライバーショットの飛距離は300ヤード以上。5月のツアー初優勝で見せたような、絶妙な寄せも時折。今季、6度のプロツアー参戦で予選通過は4度。16歳としてはかなり上手いのだろう。ただ「天才少年」と呼ばれた選手は過去にもいた。正直なところ、石川がどれほどの素材なのか、わたしには分からない。

 それでも、石川にはスターの素質があると思う。プロの大会に出れば毎日、テレビや新聞・雑誌の記者会見に応じる。そこでの立ち振る舞いに感心させられるのだ。

 にこりと、まさにはにかんだような笑顔で着席。返答は質問者の方を向いて。多少、長くなっても嫌な顔は見せない。笑わせようとか気の利いたことを言おうとか、無理はしない。幼さゆえの、「聞いたら怒る人がいるんじゃないか」とハラハラするような返答もない。かといって、通り一遍の言葉ばかりではない。並べて書くと簡単だが、これを貫く16歳はまれだ。高校生1年生だったころ、大勢のよく知らない大人を前にマイクを持って、舞い上がらずに話せましたか?

 ワイドショーで連日、取り上げられていた初夏。ゴルフコースにはマナーを守らないギャラリーが殺到していた。「普通に電車通学できるの?」と聞いた。「そういえば、困るようなことはないですね。朝はみなさん忙しいから、僕に構っている時間なんてないんじゃないですか」。予選落ちした6月の日本アマチュア選手権では「泣きそうな気分。会見をやめてもらおうかと思ったんですが、なかなか泣けないんですよ。でも今、励まされたらやばいです。僕を泣かさないで下さいね」。

 いろいろな有名選手を取材する機会がある。話すことが嫌いな人はいくらでもいる。「しっかり対応しなさい」と周囲が諭したって、嫌いなものを急に好きにはならない。ぶっきらぼうさが魅力になる場合だってあるが、それは少数派だから。皆がそうでは、ただの「感じの悪い集団」になる。ファンを呼んで稼ぎたいなら、コミュニケーションの力は才能だ。石川とラウンドした中嶋常幸が感嘆していた。「何がって、受け答えが素晴らしい。言葉とは知性。かしこまってはいないが、すがすがしい。応援しちゃう」

 ゴルファーだからもちろん、ゴルフの実力がまず必要。ただ、それだけでは競技の枠を越えたスターにはなれない。石川なら…。そう思わせるものがあるから、たぶん人気は続いている。


【写真】大勢のギャラリーを引き連れラウンドする石川遼(手前中央)

山田亮平(やまだ・りょうへい)1998年入社。大阪、名古屋支社で近鉄や中日などプロ野球球団を中心に取材。2005年から柔道、サッカーなどを担当し2007年からゴルフが中心。1974年生まれ。



2007年11月08日

投手の“謝罪”に違和感 死球後の振る舞いに感じる日米の違い  

BS-0021__-200704231003_M.jpeg ぶつける。何とも思っていないことを示すために2、3歩前に出る。ただしケンカを売るわけではないので、打者と目は合わせない。表情を変えずに捕手からの返球を受ける。これで終わり。死球を与えた投手の正しい振る舞い方だ。もちろん米国流の。

 帽子を取って一礼。あるいは軽く右手を挙げて申し訳なさが伝わる程度に顔をしかめる。これが日本流。試合中にフィールド上で相手に謝るという世界的に見て珍しい行為だろう。

 謝るなんてとんでもない。5年米国で過ごすと、そう思える。ぶつけたことに対する罰は打者が一塁に生きることで、すでに受けている。1点リードの八回二死満塁で、同点の押し出し死球。こんなとき投手はやはり謝るのだろうか。二回無死で謝っているのなら、謝らなければならない。人を傷つけたことをわびるなら、試合の流れで謝ったり謝らなかったりでは済まされないからだ。

 ぶつけられる側に意見を聞いてみた。日本で39。米国で12。厳しい内角攻めは数知れず。試合出場が危ぶまれる死球もあった。「考えてみれば確かに(謝るのは)おかしい。押し出し死球か…。どうだったかなあ。人によって違った気がする」。大リーグで5シーズンを過ごした松井秀喜選手もやはり謝罪に違和感を感じるようになったという。

 上下関係に厳格な狭い世界で、後輩が先輩に球をぶつけたら、どうだろう。おそらく謝ってしまう。初期の日本野球は大学を中心に発展した。限られた強豪校から知ったような顔が集まり、6校のリーグ戦を年2度ずつ4年間続ける。ライバルとはいえ、同志的なつながりも生まれる。伝統と規律を重んじるそんなリーグで死球を出したら、謝るしかない。そういうところで野球に打ち込んだ人が、日本にこのスポーツを広めてきた。スポーツとして理が通るか否かでなく、日本の場合、死球の後の謝罪は必然だろう。

 ウエストサイドのハドソン川沿いにあるフィールドで10―12歳クラスのリトルリーグを見た。2番手投手がいきなり打者の頭にぶつけた。硬球がヘルメットを直撃する音に、身が縮む。打者が立ち上がって歩き始めた。投手は3歩出て捕手の返球を受ける。表情は変わらない。相手ベンチからもコーチからも何も反応がない。アメリカだな、と思いながら、心の中で謝った。「ごめんなさい。ぶつけたの、うちの息子です」。

【写真】4月22日のヤンキース戦の1回、ヤンキースのロドリゲス(手前)に死球を与え帽子を取るレッドソックスの松坂

神田 洋(かんだ・ひろし)1966年生まれ。東京都出身。高松支局、アマチュア野球担当を経て、95年からプロ野球担当。2003年、松井秀とともに渡米、ニューヨーク支局でヤンキースを中心に大リーグを取材。