変ぼうする"野球中心主義" 相次いで問題発生
by 榎本 一生
年明けに大阪へ転勤し、4カ月がすぎた。高校野球を任され、のんびりと単身赴任生活をおくる計画は幻と消え、西武の裏金事件に端を発した特待生問題でもう2カ月以上も振り回されている。これでもか、というぐらいに次々と問題が発生し、今後もさらに振り回され続けることになりそうな案配だ。
ここでは特待制度について論じるつもりはない。ただ間違いなく言えるのは、この国における野球の歴史、存在がほかの競技とはあまりにも違う次元にあるということだ。
▽甲子園は別格
例えば、高校では多くの競技が東京にある全国高校体育連盟に加盟しているのに対し、野球は日本高校野球連盟が統括団体として、東京ではなく大阪にある。高校総体が行われている同じ時期に、夏の甲子園大会があり、総体よりも多くの注目を集める。テレビは2週間連続で朝から晩まで生中継、新聞の扱いも総体と甲子園ではかなりの差がある。
幸か不幸か私は、そんな状況が当たり前と思って少年時代を過ごしていた。ナイター中継が試合途中で終了すると怒り、テレビドラマが30分遅れになることで憤っている人のことなど考えたこともなかった。
高野連が野球の独自性を主張する流れの中で、明治時代の「野球害毒論」なる言葉が注目を集めた。当時、既に人気スポーツだった野球を批判的に論じたのは、興味深いことに、全国中等学校野球大会(現在の夏の甲子園)を後に主催することになる朝日新聞だった。
今では番組名は変わったが、テレビ界にはかつて「プロ野球ニュース」があった。文字通りに受け取れば、プロ野球のニュースだけを報道するということになるのだが、野球ニュースの後にほかのスポーツも扱っていた。活字の世界でも同じような例がある。ベースボール・マガジン社は野球の関係だけ出版しているのではなく、サッカーをはじめ、さまざなな競技の雑誌、出版物も発行している。いずれも、スポーツ報道が野球中心に回ってきたことの表れなのだろう。
▽もがき続ける球界
しかし、世間や報道機関の〝野球中心主義〟は確実に変ぼうを遂げつつある。日本の子どもの数そのものが減り、反比例するように誰でも楽しめるスポーツが増えているのだから、競技人口が減少するスポーツが出てくるのは当然の流れだ。
とは言うものの、昨夏の甲子園、早実の斎藤佑樹投手の「ハンカチ王子」フィーバーのように、ちょっとしたきっかけで野球に興味のないと思われていた層の関心が全国的広がりを見せることもある。恥ずかしい話だが、昨夏の甲子園は現場にいながら、その後のフィーバーの予兆を感じ取ることはできなかった。自分たちを含めた報道の影響もあるのだろうが「ハンカチ王子」ブームは、野球の特異性を強烈に示す出来事ではあった。
日本の野球は高校、大学、社会人、プロ、さらには少年野球と、それぞれが独自に発展してきた歴史がある。今回の裏金や特待生のような問題が起きても、各団体が問題解決のために一つにまとまるのは不可能ではないかとも思う。スポーツ報道に携わる立場としては、野球界がもがき続ける姿を読者が理解できるように伝えることしかない、との思いを強くしている。
榎本 一生(えのもと・かずき)1969年生まれ、92年入社。プロ野球担当、大相撲担当などを経てことしから高校野球担当。取材で最も印象に残っているのは1994年夏の甲子園佐賀商の優勝。
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