大阪で元気な姿見せる 優勝に最も近い室伏 

 16年ぶりに日本で開催される世界陸上選手権。1991年東京大会で金1、銀1のメダルを獲得した日本は、25日開幕の大阪大会に充実した布陣で臨む。期待の「日本代表」を紹介する。
BS-0276__-200708061602_M.jpeg 千葉・成田高2年生だった91年夏。東京・国立競技場のスタンドで興奮の連続だったホープは今夏、日本で最も金メダルに近い選手として長居陸上競技場のサークルに立つ。男子ハンマー投げの室伏広治(ミズノ)は「期待されているので元気な姿を見せたい」と、控えめな言い回しながら、初優勝への意欲をのぞかせた。
 中京大大学院での体育学博士号取得に向けた研究で多忙を極め、今季の出場は日本選手権だけ。8月に適当な試合がなかったため、米国で「試合より納得いく練習をすることが大事」と、調整に専念し大舞台を目指す。
 2004年アテネ五輪では金メダルに輝いたが、翌年の世界選手権ヘルシンキ大会は体調不十分で欠場した。肉体面の蓄積疲労は相当で、練習の方向性を変更。「筋肉以外の力もある。感覚を磨く。反復は練習ではない」と長時間の投げ込みや単純な筋力強化はやめた。バーベルにハンマーをつるした状態で上げ下げするトレーニングや投網などの、独自の方法を生み出してきた。
 成果は、昨年の海外を含む8戦8勝に表れた。「体の変化に合わせてやる。年齢がいってもできるようなことをつくっている」。父重信氏は41歳まで現役で奮闘した。その姿に32歳の自らを重ね、大阪で新境地を開く。(宮田)

 【写真】日本で最も金メダルに近い選手として期待される男子ハンマー投げの室伏広治=長居陸上競技場



真価問われる3度目挑戦 エチオピアで合宿の福士


 陸上日本女子の長距離エース、福士加代子(ワコール)にとって、この世界選手権は真価が問われる大会となる。
BS-0262__-200708071758_M.jpeg 日本選手権では五千、一万メートルで4年連続の2冠。特に五千メートルはスタートで転倒しながらも最後尾から追い上げて圧勝と、女王の強さをあらためて印象付けた。しかし、福士は「海外であのレースでは通用しない」ときっぱり言い放つ。
 国内で無敵を誇る一方、世界の壁にははね返され続けている。22歳で臨んだアテネ五輪は、故障もあってトップから2周遅れの26位と惨敗。過去2度出場した世界選手権でも11位が最高と思うような成績を残せていない。
 現状打破へ福士が選んだ道は、エチオピア合宿だった。前回ヘルシンキ大会で長距離2冠のティルネッシュ・ディババをはじめとする、世界最強軍団との高地練習では、無名の選手にさえ「こてんぱんにやられた」。レベルの違いを見せつけられた。
 だが、一方で「忘れかけていたものを取り戻した」ともいう。世界のトップの走りを肌で感じる中で「つま先で走るような」新しい感覚を取り入れるなど、走りへの新鮮な気持ちを思い出した。
 4月から3度にわたる合宿で強化しているのは「どんな展開にでも対応できるスピード」。一瞬のスパートで勝負を決める世界トップに何としても食らい付いていくつもりだ。(崇島)

 【写真】陸上日本女子長距離のエース、福士加代子=長居陸上競技場



 リスク承知で新走法も 三つ目のメダル狙う為末


 大舞台で底力を発揮できる強さの裏には、独自に築き上げた調整法と綿密な戦略がある。陸上男子四百メートル障害の為末大(APF)は「自分の経験をフルに使って、今回もピークを合わせたい」。三つ目のメダル獲得を目指す世界選手権は「秘策」を持って大阪に乗り込む。
BS-0258__-200708081745_M.jpeg 欧州遠征中の7月中旬、自ら「絶不調」と認める状態に陥り、予定を大幅に早めて帰国、状態を立て直した。「若いころなら、パニックになっていたかも」。だが不調の要因を突き止め、内転筋や腹圧を高める独特の練習で「体のバイオリズムが完全に戻った」と復調を感じ取る。強化合宿中の450メートル走では過去最高タイムもマークした。
 世界選手権用の「秘策」として考えたハードル間の歩数を変更し、後半の歩数を減らす新走法は「本番の準決勝か決勝で、勝負をかける場面で使うかもしれない」と打ち明けた。「想定していたより完成度は低い」とリスクは承知の上で、勝負師の勘で臨機応変にレース展開を決める考えだ。
 昨年はハードルを封印し、走力アップに時間を費やした。「スピードは競技人生で最高レベルにある」と確信する。今季のベストは48秒73と平凡だが、170センチと小柄な29歳のハードラーに大会前のタイムは参考にならない。男子トラック種目で日本選手初のメダルに輝いた2001年大会から6年。「今回が一番、落ち着いて迎えられる」とメダルへの戦略を頭に描いている。(田村崇)

 【写真】男子400メートル障害の為末大=長居陸上競技場



 7メートルとメダルの思い実現へ 女子走り幅跳びの池田


BS-0258__-200708091719_M.jpeg 「日本人初の7メートルでメダル」。女子走り幅跳びの池田久美子(スズキ)は自らを鼓舞するように、言い続ける。その思いを実現するには7メートルジャンパーがそろうロシア勢にどう対抗するかが焦点になる。
 指導する川本和久(かわもと・かずひさ)コーチによると、ロシア勢は踏み切りで「ガーン」と強いインパクトの跳び方が印象的で「ロシア・バレエ団のよう」という。一方で池田は「スーッと踏み切ってスピードの方向をしなやかに(空中に)変えられること」が持ち味だ。単純なコピーではなく、池田の特色を生かして遠くに跳ぶために、冬場は一層の走力強化に努めてきた。
 成果は今季序盤の6メートル70台連発に表れた。だが、一段と増した助走スピードに踏み切り技術が追いつかず、7月に入って記録は低迷した。3連覇した日本選手権が6メートル59。その後の欧州遠征では3戦して最高は6メートル49。
 今月7日のDNガランの6回目にわずかなファウルながら6メートル60前後を跳び、好感触を得た。「あとは踏み切りで力を加えるタイミングだけ」と池田は話す。
 9日、欧州から約1カ月ぶりに帰国した。今後は国内で万全の調整を期す。「精神的に強くなった。変に自分に重圧をかけて、やるべきことを見逃していた」。試行錯誤の末につかんだ手応えを、本番の大ジャンプで証明するつもりだ。(宮田)

 【写真】「日本人初の7メートルでメダル」を目指す、女子走り幅跳びの池田久美子=長居陸上競技場



 得意の二百で世界再挑戦 一段上のギアで勝負の末続


 一回り成長した27歳のスプリンターが再び世界に挑む。男子短距離のエース末続慎吾(ミズノ)は「できるだけたくさんグラウンドに立ちたい」と二百メートル、四百メートルリレーでの大暴れを目指す。
BS-0267__-200708101735_M.jpeg 社会人1年目、23歳で臨んだ2003年世界選手権パリ大会は二百メートルで銅メダルの快挙だった。だが世界トップの仲間入りは続かず、翌年のアテネ五輪は百メートル、05年世界選手権(ヘルシンキ)は二百メートルでともに決勝進出を果たせなかった。
 20秒03のアジア記録を持つ二百メートル。前半のコーナー走に自信がある。それでも「19秒台の選手とは差がある。150メートル以降に置いていかれる」と弱点を認識。「コーナーを抜けてからの威力がほしい」と試行錯誤を続けてきた。
 7月末の山梨県富士吉田市での合宿では、左へ緩やかに曲がる約150メートルの上り坂でダッシュを繰り返した。重力に逆らって走り込むうちに、突き抜ける瞬間が訪れた。「タガが外れてもう一段上のギアがあった。150メートルからスピードが落ちないイメージができた」。何度も吐き気を催すきつい練習の中で、つかんだ手応えだった。
 高野進(たかの・すすむ)コーチは「03年は怖いもの知らずの勢いで取ったメダル。今は外国勢の怖さを知った上で考えながら戦っている」と違いを説明した。持ち味の野性味は残しつつ、落ち着いた雰囲気も漂い始めた末続が勝負をかける。(宮田)

 【写真】再び世界に挑む、男子短距離のエース末続慎吾=長居陸上競技場


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