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スポーツリレーコラム

2007年10月17日

メディア側にも反省が必要 日本勢惨敗の世界陸上  

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日本勢が予想外と言える不振に終わった夏の世界陸上選手権(大阪)。閉幕から1カ月以上がたった今、報道に携わった立場で、その責任の一端を感じている。

 1991年東京大会に続く16年ぶりの国内開催。陸上人気を飛躍的に伸ばす絶好機と考えて、2年前のヘルシンキ大会で男子四百メートル障害銅メダルを獲得した為末大(APF)らが積極的にメディアに露出を繰り返した。
 男子棒高跳びの沢野大地(ニシ・スポーツ)、同走り高跳びの醍醐直幸(富士通)、女子走り幅跳びの池田久美子(スズキ)らも「メダル獲得」を目標として掲げ、競技場での応援を呼び掛けてきた。だが為末、沢野、醍醐、池田は決勝進出すら逃した。結果的には惨敗と言わざるをえない。
 ここで選手の実力不足と言うのは簡単。だが、選手の威勢のいいコメントを、そのまま伝え、周囲の期待感をあおるだけあおった、われわれメディアの姿勢にも反省が必要な気がする。

 日本の陸上界は近年になく充実し、世界レベルに並ぶような自己最高記録(日本記録)を持つ選手も増えていた。だが今季の成績に限って言えば、世界選手権前の為末らは自己記録に遠く及ばない水準で苦しんでいた。われわれがここに目を向け、事前の盛り上がりに水をさすのも覚悟の上で「現状でメダル獲得は厳しい。もっと冷静な目標設定を」とブレーキをかけることができたなら結果はまた違ったのではないか。

 思うように状態が上がらない中、為末は「自分では結果が見えてしまっているのにメダルを取る、と言い続けないといけないことが苦しかった」と振り返った。
 「7メートルを跳んでメダル」と言い続けた池田も「7メートルを跳ばないと、許してもらえない、と思うようになってしまった。最後は7メートルが厄介な言葉に感じた」と膨らんだ期待に自らを見失ったことを反省している。
 91年東京大会の男子四百メートルで決勝進出を果たした高野進・日本陸連強化委員長が「あのころは今より大会前の注目度は低かったから…」。それほどの重圧を感じることなく、競技に集中できたことがプラスに働いた面もあったようだ。

 メディアは、選手が最高のパフォーマンスをした場合を想定して、結果を期待しがちなところがある。実力を考えれば、結果的にそれを裏切る可能性のほうが高いのに、周囲の落胆はより大きくなる。こうした状況は選手にとっても酷な気がする。

 北京五輪開幕まで1年を既に切った。これからも「メダル期待の選手」中心の報道が続き、選手自身も期待にこたえようと「メダルを取りたい」と歯切れよくコメントするだろう。だが実力とそのときの現状をきちんと分析し、状況によっては軌道修正を勧めるような冷静さを、今度は持ちたい。

【写真】世界陸上男子400メートル障害1次予選で敗退し、ゴール後に肩を落とす為末大=8月25日、長居陸上競技場

宮田 宏(みやた・ひろし)1970年生まれ。栃木県出身。93年入社。名古屋、大阪でプロ野球などを取材し、97年末から本社運動部。現在は主に陸上を担当。



2007年10月10日

「中東の笛」はまだ続く? 拡大するアラブの政治支配  

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 「中東の笛」と呼ばれる不可解な判定がアジアのハンドボール界で問題になって久しい。9月の北京五輪男子アジア予選(愛知県豊田市)ではクウェート―韓国の試合でヨルダンの審判員が中東びいきとみられる判定を繰り返し、在韓クウェート大使館前で判定に抗議するデモに発展した。

 サッカー界では八百長問題がイタリアを揺るがしたばかりだが、競技の特性で足と手の違いがあるとはいえ、問題の本質に迫る対応はどうも生ぬるい。アジア・ハンドボール連盟(AHF)はクウェートの王族が事実上支配し、トップに座るのはアジア・オリンピック評議会(OCA)会長でもあるシェイク・アーマド氏。アジア・スポーツ界で広がるアラブの政治支配が背景にある。

 ▽すべてシナリオ?
 世界陸上(大阪)の直後、取材で訪れたアジア予選の会場はAHFのブレザーを着た中東の幹部ばかりで「ここは日本?」と驚いた。「すべて勝敗は事前に仕組まれ、大会のシナリオができているんだ」。同じ中東出身ながら現状を疑問視するAHF関係者の一人が打ち明けた。真偽のほどは定かでないが、確かにAHFで今や東アジアの発言権はなく、審判員を選択する技術委員会などで飛び交う言語もアラビア語という。アジア予選の審判員は6カ国のうち中東4カ国で東アジアからゼロだった構成も公平さに欠け、サッカー界では考えられないことだ。

 「特に最近の韓国つぶしは露骨。実力ナンバーワンだから」と日本協会関係者は語る。昨年12月のドーハ・アジア大会では男子準決勝で6連覇を狙った韓国が地元のカタールに28―40で敗れ、韓国オリンピック委員会(KOC)がクウェート審判員による不公正判定があったとして再試合を要求する騒動もあった。

 日本にしても20年ぶりとなる五輪の夢をかけた今回のアジア予選で熱烈な応援はあったものの、約1億円を投じた地元開催の利などなかったに等しい。最重視したクウェート戦で国際ハンドボール連盟(IHF)を通じて中立の欧州から招いたドイツの審判員を要望したが、これをAHFが却下。笛を吹いたのはイランの審判員ペアだった。日本の蒲生晴明団長は「何のためにわざわざ招いたのか」と疲れ切った表情で悔しがったが、舞台裏での駆け引きに始まり、こうした「対外発信」の課題は日本が抱えるスポーツ政治力の弱さを象徴する出来事だった。

 ▽柔道もクウェート
 世界への影響力が懸念される柔道界でも中東の勢力が増している。欧州連盟は5月のアジア連盟の会長選挙でクウェート人のオバイド・アンジ氏を支援し、日本から立候補した佐藤宣践・全日本連盟副会長は敗れた。

 国際柔道連盟(IJF)の新会長に就任したマリアス・ビゼール氏(オーストリア)は対立した朴容晟前会長(韓国)を支持した日本に厳しい姿勢を取り、朴氏の後継者と目された山下泰裕をも敵対視した経緯があるという。「競技力の東アジア、政治力の西アジア」という一見不自然な構図で語られたのも今は昔。オイルマネーがもたらす豊富な資金力をバックに西アジアは競技力の躍進も著しい。ハンドボールの日本リーグ男子の某監督は北京五輪への道を断たれた今回のアジア予選で「中東の笛」に泣かされたとされる大方の見方について「選手が“中東の笛”を警戒しすぎ、あれだけ無防備でシュートを打たれたら負ける。欧州スタイルのクウェートが実力でも執念でも上だった」と異論を唱えた。日本と韓国は「中東の笛」の問題をIHFに提訴する構えだが、いずれにしても日本はさらに競技力を高め、IHF内でも発言力を持つしかない。かつてこうした問題を乗り越え、改革を重ねて国際的な立場をつかんだサッカーが手本だろう。

 東京都が立候補した2016年夏季五輪招致でも、潤沢な資金力でスポーツ立国を目指すドーハ(カタール)は微妙な存在だ。日本側は「全く問題ない」(日本オリンピック委員会幹部)と妙に楽観しているが、中東の小国が強い結束で動けばアジア代表として戦いたい東京とのつぶし合いになる可能性もある。

 先の世界陸上(大阪)でも有力代理人や多数の国際オリンピック委員会(IOC)委員が訪れ、日によって空席の目立った観客動員や運営上のトラブルに日本での五輪開催を疑問視する声を聞いた。「中東の笛」はハンドボールにとどまらず、さまざまな問題を暗示しているのではないか。

【写真】北京五輪男子アジア予選の日本―クウェート戦で審判員の中東寄りの判定に、「フェアプレー」を求める日本のファン=3日、豊田市総合体育館

田村 崇仁(たむら・たかひと)1973年生まれ。群馬県出身。02年W杯まで主にサッカー担当。プロ野球担当を経て、05年から日本オリンピック委員会(JOC)や五輪競技などを担当。



2007年10月03日

真の「日本一」追求を プロ野球クライマックスシリーズ  

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 プロ野球界はまもなく、クライマックスシリーズ(CS)が幕を開ける。セ、パ各リーグでレギュラーシーズンの上位3チームが日本シリーズの出場権をかけて戦う、新しい試みだ。

 基本的にはリーグ優勝チームを決めるためにパが昨季まで3年間採用したプレーオフの形式がとられる。2位と3位の両チームで争う第1ステージの勝者が、リーグ優勝チームと第2ステージを戦う。しかしCSと、昨年のパのプレーオフとは相違がある。優勝チームに第2ステージでのアドバンテージ(1勝)が与えられていないことだ。

 12球団でCS導入の議論を進めるにあたり、アドバンテージを採用するかどうかが一つの焦点だった。 パは、レギュラーシーズンとの関連性を持たせるためにアドバンテージの採用に積極的だった。しかし、レギュラーシーズンとCSは別イベントであり、アドバンテージを付けなくていいとするセと折り合いがつかず、結局、不具合が生じれば再検討することを条件にセの案が採用された格好だ。

 1950年に始まった日本シリーズは、セとパのリーグ優勝チーム同士で争われ、文字通り「日本一」を決める戦いの場だった。しかしCSは、リーグ3位チームが日本シリーズを制す可能性があり、歴史を築き上げてきた日本シリーズの価値軽減が危惧されている。
 
 パのプレーオフにアドバンテージがなかった2004と05年、それぞれリーグ2位から勝ち上がり、日本シリーズも制した西武とロッテの選手から「日本一になったという実感がない。素直に喜べない」などの声が漏れていた。レギュラーシーズンで1位になれなかったという劣等感が心のどこかに引っ掛かっているからだった。

 両リーグが足並みをそろえ、ファンに真剣勝負を見せられるCSを設けたことには賛成だ。とはいえ、2、3位チームが日本シリーズを制すとなると「なんちゃって日本一」という感はどうしてもぬぐい去れない。パが06年にアドバンテージをつけたのは、過去2年間の教訓があるからにほかならない。 だからこそ、リーグ優勝チームにはアドバンテージを与え、第1ステージから日本シリーズ出場をめざすリーグ2、3位チームは、その劣勢を乗り越えた時にこそレギュラーシーズンの劣等感が晴れ、なおかつ「日本一」という称号を得られるのではないだろうか。

 日本シリーズは、長いペナントレースを制した自信をぶつけ合い、数々の名勝負を生んできた。57年間、ファンとともにはぐくんできたプロ球界最大のイベントが持つブランド力を低下させてはならない。プロ野球人気を盛り上げる日本一決定戦であってほしい。

【写真】昨年、パ・リーグのプレーオフを制し、ナインに胴上げされる日本ハムのヒルマン監督=2006年10月12日、札幌ドーム

倉見 徹(くらみ・とおる)1970年生まれ。石川県珠洲市出身。96年からプロ野球を取材。近鉄、阪神、ダイエー、ロッテ、西武、巨人を担当。現在は球界全体をカバー。