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巨額スポンサーの浸透力はいまひとつ 25年目のJリーグ開幕を前に覚えた不安

記者会見後に手を合わせる(左から)英パフォーム・グループのジェームズ・ラシュトン氏、Jリーグの村井満チェアマン、NTTの鵜浦博夫社長=2016年7月20日午前、東京都文京区
記者会見後に手を合わせる(左から)英パフォーム・グループのジェームズ・ラシュトン氏、Jリーグの村井満チェアマン、NTTの鵜浦博夫社長=2016年7月20日午前、東京都文京区

J1鹿島によって締めくくられた2016年シーズン。J1年間王者を決める明治安田チャンピオンシップに始まり、クラブワールドカップ(W杯)、そして天皇杯。シーズン最後のおよそ1カ月間が与えてくれた印象があまりに濃密で強過ぎたせいか、今回のシーズンオフはやけに短く感じた。

今週末の18日には新シーズンの始まりを告げる富士ゼロックス・スーパーカップが開催される。昨季、J1と天皇杯の2冠に輝いた鹿島とJ1で2位の浦和が激突する一戦が終わると、翌週の25日には25年目のJリーグが開幕する。

今季からJリーグの映像配信は、英国の動画配信大手パフォーム・グループが提供する「DAZN(ダ・ゾーン)」が行うことになった。スマートフォンやタブレットなどでどこでも見られるのだが、個人的にはどうもなじみにくい。電子機器に疎いというのが一番の問題なのだろうが、いままでのように簡単にテレビで見られないのは残念だ。さらに録画ができないとなると気持ちが重くなる。

心理的な面倒くささもあり、Wi―Fi(ワイファイ)を使って配信映像をテレビ画面で見るための「スティック」と呼ばれる機器を入手していなかった。それでも、遅ればせながら先週、スティックを入手できるという東京・新宿の家電量販店を訪れた。ところが、そこで感じたのは「Jリーグは大丈夫なのか」という不安だった。

新宿は日本でも最もにぎわいのある街だ。そこにある有名店であっても、Jリーグの新たな視聴方法は予想以上に知られていない現実があった。最初の店で対応してくれた担当者は勉強不足なのもあるだろうが、「DAZN」自体を十分に理解していなかった。そして、2店目の店員さんは認識こそしていたものの、あっさりと「スティックが入荷するのは3カ月待ちです」と言ったのだ。

2017年から10年間で2100億円という巨額の契約。その放送権料の桁の大きさに比べると、現時点でのDAZNに対する一般の人の認識度は、あまりにも低い。Jリーグのホームページを見ても、小さなバナーがあるだけ。その内容も文字だらけで、理解が容易ではない。つまり、新たに契約しようという人に対する優しさが感じられないのだ。それ以上に大スポンサーであるということを考えれば、Jリーグ側ももう少しホームページでの扱いに配慮があってもいいだろう。

今回の契約を1年で割ると210億円の放映権料。DAZNの契約料は1月1750円なので、1年だと2万1千円。単純な計算だが、Jリーグとの放映権料を捻出するには100万人が加入しなければならないことになる。加えて、経費や人件費も掛かるので、当然ながら、その以上の契約数が必要なことになる。ところが、Jリーグ開幕を目前にしてもテレビ視聴に必要なスティックが在庫不足で3カ月待ちという現状を考えると、契約数を一気に増やすことは簡単ではないだろう。DAZN側もボランティアでやっているわけではないので、日本での契約が伸びなければ撤退ということも当然考えるはずだ。

巨大なスポンサーがあるということを逆に考えれば、そのスポンサーが手を引いた時点で組織の経営が息詰まるということだ。Jリーグはそのことを1998年に出資会社の経営不振から横浜Mに吸収合併する形で消滅した横浜フリューゲルスの例で痛いほど思い知ったはずだ。

もちろん、Jリーグ側はDAZNとぬかりなく契約しているだろう。ただ、海外資本というのは日本人が思う以上にドライだ。それは、国外の様々なクラブを見てもわかる。その意味で、運営資金をDAZNだけに頼ることは危険だ。リスクの分散を考えておかなければいけないだろう。

次の言葉はサッカークラブの経営に関するものだが、すべての事柄に共通するだろう。経営破綻寸前のJ1甲府の社長に就任後、見事立て直してみせた海野一幸会長に当時の苦労などについて取材したときに、心に響いてきたフレーズだ。

「太い柱は大事だが、それと同じく細い柱を大切にしなければいけない。そして細い柱の数を、なるべく多くしていくんですよ」

クラブ経営の名言だと思う。ここでいう柱とはスポンサーのことだ。太い柱で建物が支えられていた場合、その柱を外されたら建物は倒れてしまう。しかし、金額は小さくとも数多くのスポンサーがあれば、1本の柱が外れても建物は倒れないのだ。

甲府のそのクラブ経営の哲学。それは、ホーム・山梨中銀スタジアムのゴール裏に並ぶ、ローカル色の強い数多くの広告看板に表れている。それは、ある意味壮観ほどだ。

「黒船」と表現しても良いほどの衝撃を持ったすごいスポンサーが現れたのに、その会社が配信する試合をテレビの画面で簡単に見ることができない皮肉。それでも、2017年シーズンのJリーグは開幕する。テレビで見られない期間、スタジアムに足を運ぶ人が増えればいいのだが。今年のJリーグは、例年になく話題と見どころが多い。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。



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