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「野球コラム」“違う景色”に戸惑うイチロー 「50歳まで現役」に正念場

ナショナルズ戦の7回、中前打を放つマーリンズのイチロー=ワシントン(ゲッティ=共同)
ナショナルズ戦の7回、中前打を放つマーリンズのイチロー=ワシントン(ゲッティ=共同)

大リーグ、マーリンズのイチローは約2カ月で44歳を迎える。

スタントン、イエリッチ、オズナのマーリンズ外野陣はメジャー最強とも言われている。イチローといえども、この一角に割って入るのは至難の業で、「代打」での出場が主になっているのは仕方ないだろう。

イチローはそうした状況にも準備を怠らない。だから、先発出場の指名があると数試合で複数安打を打って貢献する。

ただ、ベンチから見る「昨年までと違う試合の景色」にアジャストできていないように映る。

▽初球から打たない

一例を挙げるなら、イチローは初球から積極的に打つところに一番の特徴があったと思うが、代打では初球から打ちにいかないシーンが目につく。戸惑っているのだ。

オリックスで9年、メジャーで16年。昨年まで積み上げた安打数は日米合計4308で、メジャーで3030安打をクリアして、米野球殿堂入りの条件を満たしている。

今季は8月12日現在、97試合で34安打、2本塁打11打点。それでも安打を打てば何かの通算記録を破り、それがニュースになる「伝説の選手」であるのは変わりない。

▽カルーを抜く

メジャーでは日本と比べようのないほど数限りない細かい記録に圧倒されるのだが、最近では7月に記録したメジャー通算3054本がロッド・カルーを抜いて歴代24位となった。

パナマ生まれのカルーを超えたことで、米国以外の出身者でのメジャー最多安打というのだ。

ピート・ローズとほぼ同時代に活躍したカルーは1977年に3割8分8厘の高打率を残し、やっと米国で認知されたというから、外国人のイチローにとってある種の感慨があったろう。

▽自ら「実験台」という挑戦

イチローは「50歳現役」を公言してはばからないし、そのための「実験台」になるとも言っている。

理想の肉体を求め続けてきた野球人生と言ってもおかしくはないほど厳しく「肉体維持」に取り組んでいる。180センチ、80キロの体型は驚くほど変わっていない。

いまだに打って走って守れる要因がそこにあるのはよく知られている。

▽ダルビッシュ型肉体改造

ただ、ここに到達するまでに多少の試行錯誤はあった。7月末にレンジャーズからドジャースに移籍したダルビッシュ有のように、体を大きくしてパワーを生み、その結果球速を増す肉体改造を目指しているような時期もあったようだ。

このあたりの話は、イチローがメジャー2年目を終えたあとの2003年春に出版された石田雄太氏の「イチローイズム」(集英社刊)のインタビューに詳しい。

▽柔らかい筋肉

イチローはこう言っていた。「筋肉がすごい(俳優の)ブルース・リーに憧れていた。見た目での格好よさです。ただ、95年くらいから、おかしいなと感じた。特に胸回りは一番筋肉がつきやすい。すぐに筋肉が大きくなり、力がついたような気になる場所なんです。それ以来、見た目より機能ということで柔らかい筋肉を作って可動域を広げることにした」。多くのプロ、アマ選手にとって大いに参考になる話だと思う。

ついでに言えば、本塁打は力で打つのではなく、体のバランスで打つというのがイチローの考えである。

▽あのジーターが球団オーナーに

イチローの来季以降に影響しそうなニュースがあった。8月12日に元ヤンキースのジーター氏を中心とするグループがマーリンズ買収に約1308億円で合意したという。

グループにはバスケットボール界のスーパースターだったマイケル・ジョーダン氏も含まれていて、ジーター氏が編成部門のトップに就くと報じられている。イチローを戦力としてどう見るかが焦点となる。

▽日本球界復帰はあるか

現在のイチローの年俸は2億円台と高くはない。だから、メジャーの他球団が獲得に乗り出す可能性はあるが、一方で日本球界復帰も取りざたされるようになった。「50歳現役」をどう実現させるかどうかである。

「イチローイズム」は全盛時の15年前に出されたもので、当時とはイチローを取り巻く状況が変化しているので、あくまで参考にしかならないが、こんなくだりがある。

「もし50歳でプレーしていたいと思うのなら、いつの時期に日本に帰るのかというのが大きなポイントになると思う。僕の中ではメジャーで終わりたいとも、日本に戻らないとも決めていません」。日本の野球をこよなく愛するイチローらしい話だと思う。

▽受け入れ態勢

2004年に近鉄と合併したとはいえ、イチローの古巣であるオリックスは球団名もそのままである。慕っていた仰木彬監督は故人となったが、オリックスへの愛着は薄れていないとも聞く。

そのオリックスは優勝から遠ざかり、人気面でも芳しくない。球団にとってはイチロー復帰が実現されれば、この上ない追い風となる。受け入れ態勢もその日に備えて着々と進めていると噂されている。

▽稲葉監督への言葉

2020年東京五輪野球の監督に稲葉篤紀氏が7月末に就任した。「侍ジャパン」の監督である。同じ愛知県出身でイチローの1歳年上と同年代でかなり親しい間柄のようだ。

その監督就任を聞いたイチローが「何でも相談して」と言った話を同監督が明かした。決してリップサービスをしないイチローの、この言葉は何を意味するのか。

第1、2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でのイチローのプレーぶりは印象的だった。「日本の野球を世界に示す」ことはイチローの終始一貫したスタンスでもある。現役続行も含め、イチローの動向から目が離せない。

田坂貢二(たさか・こうじ)のプロフィル

1945年広島県生まれ。共同通信では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆



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