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「野球コラム」東大が89年ぶりの快挙 根底に浜田監督の「東大野球部愛」

東京六大学野球リーグの法大戦で、4回の田口の3ランを喜ぶ東大の選手たち。法大に連勝し東大は15年ぶりの勝ち点を挙げた=10月8日、神宮球場
東京六大学野球リーグの法大戦で、4回の田口の3ランを喜ぶ東大の選手たち。法大に連勝し東大は15年ぶりの勝ち点を挙げた=10月8日、神宮球場

東大の快挙に、東京六大学野球は大変な盛り上がりである。

東大は10月8日の法大2回戦に連勝し、2002年秋の立大戦以来の勝ち点を挙げた。法大戦での勝ち点は1993年秋以来だが、連勝での勝ち点となると1928(昭和3)年秋までさかのぼることになり、実に89年ぶりとなる。

▽六大学最強

なぜ大騒ぎになるかと言えば、相手が法大だからだ。法大は早大の45度のリーグ戦優勝に次ぐ44度の優勝回数を誇る「東京六大学最強」のイメージがあり、プロ野球に140人を超す選手を送り出してきた。

戦前の若林忠志や関根潤三、そして田淵幸一、山本浩二、富田勝の「法大三羽がらす」、さらに江川卓の各氏らそうそうたるOBを見るまでもなく、日本球界を担ってきたのは間違いない。

ただ、ここ10年を見ても優勝は2度にとどまり下位に低迷するケースが目立つ。

プロ球界で現在活躍しているのはDeNAの石田健大、三上朋也、三島一輝投手あたりしか名前が出てこない。

東大が勝てるのは、かつては立大だったが、今では法大というのがネット裏の一致した見方で、それを実証した格好となった。

▽「94連敗」でストップ

東大が15年春に最多連敗記録を「94」で止めた相手も法大で、同秋に2年生左腕の宮台康平が法大戦にリーグ戦初勝利を挙げて一躍注目された。

16年春には明大、立大、法大を下しシーズン3勝を果たし、また0―1で九回にサヨナラ負けしたとはいえ、宮台が早大相手に毎回の13三振を奪いプロも注目するようになった。

▽東大法学部は初

現在、6勝を挙げている宮台について言えば、その当時の宮台はボールの出所が分かりにくいフォームだったが、今春に肩を痛め、素直な投げ方になっている。

球の速さは増したが、制球力が悪くなり、打者はタイミングが取りやすくなっている。

既に「プロ志望届」を提出しており、最難関の東大法学部から初のプロ選手が誕生しそうである。

プロで通用するかについては、私は疑問を持っている一人だ。ついこの間、京大からロッテ入りした田中英祐投手が戦力外通告を受けたばかりだ。

他のプロ選手と比べ、基礎体力や基礎技術の積み重ねなどでハンディを背負っているのだが、宮台は何事に対しても意識の高さは相当なもので、負けん気の強さも相当なものだ。そこに注目したい。

▽再び「赤門旋風」か

東大の最高順位は46(昭和21)年春の2位でまだ優勝はない。81年春は早慶から勝ち点を奪うなどチーム史上最多の6勝を挙げ4位となり「赤門旋風」と騒がれた。

ここ3年は「勝っても不思議ではない」力を付けている。今季は残る明大戦で勝ち点2が達成されるかどうかであるが、ここまでチームを引っ張って来たのが浜田一志監督(53歳)である。就任5年目で、やっと手応えをつかみつつあると思う。

▽高知県人らしい前向きな姿勢

浜田監督が就任したのは13年から。2年間は全く勝てず、連敗を94まで伸ばしてしまった。しかし、高知県人らしいというか、とにかく前向きでめげない。

なにより「東大野球部愛」がすごい。いいと思うことはすぐ実行する。元中日の谷沢健一氏は既に打撃コーチをしていたが、新たに元巨人の桑田真澄氏を特別コーチに招いて2年間指導を受けた。

▽一番に食事管理

東大の選手は他大学の甲子園球児などと違って野球漬けでない分、基礎体力が備わっていない。私が目にしたのは、そこそこいいと思う1、2年生投手が次の年には肩や肘を故障して野手に転向するか退部するかという現実だった。

浜田監督は(1)食事(2)トレーニング(3)筋力トレーニング(4)守備(5)打撃の順位付けで選手に猛練習を課している。投手はキャンプなどでは1日4時間、野手は1時間のランニングと筋トレを義務付ける。

食事の管理はうるさい。浜田監督は「一日5000キロカロリーと考えているが、現状は4300キロカロリーぐらい。ご飯を食べ筋トレで鍛える」は終始一貫している。

その成果を示すのが、現在リーグ2位のチーム7本塁打のパワーだ。今春の全敗は宮台の出遅れと昨年までの打力が陰を潜めたからだった。

浜田監督は「うちの選手たちには努力を続ける能力がある。東大だから頭脳プレーではない」と、激しい練習を課す根拠を口にしている。

▽データ野球

選手の経験不足を補っている戦術がある。「データ野球」である。

もちろん、東京六大学に限らず、どの大学でも採り入れている戦術だが、東大は徹底していて、メジャー並みの守備位置に驚かされるケースが見られる。

もう一つは「数値化」である。(1)投手=制球率を上げる(2)野手=ヒット性の打球を打つ(3)チーム=ヒットより得点を数字で表し、毎日、数字と向き合うことで一人ひとりの意識が変わる。

▽東大スカウト部長

浜田監督は「東大野球部スカウト部長」を名乗っていて、いい選手がいると聞けば出向いて「東大の野球部に来ないか」と誘い、勉強の仕方を指導する。野球部員に話をさせることもある。

自ら学習塾を経営しているが、この目的は「東大野球部に一人でも多く入れる」ことにある。「入学してから野球部に入るのではなく、野球をやっていた球児を東大に入れようというものだ。

▽自らの体験を基に

これには実体験があった。高知・土佐高野球部の主将だった浜田監督に土佐高OBで元東大野球部監督だった岡林甫氏から「東大に来ないか」と声を掛けられた。

数学は自信があったが、英語、国語が駄目なことから慶大受験を目指していたが、先輩の誘いにすっかり「その気になり」夏以降に猛勉強して現役合格した。

浜田監督は「偏差値30でも受かる。東大野球部に」と、球児に声を掛け続けている。

田坂貢二[たさか・こうじ]のプロフィル

1945年広島県生まれ。共同通信では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆



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