陸上の世界選手権第4日は28日、大阪・長居陸上競技場で行われ、男子200メートル2次予選で2003年パリ大会銅メダルの末続慎吾(ミズノ)は3組6着の20秒70で、高平慎士(富士通)神山知也(作新学院大)とともに敗退した。100メートルとの2冠を狙うタイソン・ゲイ(米国)は順当に準決勝に進んだ。

女子棒高跳び決勝は女王エレーナ・イシンバエワ(ロシア)が4メートル80で2連覇。自己の持つ5メートル01の世界記録更新はならなかった。
男子3000メートル障害はアテネ五輪銀メダリストのブリミンキプロプ・キプルトが8分13秒82で優勝するなどケニア勢が5大会ぶりの1-3位独占。同400メートル障害はケロン・クレメント(米国)が47秒61で優勝した。
【写真】(右)男子200メートル2次予選 準決勝進出を逃し、ゴール後に悔しがる末続慎吾=長居陸上競技場 (左)女子棒高跳び決勝 4メートル80をクリアし、感極まった表情のエレーナ・イシンバエワ=長居陸上競技場(代表撮影)
クレメントが2年前の無念を乗り越え、男子400メートル障害で初優勝。「ハードルのことはあまり考えず、走るだけだった。世界チャンピオンになれてうれしい」と21歳の王者は声を弾ませた。
2005年3月、マイケル・ジョンソン(米国)が保持した400メートルの室内世界記録を塗り替えた。ヘルシンキ大会は準決勝で流しすぎたことが響き、決勝は188センチ、84キロの大柄な体に不利な1コース。大雨にもたたられ、ゴール直前で為末大(APF)に抜かれて4位に終わった。
苦い記憶を成功の糧にした。「決勝でいい順位をとるには準決勝が大事」と準決勝は3組1着を確保して決勝へ。思惑通りに4コースに入り、序盤から快調に飛ばした。9台目の障害で減速したが、走力にものを言わせて47秒61の今季最高で逃げ切った。
トリニダード・トバゴ生まれ。98年に米国に移住し、05年に市民権を得た。ハードリングが雑で、適性は400メートルにあると指摘する声もあるというが、自らがこだわる「本職」で世界の頂点に立った。
【写真】男子400メートル障害で優勝し、国旗を背に喜ぶ米国のケロン・クレメント=長居陸上競技場
優勝が確定すると、最後に控えた自らの跳躍をパスし、歓喜の表情でロシア国旗を掲げた。三段跳びとの2冠を狙うレベデワが、まずは走り幅跳びで1つ目の金メダルを手にした。
「風向きの変化と、暑さが状況を難しくしていた」と振り返る。だが2回目の跳躍で、早くも観衆を魅了した。奇抜なヘアスタイルでも話題のアテネ五輪女王が、今回は真っ赤に染め上げた自慢の髪をなびかせ、ピットを駆け抜ける。そして遠く、力強く舞い上がった。
この大会全選手を通じて初の7メートル台となる7メートル03でトップに立つと、3回目の跳躍でも同じ7メートル03をマーク。大ジャンプに沸き立つ観衆に向けて「もうちょっとだったわね」と、手ぶりでアピールする余裕も見せた。
前回ヘルシンキ大会はけがを理由に欠場。だが、その後のゴールデンリーグでは、その影響を感じさせない強さで6戦全勝、100万ドル(現在のレートで約1億1500万円)を独り占めし、物議をかもした。
あれから2年。「リベンジしたい」と臨んで手にしたタイトルにもかかわらず「走り幅跳びは一種のウオームアップ。わたしには三段跳びがもっと大事」。2大会ぶり3度目の優勝に向け、またも論議を呼びそうな言葉を繰り出した。
【写真】女子走り幅跳びで優勝したロシアのタチアナ・レベデワ=長居陸上競技場(代表撮影)
バーに体が触れた瞬間、悔しそうに悲鳴を上げ、一瞬だけ顔をしかめた。女子棒高跳びで2連覇を決め、自身の世界記録を1センチ上回る5メートル02に挑戦した最後の3回目。笑顔で手拍子を求めたイシンバエワは21度目の世界記録更新こそ成らなかったが、マットの上で宙返りし、投げキスして場内の大歓声に応えた。
5人が残った4メートル80は1回目にまさかの失敗。だが表情を引き締めた2回目は力強い助走からポールをしならせ、きれいな倒立姿勢で余裕を持ってクリアした。「2度目の金メダルは本当にうれしい」。跳躍の合間はタオルをかぶって寝そべり、精神を統一。「大阪の夜空を大好きなイルカのように美しい曲線を描いて跳びたい」と願っていた美しき「鳥人」の強さはやはり別格だった。
5メートル01の世界新で優勝した2年前の世界選手権後、孤高の女王は燃え尽き症候群に陥った。「心が空っぽになり、新しく自分を押し上げてくれる人が必要だった」。心機一転を期し、15歳の時に素質を見抜いて体操から棒高跳びに転向させた恩師の下を卒業。尊敬する「鳥人」セルゲイ・ブブカを指導したペトロフ・コーチに師事し、上半身の筋力アップで跳躍技術をパワフルで大きなスイング動作に改良した。
夢は世界記録を計35度更新したブブカの更新回数を超え、5メートル14の高さに挑むことだ。「男性と女性の差は1メートル。ブブカの世界記録とちょうど1メートル差の5メートル14は不可能でない数字よ」。屋外の世界記録は約2年足踏みが続くが、ブブカも「真のスター」と称賛する25歳は「今季の残り6試合で世界新に再挑戦したい」と限界を知らない。
【写真】女子棒高跳びで優勝し、笑顔で声援に応えるエレーナ・イシンバエワ=長居陸上競技場
陸上の第11回世界選手権第4日は28日、大阪市の長居陸上競技場で行われ、女子棒高跳び決勝でアテネ五輪金メダリストのエレーナ・イシンバエワ(ロシア)が4メートル80で大会2連覇を果たした。自己の持つ世界記録より1センチ高い5メートル02にも挑んだが、3回とも失敗し、記録更新はならなかった。
イシンバエワは4メートル65を1回でクリアし、次に臨んだ4メートル80を2回目の試技で成功。残っていた他の4選手がいずれも失敗したため、優勝が決まった。
【写真】女子棒高跳び決勝 4メートル80をクリアし、笑顔のエレーナ・イシンバエワ=長居陸上競技場
目を覆いたくなるような重い走りだった。男子200メートルで決勝進出が期待された末続が2次予選で姿を消した。
100メートルとの2冠を狙うゲイ(米国)と同走の3組。コーナーで加速し切れず、直線の伸びも欠いた。20秒70の6着。過去3度の世界選手権はすべて準決勝以上に進んだだけに、早過ぎる敗退だ。
ゴール後、トラックに4つんばいになったまましばらく動けず「分かっていたこと。全力は尽くした。期待に応えられず悔しい」。頭痛と背中などのけいれんを訴え、医務室で点滴を受けた。
日本チームの高野進監督によると、1次予選後も脱水症状のような症状で点滴を受けた。調整ミスが失速の原因だ。高野監督は「チームとして問題があったかもしれない。20秒70もかかるはずがない」と表情をこわばらせた。
【写真】男子200メートル2次予選 準決勝進出を逃し、ぼうぜんとする末続慎吾=長居陸上競技場
陸上の世界選手権第4日は28日、大阪・長居陸上競技場で行われ、男子200m1次予選で前々回大会の銅メダリスト末続慎吾(ミズノ)は3組2着の20秒47で、高平慎士(富士通)は1組1着の20秒83で、神山知也(作新学院大)は5組4着の20秒78で、そろって2次予選に進出した。100mとの2冠を狙うタイソン・ゲイ(米国)も通過。
男子400m予選3組に出場した期待の若手、金丸祐三(法大)は60m付近で左太もも裏側を痛め、途中棄権した。山口有希(大阪ガス)は6組6着の46秒28で落選。2連覇を狙うジェレミー・ウォリナー(米国)は2組1着の45秒10で順当に準決勝に進んだ。
女子ハンマー投げ予選の綾真澄(丸善工業)は62m68で落選した。
【写真】男子200メートル1次予選を突破した末続慎吾=長居陸上競技場
余裕の走りに活躍の期待 1次予選突破の末続
日本のエーススプリンターが、ホームに迎えた強豪たちに自らの存在感を再び示そうとしている。男子200mの末続は1次予選3組2着の20秒47で順当に2次予選へ進んだ。「最後まで残りたい。何とか食らい付いていきたい」と決勝進出への意欲をかき立てた。
前傾を保ってスムーズに加速し、直線に入るとトップに。その後は横を確認しながら、通過ラインの4着を着実に保とうとする余裕があった。
19秒台の選手との差は150m以降の走りにあると考え「もう一段階上のギアがほしい」と鍛え抜いてきた。7月の山梨での合宿では坂道ダッシュを繰り返し「最後に減速しないイメージができた」と好感触をつかみ、大会を迎えていた。
日本選手権でマークした20秒20は出場者中で今季6番目。世界のレベルは上がっており、2003年パリ大会銅メダルに続く表彰台はかなり厳しい。16年前の東京大会で男子400mの決勝に進んだ日本の高野進監督は「現実的な目標としてまずはファイナリスト(決勝進出)を狙う。決勝にさえ進めば、あとは何でも起こり得る」と話す。
末続は「どんな結果になっても素直に受け止められる。心の強さが今までと違う」。持ち前の野性味に?歳の落ち着きが加わり、軽快な走りに活躍の期待が膨らんできた。
あっという間に終わった。男子400m予選3組に出場した金丸は、スタートからわずか60m付近で左太もも裏側に異変を覚えると、そのまま脚を引きずり、100m手前で途中棄権となった。
衝撃に打ちのめされた表情。「コーナーを出たところで脚にピッときて、痛みが出た」。“悪夢”で涙にぬれる顔を両手で覆った。
前回大会には高校生で1600mリレーに出場。「右も左も分からず、漠然と走っていた」というが、その走りは、世界に通用する逸材として、確かな輝きを放っていた。
大学進学による生活の変化で、昨季はやや伸び悩んだが、今季は練習方法の改善などで、本来の走りを取り戻しつつあった。地元大阪出身のご当地選手として臨んだこの大会。「世界でどのぐらいの位置にいるのか、試したい」。意気込みは誰にも負けなかった。
だが、ここまで続く日本勢の大不振に引き込まれるかのような突然のアクシデント。為末、池田、室伏、そして金丸・・・。大阪大会の記憶に、またもつけ加えられた「悲劇」。それでも金丸は「いろいろな思いがあるけど、どん底の気分ではない。どんな時でもプラス思考に変わりはない」。敗北以前の敗北からでも、何かを見つける心構えを見せた。
【写真】男子400m1次予選 レース途中で左脚を痛めてリタイア、無念そうな表情の金丸祐三
将来性豊かな若きスプリンターが、厳しい現実を突きつけられた。女子100mで世界選手権にデビューした高橋萌木子(平成国際大)は、世界レベルの高さをまざまざと見せつけられた。
1次予選で全く勝負ができず、4組6着で敗退。スタート直後こそ鋭く出たが、あとはぐんぐん引き離していく選手たちの背中を見守るしかなかった。「世界の人は本当に速いなと思った」と言うのが精いっぱいの惨敗だった。
北京五輪に向けた期待の逸材であることは間違いない。18歳でまだ線は細いものの、身長169cmの恵まれた体が将来性を感じさせる。埼玉栄高(埼玉)でインターハイ史上初の女子100m3連覇を成し遂げ、平成国際大に進学した。
1年生ながら、6月の日本学生対校選手権で2連覇を狙った北風沙織(北翔大)に先着し、初優勝。勢いに乗るように世界選手権選考会の日本選手権では昨年の女王、信岡沙希重(ミズノ)も破り、日本女子短距離界のトップに駆け上がった。
世界選手権では海外の選手と比べ「自分の体を見て、まだまだ弱い」と痛感させられた。この冬には本格的に体作りに取り組むつもりだという。「今回のレースは意味があった」。世界への挑戦は、まだスタートラインに立ったばかりだ。
【写真】女子100m1次予選に出場した高橋萌木子
女子七種競技で世界歴代2位となる7032点をマークし、カロリナ・クリュフト(スウェーデン)が3連覇した。178cm、65kgの恵まれた体格。多くの種目で単独種目の日本記録に匹敵する力を備えている。
今大会では走り高跳びで1m95の自己新記録をマークした(日本記録は1m96)。最も得意とする走り幅跳びの自己最高は6m97で、今回も池田久美子(スズキ)の日本記録にあと1cmと迫る6m85を跳んだ。
砲丸投げ、やり投げはやや苦手だがスプリント力はあり、100m障害は13秒15、200mは23秒38を記録した。日本記録はそれぞれ13秒00、23秒33だから、いい勝負になる。
ジャッキー・ジョイナー・カーシー(米国)が1988年に7291点の世界記録を出した際、走り幅跳びは7m27を跳んだ。カーシーは走り幅跳び単独でも87年ローマ大会、91年東京大会で2連覇を達成した実力者。スプリント種目も100m障害が12秒69、200mは22秒56で、今の日本記録を大きく上回る。
七種競技の優勝者が「クイーン・オブ・アスリート」(陸上の女王)と呼ばれるゆえんである。
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